月7,000円を取るか捨てるか——6月改定「生産性向上」の選択肢

木曜の夜、関西でグループホームを3棟運営する介護施設のA理事長から電話が来た。
受話口の向こうで「阪本さん、うち、生産性向上って何もやってないんですけど。6月まで2ヶ月もないですよね」と言う声が、少し焦っているように聞こえた。
この会話が、今日書こうと思った直接のきっかけだ。

月7,000円を取るか捨てるか——6月から差がつき始める

令和8年(2026年)6月から、介護職員等処遇改善加算の体系が変わる。 (令和8年度介護報酬改定について|厚生労働省) 4月からの改定全体の改定率は+2.03%。そのうち処遇改善の部分は6月から切り替わる形だ。新しい加算体系では、介護従事者全体に月額10,000円(3.3%相当)が支給される枠組みに加え、生産性向上・協働化に取り組んでいる施設には月額7,000円が上乗せされる。 (令和8年度介護報酬改定──介護職員最大月額1.9万円とは|CBH株式会社) 月7,000円を小さいと感じる人もいると思う。でも、ちょっと待ってほしい。職員10人の事業所なら月7万円。年間84万円。3年で252万円だ。それが「手を動かしたかどうか」の差だけで毎月発生し続ける。 逆に言うと、何もしなければ毎月7,000円×職員数が永遠に手に届かないままになる。「知らなかった」では取り戻せない。

要件は3パターン——思ったより選択肢がある

「生産性向上に取り組む」と聞くと、何十個もの書類を揃えるイメージがある人が多い。実際は違う。厚労省が示した令和8年度特例要件は、事業所の種別ごとに3つの選択肢から1つを満たせばいい仕組みになっている。 (令和8年度処遇改善加算改定の概要と算定要件解説|NDソフト
  • 訪問・通所サービス等(訪問介護・デイサービス等):ケアプランデータ連携システムに加入し、実績報告をしていること
  • 施設・居住系サービス等(特養・グループホーム等):生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を取得し、実績報告をしていること
  • その他:社会福祉連携推進法人に所属していること
どれか1つでいい。複合サービスを展開している法人は、事業所ごとにどのルートが当てはまるかを整理するだけでいい。 ここで「ケアプランデータ連携システム」という聞き慣れない言葉が出てくる。簡単に言うと、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)と訪問・通所サービス事業所が、ケアプランや実績のやりとりをオンラインで完結できるシステムだ。従来は電話とFAXで往復していた確認作業を、システム上で処理できるようにする。

うちのクライアントが「ケアプランデータ連携」を選んだ理由

先月、訪問介護とデイサービスを両方運営しているクライアントが、ケアプランデータ連携システムを選んだ。その理由を聞いたとき、正直うなずいた。 「月の利用料は数千円です。でもケアマネさんとのやりとりが全部オンラインになったので、電話とFAXの確認作業が週に4〜5時間なくなりました。書類を探す手間も減って、事務の子が『これ、もっと早く入れてほしかった』って言ってました」 コストより、現場が変わった実感の方が先に来ていた。 制度設計として見ると、「加算の上乗せを得るための条件」として連携システムへの加入を入れることで、現場の業務効率化を半強制的に動かしている。「ICTを入れてください」と言うだけでは動かない現場が、お金のインセンティブで動く。やり方は荒いが、効いている。 私はこれを「使う側にとって良い強制力」と呼んでいる。

今週中に動かない施設は、5月に詰む

6月から算定開始するには、5月中に都道府県への届出が必要だ。多くの自治体では5月中旬〜末が締切になる。締切は自治体によって微妙に違うので、必ず担当課に確認してほしい。 つまり、今月(4月)に動き出さないと、5月に確実に時間が足りなくなる。 A理事長には電話口でこう伝えた。「まず都道府県の担当課に電話して、生産性向上推進体制加算の届出締切と書類を確認してください。それだけでいい」と。 今週確認してほしいのは2点だ。
  1. 自分の事業所が訪問・通所系か施設・居住系かを整理する(複数サービスを運営している法人は種別ごとに確認)
  2. 都道府県の担当課に締切日と提出書類を問い合わせる(電話1本でOK)
動き出さないことが一番のリスクだ。 6月以降、毎月の給付費明細に差がつき始める。半年後に「あの施設は取れていたのにうちは取れていない」と気づいたとき、取り返す手段はない。 あなたの施設は、今週中に動けそうか?

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度改定の最新情報は厚生労働省の公式ウェブサイトをご確認ください。


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