介護施設のカスハラ対策が義務化される前に、管理者が知るべきこと3つ
「カスハラ」と「普通のクレーム」の境界線を、施設側が引かないと詰む
カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉は、ここ数年で介護業界でも一般化してきた。でも現場に聞いてみると、驚くほどあいまいに使われている。 「クレームはクレームでしょ」という感覚のまま放置している施設が多い。これが問題だ。 厚生労働省の介護現場向けハラスメント対策マニュアルでは、利用者・家族からのハラスメントを「身体的暴力」「精神的暴力」「セクシャルハラスメント」の3類型に分類している。具体的には、怒鳴る・脅す・長時間拘束するような電話・過度な要求・差別的発言なども含まれる。 ここで重要なのは、「施設側が正当なサービス提供の範囲内で対応できない要求」かどうか、という軸だ。正当なクレームには誠実に応える。しかし、それを超えた言動は「カスハラ」として別の対応フローを動かす必要がある。 この線引きを施設側があらかじめ「文書で」決めておかないと、現場職員はどこまで我慢すれば良いか分からない。管理者に相談しにくい空気ができる。そして静かに人が辞めていく。 では実際に「カスハラ」と判断された場合、今どんな法的な動きがあるのか。2026年10月、事業主の義務が変わる──東京都は今日、動いた
2026年10月1日から、労働施策総合推進法等の一部改正により、全産業でカスハラ対策が「事業主の義務」になる。これは医療・介護・保育も例外ではない。 具体的には、事業主が講ずべき措置として「カスハラに関する方針の明確化と周知」「相談体制の整備」「被害を受けた職員へのフォロー」などが求められるようになる。 そして今日(2026年4月20日)、東京都がもう一つ動いた。 東京都カスタマー・ハラスメント総合相談が本日午前9時から開始した。昨年度まで介護分野だけで運営していた相談窓口を拡充し、今年度から障害福祉サービス事業所も対象に加えた。電話番号は0120-318-657(平日9時〜17時30分)、相談フォームは24時間受付、無料・匿名可で、弁護士への法律相談も案内してもらえる。 東京都は令和7年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」の運用を開始しており、行政側でも本腰を入れている段階に入っている。 ただ、問題は「相談窓口が整備された」だけでは現場は動かない、ということだ。カスハラを「なかったこと」にしている施設で、何が起きているか
私がこれまでコンサルで入った施設の中に、カスハラの報告が一件もない事業所があった。見た瞬間、「記録がないだけだ」と思った。 ヒアリングしてみると、案の定だった。職員数人が「言っても仕方ないから」と黙って対応していた。管理者も薄々気付いていたが「騒ぎを大きくしたくない」と放置していた。 この状態が続いた末に起きることは2つだ。 1つは離職。カスハラを受けた職員が静かに転職活動を始める。理由を聞かれても「一身上の都合」と言って出ていく。管理者は原因に気付かないまま「最近離職が多い」と嘆く。 もう1つはエスカレーション。対応してもらえると分かった利用者家族は要求の水準を上げてくる。最初は電話での苦情だったものが、SNSでの誹謗中傷、施設への突撃クレームへと発展するケースを私は複数件見てきた。 カスハラは、対応しなければ必ず大きくなる。これは原則だと思った方がいい。 問題は「どう動けばいいか分からない」ではなく、「動き方を決めていない」ことにある。では管理者は何から手をつければ良いのか。管理者が「今週中に」できること、3つだけ
難しい研修も高額なシステムも要らない。今週中にできる3つを挙げる。-
「カスハラ」と判断する基準を1枚の紙に書く
「どんな言動がカスハラに該当するか」を、管理者と職員で話し合って文書化する。厚労省のマニュアルに事例集があるのでそれを参考に、自施設の言葉で書く。A4一枚で良い。「殴る・蹴る」「30分以上の怒鳴り電話」「職員のプライベートへの干渉」のような具体例が並んでいると、現場が動きやすい。 -
「起きたら誰に報告するか」のルートを決める
報告先がないから誰も報告しない。これだけ。管理者への直接報告ルートを一本決めるだけで、報告件数は変わる。「あとで日誌に書く」ではなく「その日のうちに口頭で管理者に伝える」というルールを明文化する。 -
東京都の相談窓口の電話番号を、スタッフルームに貼る
0120-318-657。今日から使える無料の相談窓口だ。職員が一人で抱え込まないための「外部の窓口があること」を知らせるだけで、心理的安全性は変わる。東京都外の施設でも、各都道府県の相談窓口を調べて貼っておくことを勧める。
出典・参考情報
- 東京都「東京都介護・障害福祉サービス等職員カスタマー・ハラスメント総合相談を開始します」(東京都福祉局、確認日:2026年4月20日)
- 介護ニュースJoint「東京都、介護・障害福祉職員向けのカスハラ相談窓口を開始 20日から」(介護ニュースJoint、確認日:2026年4月20日)
- 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」(厚生労働省、確認日:2026年4月20日)
- 厚生労働省「令和7年の労働施策総合推進法等の一部改正について」(厚生労働省、確認日:2026年4月20日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・法令の詳細は最新の行政資料をご確認ください。
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