障害福祉の処遇改善 実績報告──全額返還を防ぐ3点【2026年7月】
未提出=全額返還、という制度設計を理解しているか
令和7年度(2025年4月〜2026年3月)に福祉・介護職員等処遇改善加算を算定した障害福祉サービス事業者は、令和8年(2026年)7月31日までに実績報告書を指定権者に提出する義務がある。 指定権者は事業所所在地の都道府県・指定都市・中核市。出し先は「都道府県の障害福祉主管課」「市の障害福祉課」など、計画書を出したのと同じ窓口だ。 提出を忘れるとどうなるか。静岡市の公式案内はこの一文で締めくくられている。「期限までに実績報告書の提出を行わない場合は、加算の算定要件を満たしていない不正請求として全額返還となることがあります」。 全額返還。一部減算ではない。1年間積み上げた加算が一夜で消える設計だ。 ここまで読んで「うちは大丈夫」と思った人ほど、見落としやすい3点に当てはまる。順番に潰す。1点目:賃金改善額の集計を「給与計算ソフト任せ」にしていないか
処遇改善加算の実績報告で一番ズレるのは、賃金改善見込額と実績額の差だ。計画書で「年間1,200万円賃金を上げます」と書いた以上、その額が実際に支払われていなければ返還になる。 ここで詰まる事業者の共通点は、給与計算ソフトの「処遇改善手当」項目だけを根拠に集計しているケースだ。実は加算財源は手当だけではなく、基本給アップ・賞与・法定福利費の事業主負担分・一時金のいずれにも充てられる。給与ソフトの一行だけ見て「足りない」と慌てて期末に追加支給する事業所を、私は毎年見ている。 正しい集計は、令和7年4月〜令和8年3月の各月給与台帳から、対象職員ごとに以下を全部足す。- 処遇改善加算財源で増額した基本給
- 処遇改善手当・特別手当・ベースアップ手当
- 処遇改善財源で支給した賞与・一時金
- 上記に伴う社会保険料の事業主負担増
2点目:キャリアパス要件・職場環境等要件の「証拠書類」が手元にあるか
令和6年度の改定で福祉・介護職員等処遇改善加算は1本に統合され、加算区分はIからIVの4段階になった。各区分にキャリアパス要件と職場環境等要件が紐づく構造で、これは令和7年度も同じ枠組みが続いている。 実績報告で監査の対象になるのは、ほぼ100%この要件部分だ。「やりました」と書類で書けても、現物の証拠が出てこない事業所が毎年つまずく。 私が顧問先で必ず棚卸しさせるのは、次の5点だ。- キャリアパス要件I:任用要件・賃金体系規程の最新版(4月以降に改定があれば改定後)
- キャリアパス要件II:資質向上計画と、実施したOJT・研修の記録
- キャリアパス要件III:昇給判定の仕組みを定めた書類と直近の判定記録
- 職場環境等要件:取り組み区分ごとに実施した内容を1件1件記録した一覧
- 月額平均8万円超または年収440万円以上の改善対象者の氏名・職種・改善額
3点目:「複数事業所一括算定」の按分計算を、誰が責任を持つか決まっているか
法人で就労継続支援B型と放課後等デイサービスと障害者グループホームを併設運営している場合、処遇改善加算は事業所ごとに別個の算定・別個の実績報告になる。同じ法人でも、報告書は3通だ。 ここで毎年トラブルになるのが、本部経理がまとめて集計したつもりで、各事業所への按分基準が曖昧なまま申請してしまうケース。法人本部の管理職員に処遇改善財源を充てる場合は、各事業所のサービス提供時間や対象職員数で按分する必要があるが、その按分根拠がどこにも残っていない事業所が珍しくない。 うちが介入した障害者GHのF管理者は、計画書を出すときに「按分は本部で計算してくれているはず」と思い込んでいた。実績報告書を作る7月になってから本部に確認したら、按分どころか各事業所の対象職員リストすら作られていなかった。 責任分界を6月中に決める。- 本部経理:法人全体の財源総額と按分基準の作成
- 各事業所サビ管または管理者:対象職員リスト、賃金改善実績、要件充足記録の作成
- 本部経理:各事業所の数字を統合し、最終確認
6月のうちに動く事業所が、毎年返還リスクから外れている
実績報告の事故は、7月後半に動き始めた事業所で起きる。6月のうちに集計の網と書類保管と按分責任を整える事業所は、毎年同じところを苦しまない。 加算は取った後の運用で価値が決まる制度だ。計画書の段階で評価される設計ではない。 うちでは障害福祉サービス事業者の処遇改善加算 実績報告について、6月後半から7月中旬にかけての伴走支援を受け付けている。来年も同じことで悩みたくない事業所だけ、相談してほしい。出典・参考情報
- 福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する事務連絡(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課、確認日:2026年6月19日)
- 令和7年度介護職員等処遇改善加算実績報告書の提出(静岡市 福祉総務課、確認日:2026年6月19日)
- 報道発表資料 2026年6月(厚生労働省、確認日:2026年6月19日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。指定権者により提出様式・期限の細部が異なる場合があります。各事業所所在地の都道府県・市の障害福祉主管課の最新案内を必ずご確認ください。
あわせて読みたい
- 障害者GH 夜間支援等体制加算 3類型 届出前の3軸【令和8年】
- 令和8年度 障害福祉サービス等報酬改定の衝撃 ─ 経営者が今すぐ取るべき3つの行動
- 業務改善助成金 介護施設──9月開始までに動く3点【2026】
株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!
株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。
