放デイ キャリアアップ助成金 80万円──正社員化3点【令和8年】
令和8年度の正社員化コースは「6か月+6か月」で80万円が基本になった
まず数字から押さえる。中小企業の場合、有期雇用などから正社員へ転換し、転換後6か月勤務した時点で第1期40万円。さらに6か月、計12か月勤務した時点で第2期40万円。合計80万円が、いわゆる「重点支援対象者」の基本支給額になる(厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日付))。 重点支援対象者でない場合は、有期から正社員で40万円、無期から正社員で20万円。ここは令和7年度の運用と大きくは変わらない。変わったのは、後で書く加算と、いわゆる「重点」が増えたことだ。 放デイの実務に置き換えると、こうなる。半年経った契約社員を年度途中で正社員に転換する。就業規則上の正社員定義を改めて確認し、無期雇用かつ社会保険加入で、所定労働時間が通常の社員と同等。これを満たして6か月走り切れば、第1期の40万円が見えてくる。 ここで現場がよく踏むのが、就業規則上の「正社員」と、運用上の「常勤」を取り違えるパターンだ。常勤換算で配置基準を満たしていれば運営上は問題なくても、就業規則に正社員区分の定めがなければ、助成金は1円も出ない。就業規則の正社員定義を、雇用契約書と一字一句突合する。これが申請前の最初の山だ。放デイで効きやすいのは「情報公表加算」と「多様な正社員制度規定加算」
令和8年度の最大の見直しは「情報公表加算」の新設だ。正規雇用への転換に関する情報を自社サイトや、厚労省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表すると、1事業所あたり中小企業で20万円が上乗せされる(厚生労働省 キャリアアップ助成金 案内ページ)。 放デイにとってこの20万円は実利以上の意味がある。応募側は採用前に「ここは正社員転換実績があるか」を必ず気にする。情報公表でその実績が外から見える状態になると、求人媒体の応募率にも効いてくる。20万円のために動くのではなく、応募率の改善に20万円が付いてくる、と読み替えた方が現場感に合う。 もう1本、放デイで使いやすいのが「多様な正社員制度規定加算」中小企業40万円だ。短時間正社員、勤務地限定正社員、職種限定正社員などの区分を就業規則に新設して、その区分で実際に転換すれば加算が乗る。 放デイの現場には、午後だけ働きたい元保育士、土曜だけ出られる元支援員、自宅近くだけで動きたい子育て中のスタッフがいる。フルタイム正社員1本では拾えなかった層を、短時間正社員区分で受け止める。制度として整えるのは社労士と詰める必要があるが、人材プールとしては大きい。 加算をフルに積むと、「正社員転換制度新規規定加算」中小企業20万円も含めて、1事業所あたり中小企業で最大140万円超まで届く構成になる。逆に言えば、加算を意識せずに「とりあえず正社員化だけ申請」してしまうと、本来取れたはずの数十万円を毎回置いてくる。放デイ管理者が今週中にやる3点
ここからは、月末に読んでくれた人向けの実務メモだ。難しくない。3点だけに絞る。- キャリアアップ計画書を労働局へ提出する。これは正社員化の前日までに提出が必要で、提出していないと、その後どれだけ要件を満たしても1円も出ない。半年後の支給申請の段階で気付くと、もうやり直しが効かない。今日、計画書のひな型を労働局のサイトから落とすところから始める。
- 就業規則の「正社員」定義と、雇用契約書の文言を突合する。所定労働時間、無期、社会保険加入、賃金体系。放デイは小規模事業所が多く、就業規則が古いまま運用だけ走っているケースが珍しくない。社労士と棚卸しする。
- 転換予定者の「正社員化前6か月の賃金台帳」を整える。賃金が3%以上上がっていることが要件のひとつなので、転換時点で何月の賃金と比べて3%引き上げるのか、最初に決める。台帳と給与計算の整合が取れていないと、ここで詰む。
うちが見ているリアルな相談ケース
うちのクライアントの放デイ管理者からは、ここ半年で「契約社員を正社員にしたいが踏み出せない」相談が増えた。共通しているのは、就業規則と運用がずれていることへの不安と、加算の取りこぼしへの後悔だ。 ある放デイの管理者は、過去に正社員化はしたが、キャリアアップ計画書を出していなかったために40万円を取り損ねた。「あの時知っていれば」と言っていた。情報を知らないだけで、年間で1人分のパート人件費が消える。これが放デイ規模では結構な痛手になる。 逆に、計画書を先に出してから動いた管理者は、第1期40万円を就業規則の見直しに、第2期40万円を多様な正社員制度の整備に充てていた。助成金を「もらえたらラッキー」で終わらせず、就業規則のアップデート原資に回す発想だ。これは、私が放デイ経営者に強くお勧めしたい使い方になる。余談だが、9月には業務改善助成金もある
おまけ程度に書いておくと、令和8年度の業務改善助成金は、申請受付が令和8年9月1日に開始する予定だ。事業場内最低賃金を一定額以上引き上げて、生産性向上の設備投資を行った中小企業に、設備投資費の一部が助成される。 キャリアアップ助成金が「人を正社員に変えるための原資」だとすれば、業務改善助成金は「人を辞めさせないための賃上げ+設備投資の原資」になる。放デイの場合、送迎ルート最適化のソフト、児童記録の電子化、勤怠管理のクラウド化あたりが対象になりやすい。 7月から夏にかけては、キャリアアップ助成金の正社員化を仕込みつつ、9月の業務改善助成金の準備に入る。この二段構えで、人と設備の両輪を回しに行く。これが、私が今期、放デイ経営者と一緒に走っている動き方だ。 放デイは制度依存度の高い事業だ。報酬改定の議論が続く中、外部からの原資をどれだけ拾えるかが、5年後の生き残りに直結する。Eさんのあのひと言、契約更新どうしますか、への答えを、来月の今頃には数字で持っておきたい。出典・参考情報
- 厚生労働省 キャリアアップ助成金(厚生労働省、確認日:2026年6月30日)
- 事業主の皆さまへ キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日付)(厚生労働省、確認日:2026年6月30日)
- 厚生労働省 業務改善助成金(厚生労働省、確認日:2026年6月30日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新情報は各官公庁の公式サイトでご確認ください。助成金の支給要件・支給額は予告なく改正される可能性があります。
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