デジタル化AI補助金 採択44%──申請3点【2026年】
IT補助金は、半分しか通らない。
2026年から名前を変えた「デジタル化・AI導入補助金」。その1次締切の交付決定が先週(6/18)出そろい、通常枠は2,028件の申請に対して交付決定は891件で止まった(中小機構 交付決定事業者一覧)。電卓を叩くと採択率は約44%。
次の2次締切は2026年7月21日(火)17時。残り1か月を切ったこのタイミングで、申請書を作り直すかどうかの判断を、今日のうちにつけたい。
そもそも、何が「IT導入補助金」から変わったのか
2025年までの「IT導入補助金」は、2026年から正式名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わった。看板の架け替えで終わる話ではなく、申請枠そのものが組み替わっている。
現在の申請枠は5つ。
- 通常枠(ソフトウェア・クラウド導入の本丸)
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠
1次締切の数字をもう一度並べる(中小機構公表)。
- 通常枠:申請2,028件 / 交付決定891件 (約44%)
- インボイス枠(対応類型):申請4,324件 / 交付決定2,027件 (約47%)
- セキュリティ対策推進枠:申請88件 / 交付決定64件 (約73%)
- 合計:申請6,440件 / 交付決定2,982件 (約46%)
セキュリティ枠だけが目立って高い。申請件数が少ない=穴場、ということ。これは後で効いてくる。
うちのクライアントでも、6月の終わりに「うち申請したけど落ちました」と電話がきた医療法人がある。電子カルテのクラウド利用料を載せた通常枠だった。落ちた理由を一緒に申請書を読み返したら、答えはすぐに出た。
落ちた申請書には、3つの共通点がある
1次締切の不採択分について、不採択理由そのものは公表されていない。ただ、私がここ数年で見てきた申請書(自分で書いたもの、他社が書いて持ち込まれたものを含めて)を並べると、落ちる申請書には共通点がある。
1. 「業務プロセス」が曖昧
通常枠は、補助金額の上限が 「業務プロセス数」 で決まる(中小機構 通常枠案内)。
- 1プロセス以上:下限5万円〜上限150万円未満
- 4プロセス以上:下限150万円〜上限450万円
「うちはレセコンを入れ替えたい」と書くだけだと、プロセスは1つに数えられる。でも、同じレセコン導入でも「①予約管理 ②受付 ③会計 ④レセプト電算」と分解すれば4プロセス扱いになる。書き手の腕の見せどころだ。落ちる申請書は、ここを伸ばしていない。
2. ITツールが「業務プロセスを持たない」汎用ソフト
通常枠で補助される ITツールは、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアでなければならない。汎用プロセス(Office製品やZoomのような業務横断ツール単体)は対象にならない(同上)。
これは見落としやすい。クリニックで「クラウド型のスケジューラを入れる」だけだと、業務プロセスが特定しづらく、対象外になりやすい。電子カルテ・予約管理・会計のように、業界特化の機能を含んだツールを選ばないと土俵に乗らない。
3. クラウド利用料の2年分を取りこぼしている
クラウド型のサービスは、初期費用だけでなく 最大2年分の月額・年額利用料 も補助対象に含めて申請できる(同上)。
ここを忘れると、申請額が小さくなる。小さい申請額はそれだけで採点で不利になる(投資規模が「労働生産性向上」と紐づきにくく見える)。落ちた申請書を見せてもらうと、半分くらいは2年分のクラウド利用料を申請書に載せていない。もったいない。
2次締切に向けて、今週やる3点
残り1か月で逆転するために、Reliefでクライアントに伝えている動き方は3つだ。
① 業務プロセスを4つ以上に分解しておく
レセコンや電子カルテ、介護記録ソフト、保育園の登降園管理アプリ。いずれも単機能で書かず、「受付」「記録」「請求」「労務管理」など細かいプロセスに分けて書く。450万円の上限を取りに行くなら、ここは絶対に外せない。プロセスの数え方は、ベンダー側に「補助金申請に使うので、プロセス内訳の整理表を出してほしい」と頼めば、たいていの会社は出してくれる。
② 自社の「中小企業区分」を一度確認する
申請対象は中小企業・小規模事業者(中小機構 申請対象者ページ)。
- 医療法人・社会福祉法人:従業員300人以下
- サービス業(保育所など):従業員100人以下
うちのクライアントには、就労継続支援B型を3拠点運営していて、本社+各拠点で従業員数が110人を超えていたところがある。「うちはサービス業100人以下のラインを超えているので通常枠は無理」と慌てたが、社会福祉法人の300人以下ラインに該当するため申請できた。法人形態によって判定軸が違う。これを確認しないまま「うちは規模的にダメだろう」と諦めている経営者が、けっこういる。
③ セキュリティ対策推進枠の「穴場」を見落とさない
1次締切の交付決定で、採択率が一番高かったのは セキュリティ対策推進枠の約73% だ。申請88件・交付決定64件。母数が小さいぶん、競争が緩い。
医療機関ならランサムウェア対策、介護施設なら個人情報を含む利用者ファイルの暗号化。福祉施設や保育所も、メール経由の標的型攻撃にはじわじわ晒されている。通常枠と並走させてセキュリティ枠も組むと、採択の総当たりで通る確率が上がる。Reliefでも、医療法人のクライアントには通常枠+セキュリティ枠の2本立てを勧めている。
申請書を「他人に読ませて」直す時間を残す
2次締切は2026年7月21日(火)17時(中小機構 事業スケジュール)。残り約4週間。
この4週間で必ず確保したいのは、申請書を一度第三者に読ませる時間だ。自分で書いた申請書は、自分の言葉で書きすぎて、外から見ると「で、結局何が良くなるの?」が伝わらないことがある。社労士でもベンダー営業でも、近くにいる「補助金を読んだことがある人」に1回見てもらうだけで、通過率は体感で2割上がる。
そして、申請書を出した後にやれることはほぼ無い。出すまでの数週間で、勝負は決まる。
「補助率2/3」に該当するかどうかも、今夜確認する
もう1つだけ、知っておいてほしい論点がある。
通常枠の補助率は基本1/2以内だが、令和6年10月〜令和7年9月の間に、3か月以上、最低賃金未満の従業員が全体の30%以上を占めた事業者は、補助率が2/3まで引き上げられる(中小機構 通常枠案内)。
賃上げの動きが進んだ今、施設の規模によってはこの条件に該当する事業者が出ている。介護や保育の現場で「うちはギリギリ最低賃金近くで雇っている職員がいる」事業所は、賃金台帳を一度棚卸ししたほうがいい。2/3に上がれば、450万円の補助上限なら自己負担は150万円で済む。1/2なら自己負担225万円。差額は75万円だ。
申請枠の選択、プロセスの数え方、補助率の判定。この3つで、書類1枚あたりの「重さ」が大きく変わる。1次締切で落ちた施設も、2次締切に向けて作り直す時間はまだある。
出典・参考情報
- デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール(中小企業基盤整備機構、確認日:2026年6月23日)
- 交付決定事業者一覧(1次締切 2026年6月18日 公表)(中小企業基盤整備機構、確認日:2026年6月23日)
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(中小企業基盤整備機構、確認日:2026年6月23日)
- デジタル化・AI導入補助金2026 申請の対象となる方(中小企業基盤整備機構、確認日:2026年6月23日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新の公募要領は中小企業基盤整備機構のポータルサイトで必ずご確認ください。
あわせて読みたい
- IT補助金2026──医療・介護・保育は賃上げ縛りなし
- 令和8年度 介護テクノロジー補助金 ── 4/5補助率で変わった3つの申請条件
- 業務改善助成金 9月1日開始──医療介護がやる3点【令和8年度】
株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!
株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。
