障害福祉 加算届出の期限と手順 完全ガイド【2026】

8月の木曜、夕方の6時前。安城の放課後等デイサービスの事務室で、D管理者が封筒の宛名を書き直しています。手元には、先週から机の隅に置きっぱなしだった加算の届出書。送迎から戻ってきた職員が横を通り過ぎるたび、手が止まる。この封筒が今日の消印になるか明日になるかで、事業所に入る報酬がまるまる一か月ずれます。

私が障害福祉の事業所に入って最初に見るのが、この「封筒の置き場所」です。加算届出でお金を落とす事業所は、要件を知らないのではありません。誰が、何をきっかけに、いつ出すかが決まっていないだけ。

今回は、放課後等デイサービスをはじめとする障害福祉サービス事業所の加算届出について、期限の決まり方と、出し忘れを構造的に止める運用の作り方を整理します。愛知県所管の事業所を例に、公式ページの記載をそのまま引きながら書いていきます。


加算届出で事業所が落としているのは、要件ではなく「1日」

加算の届出の根拠は、平成24年3月30日付け障発0330第16号という国の通知。愛知県の案内にはこう書かれています。

平成24年3月30日付け障発0330第16号の厚生労働省の通知に基づき、指定事業者は、加算を新たに算定する場合や加算の変更をする場合など、次のとおり、届け出なければなりません。なお、届出は郵送で受け付けています。

ここで見落とされがちなのが「郵送で受け付けています」の一言です。愛知県所管の障害福祉サービス事業所は、加算の届出を窓口に持ち込むのではなく、郵送で送る。つまり、事業所の手を離れてから県に届くまでの日数が、そのまま算定開始月に影響します。

そして肝心の期限。

届出に係る加算等(算定される単位数が増えるものに限る。以下同じ。)については、届出が毎月15日以前になされた場合には翌月から、16日以降になされた場合には翌々月から、算定を開始するものとします。(消印有効)

15日と16日。たった1日の差で、算定開始が1か月ずれます。消印有効なので、15日の集荷に間に合えば15日扱い。逆に言えば、15日の夕方に「明日出しておいて」と言った瞬間、その加算は1か月分消えます。

加算1件あたりの単位数が小さくても、定員10名の放デイで毎日算定される加算なら、1か月分の取りこぼしは決して小さくない。しかもこれは、要件を満たしているのに取れなかった分です。審査で落ちたわけでも、指摘を受けたわけでもない。ただ封筒を出す日が1日ずれただけで消える報酬が、毎年どこかの事業所で発生しています。


増える届出と減る届出では、期限の性質がまるで違う

ここを取り違えている事業所が、本当に多い。

単位数が増える方向の届出は「締切型」です。15日という締切があり、間に合えば翌月から算定できる。間に合わなければ翌々月。損はしますが、事故にはなりません。

問題は、減る方向です。愛知県「加算等の届出について(障害者総合支援法)」には、こう明記されています。

算定される単位数が減る場合及び加算が算定されなくなる場合は、速やかに届け出てください。なお、この場合は、加算等が算定されなくなった事実が発生した日(特定事業所加算については事実が発生した日の属する月の翌月の初日)から加算等の算定はできませんので、届出が遅れると返還が生じることにご留意ください。

減る方向に「15日まで」という締切はありません。あるのは「速やかに」だけ。そして算定できなくなるのは、届出を出した日ではなく事実が発生した日からです。

この非対称が、返還の温床になります。人員配置の加算を算定していた事業所で、常勤の職員が3月末に退職した。後任の採用が難航して、実際に配置が戻ったのは7月。届出を出したのは、運営指導の事前提出書類を作っていた9月。この場合、4月から6月分の加算は事実発生日にさかのぼって算定できず、返還の対象になります。

届出が遅れたから返還になるのではありません。事実が発生した時点で、すでに算定できなくなっている。届出はそれを行政に伝える手続きにすぎない。ここを取り違えたまま「まだ出していないから大丈夫」と考えている管理者を、私は何人も見てきました。

ちなみに、単位数が動かない変更については、同ページに「単位数の変更がない場合提出不要です。」とあります。全部出そうとして事務が回らなくなるより、出すべきものを確実に出す。そのための線引きです。


処遇改善加算だけ、締切が2か月前に立っている

加算届出の期限は「前月15日」で統一されている、と覚えていると事故ります。処遇改善加算は別枠です。

愛知県「指定事業所の申請・届出・報告について(障害者総合支援法)」の一覧には、こう並んでいます。

  • 加算等の届出(処遇改善加算以外):新たに算定する又は算定する単位数が増える場合は前月15日<消印有効>。算定する単位数が減る又は算定されなくなる場合は判明次第速やかに提出
  • 処遇改善加算の届出:新規指定の事業所は指定月の15日<消印有効>。上記以外の事業所は加算を算定しようとする月の2か月前の末日<消印有効>

2か月前の末日。前月15日のつもりで動き出すと、この加算だけは丸ごと間に合いません。算定を始めたい月から逆算して、締切が二段階手前に立っていると読む必要があります。

処遇改善加算は金額が大きく、賃金改善計画の作成も伴います。その準備期間を見込んで締切が前倒しになっている、と考えれば筋は通る。ただ、加算届出のカレンダーを1本の線で管理していると、この2か月前が必ず抜けます。

同じ一覧には、届出関係の期限がまとめて載っています。手元の運用表と、一度突き合わせてほしい。

  • 変更届:変更日から10日以内<必着>。定員の増減や部屋の使用方法の変更等を行う場合は、変更日の21日前までに図面相談を提出
  • 休止・廃止の届出:休止・廃止する日の1か月前<必着>
  • 再開の届出:再開後10日以内<必着>。指定基準を確認するため、再開予定日の1か月前までに勤務形態一覧表を提出
  • 利用日数特例の届出:対象期間の前月末日<必着>
  • 指定更新申請:指定更新を受けようとする月(指定日は1日)の2か月前の末日<消印有効>

「消印有効」と「必着」が混在しているのが分かるでしょうか。加算の届出は消印有効、変更届は必着。ここも1日ずれる要因です。


令和7年度から消えた提出物と、それでも残る保管義務

事務負担が減った変更もあります。前年度実績に基づいて算定する加算の自己点検表です。

令和6年度まで「前年度実績に基づき算定する加算等に係る自己点検表」の提出を求めておりましたが、令和7年度からは提出不要としますので、各事業所等においては、当該点検表は適切に保管していただきますようお願いします。

提出は不要になった。保管は必要なまま。ここが落とし穴です。

提出を求められていた頃は、出す作業そのものが点検のトリガーでした。県に送る以上、数字を確認せざるを得なかった。提出が不要になった瞬間、点検表を作る動機が事業所の内側にしか残らなくなります。

そして運営指導では、前年度実績に基づく加算の根拠を求められる。提出不要イコール作成不要ではないという当たり前が、1年、2年と経つうちにゆるみます。うちが支援に入った事業所でも、令和7年度分の点検表が影も形もなかったケースがありました。悪意ではなく、単に「出さなくていい」が「やらなくていい」に翻訳されていただけ。

指定申請の様式についても動きがあります。愛知県は、令和7年8月1日から指定申請に係る書類(申請書及び付表)を国の標準様式に変更しました。経過措置として、令和8年3月指定までは旧様式を使用できるとされています。新様式も旧様式も押印は不要です。この経過措置はすでに終わっている点に注意してください。


出し忘れを止めるのは、人の記憶ではなくトリガーの設計

ここまで期限を並べてきましたが、期限表を壁に貼っても届出は出ません。私が事業所に入るときに必ず作り替えるのは、期限表ではなくトリガーです。

加算届出の出し忘れは、カレンダーからは生まれません。人事と現場から生まれます。だから、日付ではなく事象を起点に設計します。

人が動いたら、その場で加算を疑う

採用・退職・異動・産休・休職。人が動く連絡が管理者に入った時点で、その職員が根拠になっている加算がないかを確認する。ここを人事担当の作業手順に組み込みます。退職届を受理する画面と、加算の一覧を同じ場所に置く。それだけで、事実発生日から動き出せます。

毎月10日に、封筒を出すかどうかを決める

15日が締切なら、判断は10日にやる。10日の時点で出すものがなければ「今月は出さない」と決めて終わり。この「出さないと決める」作業を月次の定例に入れると、出し忘れが事故ではなく判断になります。うちのクライアントには、月次ミーティングの冒頭5分をここに固定してもらっています。

減る方向は、締切ではなく即日で回す

単位数が減る届出に15日は関係ありません。判明した日に出す。ここだけは「まとめて月末に」を許さない運用にします。返還の多くは、まとめようとした善意から生まれる。

送付先と郵送手段を、一度だけ固定する

愛知県の障害児支援分の送付先は、公式ページに次のとおり記載されています。

<送付先>〒460-8501(住所不要)愛知県福祉局福祉部障害福祉課事業所指導第二グループ

住所不要の郵便番号。これを宛名ラベルとして印刷して事務室に常備しておくだけで、封筒作成の時間がなくなります。消印を確実に取るなら、窓口差し出しにして日付印を確認する。細かい話に見えますが、1日の差が1か月になる制度では、この細かさが効きます。


この記事の期限をそのまま使えるのは、愛知県所管の事業所だけ

ここまで挙げた期限と送付先は、すべて愛知県が公表している運用です。名古屋市をはじめとする指定都市や中核市が指定権者になる事業所では、様式も送付先も受付方法も異なります。締切の考え方まで違う場合があります。

自分の事業所の指定権者がどこかを、まず確認してください。そのうえで、その自治体の障害福祉主管課のページを1回だけ丁寧に読み、期限と送付先を運用表に転記する。この作業を年に1回やるだけで、あとは事象ベースのトリガーが回します。

国の側の情報も押さえておきたい。令和8年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&Aは、こども家庭庁のページで VOL.1(令和8年3月31日)と VOL.2(令和8年7月13日)が公開されています。厚生労働省のページにも同じ Q&A VOL.2(令和8年7月13日)が掲載されています。加算の解釈で迷ったときは、自治体に問い合わせる前にここを見る。答えが載っていることが、意外とあります。


届出は事務作業ではなく、報酬を守る設計

加算届出を「事務作業」と呼んでいるうちは、優先順位が上がりません。送迎、記録、保護者対応、職員のシフト。目の前にあるものが常に勝ちます。封筒は机の隅に置かれ、15日は静かに過ぎていく。

私は、加算届出を報酬管理の一部だと考えています。月の売上を左右する判断であり、返還リスクを持つ判断でもある。だとすれば、管理者ひとりの記憶に預けておく仕事ではない。

15日か16日か。速やかに出すか、月末にまとめるか。その判断を人に委ねずに済む形へ落とし込む。それが加算届出の運用設計です。安城の事務室で封筒の宛名を書き直していたD管理者は、いま、10日に判断する仕組みで回しています。手元に置きっぱなしの封筒は、もうありません。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・様式・期限は改正されることがあります。実際の届出にあたっては、必ず自事業所の指定権者が公表する最新の情報をご確認ください。


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