障害福祉 処遇改善加算Ⅰロ ICT要件と給与計算3点【令和8年6月】

金曜の16時、大阪市内の就労継続支援B型事業所。 サービス管理責任者兼事務担当のAさんは、令和8年度処遇改善加算の区分変更届を前に、画面を閉じた。「Ⅰロ区分」の要件欄に「業務支援ソフト・情報端末の導入」と書いてある。自事業所にあるのは、開業時から変わらない給与計算用のExcelシートだけだ。 私がここ数か月でクライアントから一番多く受ける相談が、まさにこれだ。「処遇改善加算は取りたい。でも業務支援ソフトって何を入れればいいんですか」という問い合わせ。

令和8年6月施行「Ⅰロ区分」は何が違うのか

令和8年6月1日施行の障害福祉サービス等報酬改定で、処遇改善加算に「Ⅰロ」「Ⅱロ」という上位区分が追加された(厚生労働省:令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について、2026年2月18日)。 従来の「Ⅰイ」「Ⅱイ」は、キャリアパス要件と職場環境等要件を満たせば取得できた。「ロ区分」はそこに「生産性向上の取組み5項目以上の実施」という条件が加わり、そのうち2項目が必須とされている。その必須2項目の一つが「業務支援ソフト・情報端末の導入」だ(出典:介護のコミミ「令和8年度版 処遇改善加算とは」)。 「ロ区分」へ移行することで、月0.3万円相当(約1.0%)の上乗せが得られる。全体の賃上げ目標は月1.0万円相当(約3.3%)とされており、定期昇給分を含めると最大月1.9万円(約6.3%)の改善が設計されている(数値はいずれも二次資料による目安値。実際の加算額はサービス種別・加算区分により異なる)。 もう一つ押さえておきたい変更がある。今改定から計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援にも処遇改善加算が新設された。グループ全体で相談支援事業所を持つ法人は、届出の対象を漏れなく確認してほしい。

「業務支援ソフト・情報端末の導入」とは具体的に何か

行政窓口によって解釈の幅がある。うちが複数の障害福祉事業所を支援してきた中で、実績として通りやすいと確認できた例を挙げる。
  • クラウド型給与計算・勤怠管理ソフトの導入(マネーフォワード クラウド給与、SmartHR等)
  • タブレット端末による現場記録のペーパーレス化
  • シフト管理ツール(クラウド型)の導入
ここで注意が必要なのは、Excelだけの環境は「導入」に該当しないケースが多いという点だ。「クラウドまたはそれに準じるSaaSツール」かどうかが実質的な判断基準になる。私が見てきた事例では、給与計算をクラウドに移すのが最も確実に要件を満たしやすい。 ただし、これは行政窓口によって判断が異なる。製品名を書いた事前照会を書面で提出し、担当者の回答を記録に残すことを強くすすめる。口頭でOKをもらって導入したあとに「これは該当しない」と言われた事例を、うちのクライアントで1件経験している。

給与計算ツール移行で詰まる3点

クラウド給与ソフトを入れるとき、障害福祉施設が詰まりやすいポイントがある。

1. 利用者の工賃と従業員給与を混在させてしまう

就労継続支援B型では「工賃」(利用者への支払い)と「職員給与」(従業員への支払い)が同じ月に発生する。マネーフォワード クラウド給与は従業員給与専用のツールであり、工賃支払いには対応していない。工賃管理はカイポケや別シートで行い、クラウド給与と分離して運用するフロー設計が必要だ。最初にここを混同すると、毎月25日に詰む。

2. 処遇改善加算の配分計算を手動で反映するのが遅れる

クラウド給与ソフトは「処遇改善加算の自動計算」をしない。加算額の算出は請求ソフト(カイポケ等)か別シートで行い、その金額を手動で給与ソフトの加算支給欄に入力するフローを事前に設計しないと、月末に作業が詰まる。移行前に「誰が・いつ・どこから数字を持ってきて・どこに入力するか」の1枚の手順図を作ることが先決だ。

3. 社会保険料の端数計算で前の方法と差異が出る

ExcelからクラウドSaaS移行すると、社会保険料の端数処理ルールが微妙に違う場合がある。クラウドソフトは法令に沿った端数処理を自動で行うため、移行初月は旧計算との1〜数円のズレが出る。これを「バグ」と思わず、移行前後で1か月は突き合わせ確認の作業を設けること。

Ⅰロ届出前に確認する3点

区分変更の届出を提出する前に、この3点だけ確認してほしい。
  1. 導入予定のソフトが「業務支援ソフト」に該当するか、自治体に書面確認を取ったか
    面倒に見えても、製品名を明記した照会書を出して文書回答をもらうのが最も安全だ。
  2. 生産性向上取組5項目のリストが整理されているか
    業務支援ソフト導入の他に、「現場課題の見える化」「多職種連携」など5項目のリストが必要になる。項目の選択肢は都道府県の手引きを参照すること。
  3. 変更届の提出期限に間に合うか
    処遇改善加算の区分変更届には提出期限がある。令和8年6月以降で未提出の事業所は、最寄りの都道府県・指定都市に期限を確認してほしい。加算は届出日以降から適用が原則で、遅れた月分は遡及しない。
うちの事務支援サービス「じむちょー君」では、届出書類の準備から自治体への事前照会代行まで対応している。「制度解釈の調査に1日費やして、支援が後回しになる」という状況は、事業所として本末転倒だ。 このまま令和8年度が終わると、Ⅰロを取れたはずの月が全部「Ⅰイ」止まりになる。差額は職員一人ひとりの手取りに直結する話だ。

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出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細・届出期限・要件の解釈は都道府県・指定都市の窓口にご確認ください。


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