保育士処遇改善加算 一本化──月額1/2配分が新ルール【2026】

「うちの主任、夏のボーナスで一括配って終わりじゃダメなんですか」──認可保育所B園のC園長から、6月の終わりにこう聞かれた。電話口で一瞬、答えに詰まった。今日はこの話をしたい。

令和7年度から、保育所・認定こども園・小規模保育などの処遇改善等加算は Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ が一本化 された。3本立てだった旧制度が「区分①基礎分・区分②賃金改善分・区分③質の向上分」の3区分に組み直され、配分のルールも書き換わっている。一番効いてくるのが、区分②と区分③の合計のうち「2分の1以上を月額で配分する」という要件だ。C園長の質問への答えはここに尽きる。「夏のボーナスで一括」だと、半分しか払えない。

うちは認可保育所の処遇改善届出・実績報告も預かっている。一本化の通知が出てから、配分設計の相談がこの数か月で一気に増えた。今日はその現場の話を3つにまとめておく。


区分②③で「半分は月額」と言い切る根拠──こども家庭庁の通知はここに書いてある

まず根拠から押さえておく。令和7年度(2025年度)以降の制度の枠組みは、令和6年12月19日 第8回 子ども・子育て支援等分科会の資料9「処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」 で示された。後追いで こども家庭庁「令和7年度以降の処遇改善等加算について」(2025年10月6日 公表)が説明資料として出ている。

核は3点だ。

  • 処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ を 令和7年度から一本化。区分①基礎分・区分②賃金改善分・区分③質の向上分の3区分に再整理
  • 区分②と③の合計額のうち「2分の1以上」を、基本給または毎月支払う手当として配分すること(残額は一時金・賞与で配分可)
  • 旧加算Ⅱの「副主任・専門リーダー等に1人以上月額4万円を配分する」要件は 撤廃。「1人 月額4万円を上限に、施設の判断で柔軟に配分」へ切り替え

C園長が言った「夏のボーナスで一括」は、旧加算Ⅱ時代の感覚ならグレーゾーンだった。一本化後はクロに近い。区分②③合計のうち 半分は4月から3月まで毎月の給与(基本給か月額手当)で払い切る必要がある からだ。一時金で出して良いのは、半分まで。ここを読み違えると、実績報告のときに足りない月額分を遡及して払う羽目になる。私が見てきた中で、これが一番後悔の声が大きい。


ありがちな配分ミス3つ──「夏のボーナス丸投げ」で詰む

うちのクライアントで実際に起きかけた配分ミスを3つ挙げる。どれも「悪意がない」のが厄介なところ。

ミス1:年度初めに月額配分の設計をせず、賞与期だけ大盛り。 年度途中で慌てて月額側に積み増しすると、職員ごとに4月遡及の手当を出すことになる。経理は地獄、職員も「なんで急に増えたの」と戸惑う。

ミス2:区分②と区分③を別々に「半分以上月額」と判定してしまう。 通知は「区分②と区分③の 合計額」で半分以上を月額にする書きぶり。区分単位で別計算する必要はない。逆に区分単位で完璧にやろうとして、配分設計がガチガチになる園を何件か見た。

ミス3:本人通知を「賃金台帳に書いてあるから良い」で済ませる。 一本化後の運用では、職員一人ひとりに対して処遇改善でいくらの賃上げが行われたかを 本人が分かる形で通知 することが求められる。給与明細の項目を増やすか、別紙で配ること。賃金台帳で代用はできない。

3つとも、知っていれば防げる。知らないと、年明けの実績報告で青ざめる。私はC園長に「夏のボーナス案は半分まで」とだけ電話で伝えて、翌週に配分シートを作り直した。


一本化で消えた「副主任に4万円」要件──自由度が増えた、ということは

旧加算Ⅱは正直、運用が窮屈だった。副主任・専門リーダー・分野別リーダーに 「1人以上に月額4万円」 を配るのが要件で、特定の役職に4万円が乗ると、その下の中堅職員との給与差が広がり、人事評価との整合に頭を抱える園が多かった。

一本化後は、この「1人以上4万円」要件が落ちた。代わりに 「1人月額4万円を上限に、施設の判断で柔軟に配分」 に組み替えられている。極端な話、副主任に2万円、専門リーダーに3万円、中堅保育士6人に1万円ずつ、といった配分も成立する余地が出てきた。

自由度が増えた、ということは、説明責任も増える。「なぜこの配分にしたのか」を、園内で言語化できないと、職員から「あの人はなぜ私より高いのか」と必ず聞かれる。私のところに来た相談で多いのが、「キャリアパス要件」と「配分理由」が紐づいていない園だ。職員等級ごとの期待役割を1枚紙に整理しておかないと、説明できない。

うちでは、キャリアパス表と配分マトリクスを 同じ A3 1枚に並べる ことを薦めている。等級と職務、職務と配分金額が、目で追えば全部つながる状態にしておく。これだけで、職員からの問い合わせが半分以下になる。


うちが認可保育所の処遇改善実務で外さない3点

最後に、Relief が園長・理事長から処遇改善を任されたときに必ずやる3点を書いておく。

1. 配分シートを年度初めに作って、4月の給与計算に反映する。 月額配分は4月から走る。3月までに翌年度の配分シートを作っておかないと、4月給与で月額側がゼロ円スタートになる。逆算すると、2月には配分会議を済ませておきたい。

2. 「月額:一時金」の比率を最初に固定し、上半期と下半期で揺らさない。 区分②③合計の半分が月額、半分が一時金、というのが一番シンプル。途中で揺らさない。理事長から「夏のボーナスを厚くしたい」と言われても、月額側を削るのではなく、一時金側の半分の範囲内で組み直す。

3. 本人通知を給与明細で完結させる。 別紙運用は事故が増える。給与明細に「処遇改善加算配分額」の項目を立てて、毎月そこに金額が見える状態を作る。一時金月は一時金額を別欄で表示。これで、職員の疑問は給与明細1枚に集約される。

処遇改善等加算は、保育所運営の収入の中で構成比が大きい。一本化で枠組みは確かにシンプルになったが、現場の配分設計はむしろ 「園としての判断を言語化する」局面が増えた。ここを丁寧にやれる園と、ボーナス丸投げで済ませる園の差は、3年後の離職率に必ず出る。私はそう見ている。

C園長への電話の続きは、来週うちのオフィスでお茶を出しながら、配分マトリクスを一緒に書く約束になっている。やってみる価値はあると思う。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新情報はこども家庭庁の公式ページをご確認ください。


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