業務改善助成金2026——30円コース廃止で変わる3つのこと
月8.2万円の格差——6月改定だけでは縮まらない理由
6月1日から、介護報酬の期中改定が始まる。ケアマネの処遇改善加算が初めて創設され、訪問介護や通所介護でも加算の区分が整理される。制度として前進していることは間違いない。 ただ問題がある。ここが大事だ。 介護職員の昨年の賃金は31.4万円で、全産業平均は39.6万円。0.1万円縮んだとはいえ、8万円超の差は変わっていない。しかも全産業では今年の春闘でも大幅な賃上げが続いている。格差が「縮まらない」のではなく、「これ以上広がるのを辛うじて防いでいる」というのが正確な表現で、介護職員の労働組合もそう指摘している。 処遇改善加算は確かに大事だ。うちのクライアントの現場でも、6月以降の届出作業に追われている。加算だけでは届かない部分がある。そこを補う手段として、業務改善助成金がある。これを今年の経営者がどう使うか、私は毎年春になるたびに気になっている。 正直、知らない経営者が多すぎる。 では、この制度は具体的に何をしてくれるのか。業務改善助成金とは——設備投資と賃上げを「セット」で助成する仕組み
業務改善助成金は、厚生労働省が運営する助成金制度だ。簡単に言うと、「事業場内の一番低い時給を一定額以上引き上げ、かつ生産性を上げる設備投資を行った事業者に、その費用の一部を助成する」もの。 賃上げだけでも設備投資だけでもなく、セットで動くことが条件なのが特徴だ。 対象は中小企業・小規模事業者。介護施設もクリニックも、規模が小さければ当然対象に入る。助成対象経費として認められているのは、機械設備の導入、コンサルティング費用、人材育成・教育訓練の費用など。物価高騰等要件を満たす特例事業者であれば、PCやスマートフォン、タブレット端末の新規導入も対象になる。 令和7年度は、コースに応じて設備投資費用の一部(助成率は事業場内最低賃金の水準により変わる)が助成された。令和7年度の申請受付は2026年3月31日をもって終了している。 問題はここから先だ。大きく変わる。令和8年度の3つの変化——30円コースが消える、その意味
令和8年度の業務改善助成金について、厚労省の公式サイトでは「コールセンター開設準備中」とだけ書かれていて、まだ詳細が公表されていない(2026年4月21日時点)。ただ、厚労省の令和8年度予算概算要求に基づき、複数の社会保険労務士事務所が変更点を解説し始めている。 予算案ベースの主要変更点は次の3点だ。- 30円コースの廃止
令和7年度まで最も使われていた「30円コース」が廃止される見込みだ。令和8年度は50円・70円・90円の3コースに再編される予定。最低でも事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが、助成金を受け取る条件になる。「うちは賃上げが少し苦手で」という施設には、ハードルが上がった。 - 少人数賃上げの助成上限額が引き下げ
令和7年度は45円コースで最大80万円の上限があった(1〜2人の引き上げの場合)。令和8年度の予算案では50円コースで最大40万円に引き下げられる見込みだ。少人数での申請を前提にしていた施設は、計画を見直す必要がある。 - 受付期間が約3ヶ月に集中
令和7年度は年間を通じて受付があったが、令和8年度は地域別最低賃金の改定に合わせ、9月1日から11月末日ごろまでの約3ヶ月に集中する見込みとされている。申請のチャンスが1シーズンしかない。
9月開始前に今すぐやる3ステップ
準備は早ければ早いほど余裕が生まれる。私がクライアントによく言っているのは次の3点だ。- ① 事業場内最低賃金を確認する
業務改善助成金の申請対象となるためには、事業場内で最も低い時給が地域別最低賃金との差額50円以内(令和8年度は「地域別最低賃金未満」に要件が変わる見込み)という条件がある。まず自施設の最低時給がどのラインにあるかを把握することが出発点だ。 - ② 設備投資の候補を洗い出す
業務改善助成金は申請前に設備投資の計画を立てる必要がある。介護施設であれば介護記録システムのクラウド化、見守りセンサーの導入、事務作業のICT化など。クリニックであれば電子カルテの更新、受付管理システムの刷新などが候補になる。「9月に急いで探す」ではなく、今から候補を持っておくことが重要だ。 - ③ 賃金台帳と就業規則を整備する
助成金の申請では、賃金引き上げの根拠として就業規則の改正や賃金台帳の整備が必要になる。処遇改善加算の届出でも同じ書類を使う部分があるため、6月の処遇改善加算対応と並行して整備しておくと一石二鳥だ。
処遇改善加算と同時に動くときの1つの注意点
業務改善助成金と処遇改善加算は、目的が重なるように見えて、制度の出どころが違う。 処遇改善加算は介護保険や障害福祉サービスの報酬制度の中に組み込まれた加算で、厚労省の老健局や障害保健福祉部が担当する。業務改善助成金は最低賃金引き上げを支援するため、厚労省の労働基準局が管轄する。担当窓口が異なるため、申請書類も別々になる。 ここで失敗するのが、「処遇改善加算の届出で手いっぱいで、業務改善助成金の申請が間に合わなかった」というパターン。6月に処遇改善加算の届出を片付けた後、今度は9月の業務改善助成金に備える。この2段構えで考えるのが現実的だ。 うちのクライアントのある訪問介護事業者は、昨年まさにこれを実践して、合計で数十万円分の設備投資をほぼ自己負担なしで実現した。具体的な金額は個別に異なるが、使える制度を使い切るかどうかで、施設の体力が変わる。 月8.2万円の格差が、この先どのくらいの年月をかけて縮まるのかは、正直わからない。ただ、「使える補助金を使い切る」という経営判断だけは、今すぐできる。 あなたの施設は、9月の申請受付に備えて動いているか。出典・参考情報
- 賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について(厚生労働省、確認日:2026年4月21日)
- 介護と他産業の賃金格差、月8.2万円 全体の賃上げ加速で縮まらず 厚労省最新データ(介護ニュースJoint、2026年4月15日、確認日:2026年4月21日)
- 業務改善助成金(厚生労働省、確認日:2026年4月21日)
- 最新【令和8年度】業務改善助成金の予算案と変更点を解説!(社会保険労務士法人 総合経営サービス、確認日:2026年4月21日)※令和8年度情報は予算案ベース
※ 上記リンクは掲載時点のものです。業務改善助成金の令和8年度の詳細は、厚労省公式サイトで正式公表後に必ずご確認ください。
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