訪問看護 介護報酬改定案 夜間加算とICT連携の3点【2026】
月曜の夜8時、一宮市の訪問看護ステーションの事務所。管理者のDさんが、今月初めに入った深夜の緊急訪問の記録を、介護給付費の請求明細と並べて見ています。
「月の最初の1回だけ、深夜の加算が付かないんですよね。行っている時間は同じなのに」。Dさんがずっと首をかしげてきたこの点に、ようやく手が入りそうです。
2026年10月19日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、厚生労働省は訪問看護の見直し案をまとめて示しました(第271回介護給付費分科会 資料)。来年度の介護報酬改定に向けたもので、厚労省は年内にも施策の大枠を固める予定と報じられています(介護ニュースJoint)。
まだ「案」の段階です。それでも、事業所の収入と体制に直結する話が3つ入っていました。
1つ目。月初の夜間訪問は「取れない」から「取れる」へ変わるのか
今の介護保険のルールでは、緊急時訪問看護加算を算定している利用者の場合、その月の初回の緊急時訪問には「早朝・夜間加算」と「深夜加算」を算定できません。2回目以降の緊急訪問なら算定できます。資料はこの点を「医療保険とは異なり」と書いていて、医療保険との差がはっきり問題として挙がりました。
どちらも訪問1回ごとに所定の単位数へ上乗せする加算で、深夜のほうが上乗せ幅は大きく設定されています(資料 訪問看護)。
対応案はこうです。
夜間の訪問看護を提供した際の月初回の訪問時に、緊急時訪問看護加算を算定している場合も「早朝・夜間加算」及び「深夜加算」を算定可能としてはどうか。
通れば、Dさんの事業所のように深夜の呼び出しが月初に重なる月ほど差が出ます。経営側でいま確認しておきたいのは、月初の夜間・深夜の緊急訪問が年に何件あるか。これはレセプトと訪問記録があれば数えられます。改定後の影響額を見積もる材料は、実は手元にあるわけです。
夜間の話はわかりやすい。もう少し複雑なのが、次のオンライン診療の補助です。
2つ目。オンライン診療の補助、今の「20分未満」で割に合っているか
医師が画面越しに診察し、看護師が患者さんの自宅で補助する形を「D to P with N」と呼びます。医療保険では今年度の診療報酬改定で評価されました。介護保険では今年5月の通知で暫定的な扱いが示されています。
その暫定ルールは、次期介護報酬改定までの間、予定された訪問看護がない日に補助をした場合に所要時間20分未満の訪問看護費を月1回に限って算定するというものです。
- 指定訪問看護ステーション 314単位(介護予防は303単位)
- 病院・診療所 266単位(介護予防は256単位)
ところが、資料に載った令和7年度老人保健健康増進等事業の調査では、診察・診療の補助そのものにかかった時間は平均9.7分。前後の準備やフォローまで含めると、平均35.9分でした。20分未満の区分で受けている業務が、実際には30分を超えている。これでは割に合いません。
対応案は「オンライン診療の補助を行った場合に評価を新設してはどうか」です。新しい評価の単位数や要件は、現時点の資料にはまだ出ていません(要確認)。
うちが支援先の管理者さんにお願いしているのは、補助1件ごとに「準備・補助・事後対応」の時間を分けて記録しておくことです。新設の要件が時間で区切られるのか、回数で区切られるのか。どちらに転んでも、記録がある事業所ほど届出の判断が早くなります。
そして3つ目は、多くの事業所がすでに手を付け始めている話です。
3つ目。ICT連携の評価、ヒントは医療保険の「連携機関5以上」にある
医療保険では令和8年度診療報酬改定で「訪問看護医療情報連携加算」が新設されました。1,000円(月1回)で、施設基準のひとつに連携機関(特別の関係にあるものを除く)の数が5以上という要件があります。この加算のホームページ掲載については、以前の記事で期限と手順をまとめました。
今回、介護保険側でも「訪問看護ステーションが地域の医療機関等とICTを用いて情報連携した場合の評価を設けてはどうか」という対応案が出ています。資料には全国訪問看護事業協会の2024年調査も載っていて、地域連携にICTを使っている事業所が感じた効果は「時間の短縮」が75.6%で最も多い結果でした。
介護保険側の要件は、まだ示されていません。医療保険と同じ「5以上」になるかどうかも不明です。ただ、医療保険の加算をすでに届け出た事業所は、連携先の一覧も同意の取り方も整っているはず。介護保険側が近い形で来れば、その準備がそのまま使えます。
まだ届け出ていない事業所は、いまの連携先を数えるところから。地域の病院や診療所、薬局、居宅介護支援事業所。私が支援先で一緒に数えてみると、思ったより少ないことが多いんです。
ここまでは「取れるものが増える」話でした。最後に、逆向きの話をひとつ。
見落とすと痛いのは、看護体制強化加算の経過措置が終わる話
看護体制強化加算には、令和5年3月時点で算定していた事業所向けの経過措置があります。急な退職などで看護職員6割以上の要件を満たせなくなっても、都道府県等に採用計画を出せば、採用されるまでの間は要件の適用が猶予される仕組みです。
老健局老人保健課の調べでは、令和8年8月1日時点でこの経過措置を設けている都道府県等はありませんでした(127の都道府県・政令市・中核市が対象、熊本地震の影響を踏まえ熊本県は除く)。対応案は「経過措置を終了することとしてはどうか」です。
実際に猶予を受けている自治体がない以上、多くの事業所には影響がないはずです。怖いのは、看護職員の退職が続いたときに「何かしら猶予があったはず」と思い込んでいるケース。経過措置がなくなれば、6割を割った月に加算は止まります。看護職員の比率は、毎月の勤務表を締めるタイミングで確認しておくのが安全です。
このほかにも、資料には次の対応案が並んでいます。
- 事故発生時などの安全管理体制に関する研修受講を「望ましい」として運営基準に加える
- 利用者宅で残薬を確認し、医師・薬剤師等へ報告することを運営基準上の要件にする
- サテライトの設置について、より具体的な要件の目安を自治体に示す(1事業所あたりの最大値が47の事業所もある)
- 専門管理加算の評価対象を拡充する
- 算定率の低い介護予防訪問看護の初回加算(Ⅰ)を簡素化する
大枠が固まる年末までに、事業所でできる準備は3つだけ
案が確定するのは、これからの議論しだいです。ただ、確定してから動くと、届出と体制づくりが改定の直前に一気に押し寄せます。いまのうちにやっておけるのは、この3つです。
- 月初の夜間・深夜の緊急訪問が、過去1年で何件あったかを数える
- オンライン診療の補助の件数と、前後を含めた所要時間を記録し始める
- ICTで情報を共有している連携先を一覧にし、看護職員の比率と並べて毎月見る
どれも、管理者さんが現場の合間にやるには地味で手間のかかる作業です。うちのような外部の事務チームに数え上げと記録の仕組みづくりを任せて、管理者さんには利用者さんと職員のほうを見ていてほしい。Dさんの事務所の灯りが、月曜の夜8時に消えるくらいには。
出典・参考情報
- 第271回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料(厚生労働省、確認日:2026年10月21日)
- 資料 訪問看護(第271回介護給付費分科会)(厚生労働省、確認日:2026年10月21日)
- 訪問看護、オンライン診療の補助を新たに評価 厚労省提案 ICTの情報連携も(介護ニュースJoint、確認日:2026年10月21日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の内容は審議中の対応案であり、今後の議論で変更される可能性があります。最新の情報は厚生労働省の公表資料をご確認ください。
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