令和8年度 介護テクノロジー補助金 ── 4/5補助率で変わった3つの申請条件

介護テクノロジー補助金は、都道府県が募集を始めてから動いても間に合わない。令和8年度の補助率は4/5に引き上げられたが、同時に申請要件が3段階厳格化された。準備ができていない施設は、募集が始まっても手を挙げられない可能性が高い。 令和8年度の実施要綱は、すでに2026年4月7日に厚生労働省から各都道府県に発出されている。にもかかわらず、5月13日時点でほとんどの都道府県がまだ申請受付を開始していない。「どうせまだ先の話」と思っている経営者は、少し立ち止まった方がいい。

都道府県の募集がまだ始まっていない、それがまず最初の落とし穴だ

介護テクノロジー導入支援事業(旧ICT導入支援事業)は、都道府県が実施主体の補助金だ。国が実施要綱を示しても、実際に申請できるのは「各都道府県が要綱を策定し、募集を開始した後」になる。

介護ソフトや介護ロボットの補助金に関する都道府県別実施状況を追うケア樹の調査(2026年5月時点)によると、令和8年度の申請受付を開始している都道府県はまだ少数だ。北海道も東北も関東も「実施日未定」が並ぶ。シルバー産業新聞の都道府県実施状況まとめ(5月1日更新)も同様の傾向を示している。

過去の実績を見ると、令和7年度の申請受付は都道府県によって7月〜11月に集中した。令和8年度も同様のスケジュール感になると見られている。

ここで問題になるのは「時間の短さ」ではない。準備が間に合わない施設が続出する構造上の問題だ。令和8年度からは新たに3つの必須要件が加わった。これを知らずに夏に「さあ申請しよう」と動き出しても、要件を満たせず断念するケースが出てくる。

では、令和8年度から何が変わったのか。


補助率が4/5に上がった。ただし、3段階の要件強化がセットでついてくる

まず、制度の基本から整理しておく。介護テクノロジー導入支援事業は、介護施設が見守りセンサー・介護記録ソフト・インカム・移乗支援ロボット・入浴支援ロボットなどを導入する際の費用を、国と都道府県が一部補助する制度だ。

令和8年度の目玉は、公費補助率が4/5に引き上げられたこと。前年度より高い補助率で、集中的な導入を促す狙いがある。補助額の上限は機器の種類と職員数によって変わる。

介護ソフト(介護テクノロジー「介護業務支援」)の上限額は以下の通り(職員数フルタイム換算):

  • 1〜10名の事業所: 100万円
  • 11〜20名: 150万円
  • 21〜30名: 200万円
  • 31名以上: 250万円
  • ライセンス数で価格変動しない契約型: 一律250万円

端末・Wi-Fi環境整備を含む場合は15万円が上乗せされる。ケアプランデータ連携を5事業所以上と実施する場合には、さらに5万円が加算される。

介護ロボットは種類ごとに1台あたりの上限が設定されている。移乗支援と入浴支援がそれぞれ100万円、その他の重点分野(移動・排泄・見守りセンサー等)は30万円が目安だ。

複数機器を組み合わせる「パッケージ型導入」なら、上限が400万〜1,000万円(都道府県が定める範囲内)まで拡大される。さらに、複数法人が協働・大規模化に取り組む場合は1グループ最大1,200万円(1法人あたり上限120万円、訪問介護事業所は30万円加算)という枠もある。

数字だけ見れば魅力的だ。問題は「もらうための要件が、今年から変わった」という点にある。


給与還元・専門家活用・介護情報基盤 ── この3つが新たに「必須」になった

令和7年度までは、補助率を3/4まで引き上げるための要件はあったものの、「努力義務的な側面が強い」「推奨レベル」のものが多かった。令和8年度からはそれが明確に「必須要件(絶対条件)」として落とし込まれた。

主な変更点は3つある。

①給与還元の必須化

業務効率化によって収支が改善した場合、その分を職員の給与に還元することを国への報告書に明記することが、補助率3/4以上を受け取るための絶対条件になった。「機器は買ったが業務は変わっていない」では採択されない可能性が出てくる。

②第三者支援・専門家活用の必須化

コンサルタント等の外部専門家を活用するか、研修・相談支援を受けることが必須になった。補助率1/2の場合も同様だ。「自社だけで完結」という申請は、令和8年度から通りにくくなる。うちがよく相談を受けるのも、ここだ。「専門家って誰に頼めばいいですか」という問い合わせが、4月以降に増えている。

③介護情報基盤の利用準備の必須化

2026年4月から本稼働した介護情報基盤(保健・医療・介護の情報を共有する全国プラットフォーム)への対応準備を行うことが、新たな要件に加わった。こちらも補助率1/2の場合でも必須だ。

この3つのうち、現場で最も見落とされているのが③だと思っている。先月の記事でも触れたが、介護情報基盤への対応は一日二日でできるものではない。システム側の準備、職員への周知、ID管理など、地道な準備が必要になる。「補助金申請しようとしたら、介護情報基盤の要件で引っかかった」というケースが、今後確実に出てくる。


パッケージ型1,000万円を狙える施設と詰まる施設の分岐点

「複数の機器をセットで導入するパッケージ型なら上限1,000万円」というのは魅力的に聞こえる。ただし、令和8年度からパッケージ型には追加の人的要件が加わった。

デジタル中核人材養成研修の受講が必要になったのだ。厚労省が指定する研修を受けた「現場のデジタルリーダー」の存在が、パッケージ型採択の前提条件として明確化された。機器を買う予算より先に、「誰が社内のデジタル化を担うか」を決める必要がある。

加えて、在宅系サービス(訪問介護・居宅介護支援等)においては、ケアプランデータ連携システムの利用が「ボーナス(加算)方式」から「必須要件」に変わっている。令和8年度内にケアプランデータ連携システムまたは同等のシステムを実際に利用することが、高い補助率を受け取るための前提になった。

さらに、施設系サービスで見守り機器などを導入する場合は、機器の効果や職場環境への影響を話し合う「委員会(協議の場)」を設置することも条件として明確化された。

申請書類を書く段階になって初めて気づく要件が、令和8年度は特に多い。将棋でいう「詰み」の状態だ。手を打つには、今が最後のタイミングかもしれない。


今すぐ着手すべき3つの準備 ── 募集開始から逆算すると時間がない

過去の実績から、令和8年度も多くの都道府県で秋口(7月〜9月)に申請受付が始まると考えられる。今は5月だ。3〜4ヶ月しかない。

うちがクライアントに「今すぐ着手してください」と話しているのは以下の3点だ。

①介護情報基盤への対応状況を確認する

使っている介護ソフトのベンダーに「介護情報基盤との連携対応はいつ頃になりますか」と確認する。ベンダーによって対応時期が異なる。早ければ早いほどいい。

②第三者支援者・専門家を早めに押さえる

補助金申請の支援実績がある専門家(中小企業診断士、社会保険労務士、ITコーディネーター等)は、秋になると引き合いが増えて手が回らなくなる。今のうちに相談先を確保しておくことが現実的だ。

③社内の「デジタル担当」を決めておく

パッケージ型を狙うなら、デジタル中核人材養成研修の受講対象者を今から決めておく。研修の日程は早めに調べた方がいい。

都道府県の実施要綱が出次第、具体的な補助対象機器・申請書類・締切を確認して動く。それだけのことだ。ただ、「出てから動く」と「出る前に準備している」では、申請の質が変わる。

令和8年度の補助率4/5は、本気でテクノロジー投資に踏み切る施設への後押しだ。要件を正確に理解して申請した施設が、最終的に補助金を手にする。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。都道府県の実施状況は随時更新されますので、申請の際は各都道府県の公式サイトで最新情報をご確認ください。


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