在宅医療充実体制加算 認知症緩和3要件【2026年6月】

20%が15%になる。

これが、6月17日に厚労省が出した疑義解釈で正式に通知へ書き込まれた、在宅医療充実体制加算の重症患者割合のラインだ。

条件は1つ。認知症自立度IVかMの患者を、ある一定の比率で診ていること。届出を見送ってきた在宅療養支援診療所(在支診)の院長にとって、今週はもう一度算定可否を計算し直すべきタイミングだと思う。


「2割」の壁が、認知症対応で「1割5分」に下がる

2026年度診療報酬改定で、旧「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」が見直されて在宅医療充実体制加算に組み替わった。単一建物患者1人につき800点。在支診の往診料に乗る加算の中では存在感が大きい。

従来から運用されている重症患者割合要件は、ざっくり言うと「過去1年間に在医総管・施設総管・在宅がん医療総合診療料を算定した延べ診療月数のうち、末期がん患者で月2回以上訪問診療している月や、在宅がん医療総合診療料算定月の割合が2割以上」というものだ(疑義解釈4 解説)。ターミナル中心のクリニックには手が届く。けれど、認知症を多く診ている都市型の在支診からは「うちは末期がんが少ないので無理」という声を、私もこの1〜2か月で何度も聞いた。

その風向きを変えるのが今回の緩和措置だ。重度認知症患者を一定割合以上診ている医療機関は、重症患者割合の基準が1割5分(15%)以上で算定要件を満たす。割合の絶対値だけ見ると微差に思えるが、この5ポイントの差は、月の訪問計画を組み直さなくても基準クリアできるかどうかの分水嶺になる。

そして大事なのが、この緩和は2026年4月21日付の疑義解釈4で先行示達され、2026年6月17日付の疑義解釈8で施設基準通知本体に正式反映された、という二段構えになっている点。4月の段階で「読み逃しはしたが運用は始めていた」という院長は、6月の通知訂正までを含めて改めて根拠を握り直しておいた方がいい。


緩和を受けるための「3つの数字」

1割5分ラインに乗るために満たすべき条件は、3つの数字に分けて押さえると整理しやすい。

  1. 認知症自立度 IV または M に該当する患者を診ていること。ただし、その患者に対して介護者への助言や療養方針に関する意思決定支援を継続的に行い、直近3か月以内に関係機関との間でこれらの情報を共有し連絡調整を行ったという、いわば「適切なケアの実態」をカルテで確認できる必要がある
  2. 上記条件を満たす重度認知症患者の延べ診療月数が、在宅患者全体の8分(8%)以上
  3. そのうち、在医総管を算定している重度認知症患者の延べ診療月数が、4分(4%)以上

8%と4%。両方クリアして初めて、重症患者割合の閾値が2割→1割5分に動く。8%だけ満たして4%が足りなければ、緩和の恩恵はない。ここを見落とすと「うちは満たしているはず」と思って届出してから差し戻される事故が起きる。

うちのクライアントで、認知症対応に強い無床診療所のD院長が先週「8%は楽勝、でも在医総管の方が3.6%しかない」と頭を抱えていた。在医総管を算定していない重度認知症患者は8%カウントには入るが、4%カウントには入らない。算定の選択を全患者で見直さないとここは数字が動かない。要件を読むときに「分子と分母が違う」ことを最初に押さえてほしい。


訪問診療100人以下ラインも、月1回は0.5人扱いになった

もう1つ、同じ疑義解釈で動いた数字がある。在支診の施設基準にある「医師1人あたり訪問診療患者実人数100人以下」のカウント方法だ。

従来は、月1回しか訪問していない患者も月2回訪問している患者も同じ「1人」としてカウントしていた。これが今回の緩和で、月1回訪問の患者は「0.5人」として計算してよいことが明確化された(疑義解釈8 解説)。100人ラインギリギリで、月1回訪問の慢性安定期患者を抱えてきた在支診は、これで実質的に手が空く。新規の月2回訪問を受けられる余地が生まれる、ということだ。

この0.5人ルールは、現場で月次の集計を回している事務さんに最初に共有してほしい。集計テンプレートを2行追加するだけで済むのに、「月の集計が出てから理事会で気づく」というパターンが一番もったいない。


院長が今週やる3つの実務

制度の中身が分かったところで、6月22日の週に院長サイドで動かしておいた方がいい実務を3つだけ書き出す。

1. 直近12か月の在宅患者リストを、自立度IV/Mで再ソートする。多くの電子カルテでは認知症自立度を病名や算定区分とは別フィールドで管理しているはずだ。これを延べ月数に直して、全体の何%に当たるかを出す。8%に届かない場合は緩和対象外なので、別ルートで2割ラインを目指すしかない。

2. その患者のカルテに「介護者助言」「意思決定支援」「関係機関連絡」の記録があるかを抽出する。ここが抜けると緩和要件が成立しない。書いていない月があれば、直近3か月の連絡実績だけでも棚卸ししておく。ケアマネや地域包括との連絡記録を、加算根拠としてカルテに転載する運用に切り替える価値はある。

3. 在医総管の算定方針を院内で再確認する。重度認知症患者で在医総管を取れる条件にあるのに別の管理料で算定している例があると、4%要件が成立しにくくなる。算定漏れではなく算定選択の問題なので、4月以降の月次データで一度全件確認した方がいい。

800点という単価は、月10件動けば月8万点、年間で100万点近い。届出を見送るより、緩和ルールを使って届出に乗せるための数字合わせに時間を割く方が、たぶん割が合う。

うちの事務長アウトソーシングでも、月初の3日間で在宅患者の延べ月数集計と要件マッピングを回す仕組みを案件単位で組んでいる。理事長・院長が「やった方がいいのは分かるけど誰が回すか」で止まっているなら、外側から人を入れる選択肢も検討してみてほしい。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。算定可否の最終判断は地方厚生局の指導内容と最新の疑義解釈・告示を必ずご確認のうえ自施設で行ってください。


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