施設基準の定例報告 無床診療所がやる5手順【2026】

# 施設基準の定例報告 無床診療所がやる5手順【2026】 8月12日と8月31日。令和8年の8月には、性格のまったく違う締切が2本立っています。 前者は7月31日で切れた経過措置の再届出期限、後者は施設基準の定例報告の提出期限。案内が届く時期が重なるので、毎年ここが混線します。 そして無床診療所については、定例報告の本体は原則として提出不要です。この一文を知らないまま、20枚近い書類を作って郵送していた診療所を、私は名古屋で実際に見ました。

先に片付けるべきは、11日後の8月12日

順番を間違えると事故になるので、締切の近い方から書きます。 令和8年度診療報酬改定に伴い、令和8年7月31日で終了となった経過措置があります。該当する施設基準の診療報酬を8月1日以降も引き続き算定するなら、令和8年8月12日(水)【必着】までに再度、施設基準の届出が必要です。根拠は厚生労働省保険局医療課の事務連絡(令和8年7月14日)。 対象は入院料系が中心で、たとえば回復期リハビリテーション病棟入院料1は「リハビリテーション実績指数の基準が変更になったため」再届出の対象になっています。無床診療所には直接ぶつからない項目が多い。 けれど「多い」であって「ゼロ」ではありません。5分でいいので一覧に目を通して、自院の届出と突き合わせてください。ここを飛ばして8月13日を迎えると、算定していた点数が丸ごと消えます。取り返しがつかない方の締切です。 すでに新基準で届出済みなら、改めて出す必要はありません。

無床診療所の定例報告は「出さない」が正解になる

ここからが本題です。 施設基準等の届出を行った保険医療機関は、毎年8月1日現在で施設基準の適合性を確認し、その結果について報告を行うものとされています。今日がその基準日です。 問題は「報告を行う」の中身が、施設の種別で真逆になっている点。東海北陸厚生局の定例報告の手順には、こう書かれています。
  • (医科)無床診療所と歯科診療所:確認の結果、届け出ている施設基準についてすべて要件を満たしている場合は結果の報告は不要
  • 病院および(医科)有床診療所:確認の結果にかかわらず、報告用紙の「ア」「イ」のいずれかに〇を付して提出
実物の様式(別紙2-2)を開くと、この非対称がもっと露骨に出ています。「ア 届け出ている施設基準のすべてについて、要件を満たしている場合」の欄には、はっきり提出不要と印字されている。要件を満たしていないものがある場合だけ、「イ」の枠内に該当する施設基準名を書いて出す。記入例には「地域包括診療加算」と入っています。 つまり無床診療所の定例報告は、書類を作る仕事ではありません。点検して、問題がなければ何も送らない。それで完了です。 提出物が発生した場合の期限は令和8年8月31日(月)必着。提出先は所在県を管轄する事務所で、愛知県だけは指導監査課(名古屋合同庁舎第1号館6階)が窓口になります。 なお令和8年度改定では、厚生局自身が「報告を行うものに大幅な見直しがございましたので、改めてご確認をお願いします」と書いています。去年の記憶で動くと外します。

点検の入口は、厚生局が名指しした7項目

出さなくていい、と聞いて力が抜けた方へ。抜けるべきなのは書類作業の力であって、点検の力ではありません。 厚生局は自己点検チェックリスト(無床診療所(医科)用・別紙2-3)で、「年度ごとに実績値が変動する等の理由から、特に注意して施設基準への適合性を確認する必要があります」として、無床診療所の対象を7つに絞り込んでいます。
  1. B001 生殖補助医療管理料
  2. B001-3-2 ニコチン依存症管理料(注1に規定する厚生労働大臣が定める基準)
  3. C000 往診料 在宅療養支援診療所(機能強化型)
  4. C000 往診料 在宅医療充実体制加算
  5. H004 摂食機能療法 注3 摂食嚥下機能回復体制加算(1及び3に限る)
  6. I002 通院・在宅精神療法 注11 早期診療体制充実加算
  7. K838-2 精巣内精子採取術
実績値が動く基準ばかりです。去年は満たしていた、が通用しない。ここだけは数字を引っ張って確認してください。 このチェックリスト自体も、要件を満たしていない施設基準がある場合に限って別紙2-2と一緒に提出するものです。全員が出す紙ではありません。 念のための注意を2つ足しておきます。ひとつは「このチェックリストを各地方厚生(支)局に提出しても、施設基準を届出したことにはなりません」と明記されていること。もうひとつは、「要件を満たしていない」に☑を入れた施設基準については、併せて辞退届を提出する必要があること。満たしていないと書いて出しっぱなしにすると、宙ぶらりんの届出が残り続けます。

算定が止まりやすいのは、届出が要らない加算のほう

7項目を見た人が次に踏む地雷が、これです。 施設基準の中には、そもそも届出そのものが不要になっているものがあります。厚生局が「届出が不要となっている主な施設基準」として挙げているのは、夜間・早朝等加算、明細書発行体制等加算、一般名処方加算、特定疾患療養管理料、耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料、アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料、小児抗菌薬適正使用支援加算、連携強化診療情報提供料、遠隔連携診療料など。無床診療所が日常的に算定している顔ぶれが並びます。 届出が不要なので、当然「届出一覧」には載りません。載らないので点検の対象から外れます。 けれど要件を満たしていなければ、診療報酬は算定できない。届出が不要であることと、要件が不要であることは別の話です。 うちのクライアントで実際に危なかったのは明細書発行体制等加算でした。院内掲示の文言が古いまま更新されていなかった。届出書がないので誰も見返さない、というのが原因です。 自院のレセプトから算定している加算を洗い出して、この「届出不要リスト」と突き合わせる。ここは30分で終わります。

では、様式3-1から3-16のどれを出すのか

要件を満たしていない基準がなくても、別ルートで報告が必要な様式があります。定例報告は2種類あって、いま話してきた「適合性の確認結果」とは別に、施設基準取扱い通知等の規定により特に報告が必要とされている事項の報告があるからです。 根拠通知は、基本診療料が令和8年3月5日保医発0305第7号、特掲診療料が同日の保医発0305第8号。厚生局はこう説明しています。「すべての施設基準が該当するわけではありませんが、総計20種類以上の報告様式があります」 無床診療所向けの様式一覧は3-1から3-16まで。3-1が表紙にあたる「令和8年度施設基準実施状況報告書(表紙)」で、3-2が情報通信機器を用いた診療に係る報告書(別紙様式14)、3-3が在宅時医学総合管理料および施設入居時等医学総合管理料の添付書類(別紙様式20)と続きます。 ここで手を止めて全部読む必要はありません。厚生局が県別に「報告確認ツール」を配っています。富山、石川、岐阜、静岡、愛知、三重それぞれのエクセルがあり、自院の届出状況を入れると提出すべき様式だけが残る。エクセルが使えない環境向けにPDFの「8月1日報告チェックリスト」も用意されています。 実績ゼロなら不要、という但し書きも見落としがちです。3-2の情報通信機器を用いた診療は、令和7年8月1日から令和8年7月31日までの間に診療実績がなければ報告不要。3-4の訪問看護遠隔診療補助料は令和8年6月1日以降の実績で判定します。 郵送で出すときの実務ルールも書いておきます。複数ページある報告様式は片面印刷、A4版。令和7年度から様式が変更されているものが多数あるため、必ず今年度の様式を使ってください。去年のファイルを使い回すと差し戻されます。

電子申請に今年から乗ろうとすると、たぶん間に合わない

一部の報告様式は、専用の「定例報告マクロツール」を使って電子申請で提出できます。様式一覧の「マクロツール対象」欄に〇が付いているものが対象です。 使うには保険医療機関等電子申請・届出等システムの専用ユーザーIDと初期パスワードが要ります。厚生局はその取得手続きについて「通常2週間から1ヶ月程度の時間を要します」と書いている。申請が混み合えばさらに延びるとも。 今日が8月1日で、締切が8月31日。逆算すると、今日申し込んでギリギリという計算になります。 だから今年は郵送で出し切って、IDの取得だけ8月中に済ませる。来年の8月を電子で迎える。うちがクライアントに勧めているのはこの順番です。急いで電子に乗り換えようとして締切を落とすのが、いちばん損をします。

適時調査で本当に指摘されているのは、壁のほうだった

定例報告は自己申告です。実地で見られるのは適時調査のとき。令和6年度の主な指摘事項を読むと、書類の不備より先に出てくるのが掲示の話です。 「届出された施設基準について、名称が誤っている例、一部掲示されていない例又は届出をしていない事項を掲示している例が見受けられたので届出のとおりに全て掲示すること」。 届出のとおりに、全て。3つとも別々の失敗として書かれているのが生々しい。名称が微妙に古い、1つ抜けている、届出していないものを掲げている。どれもうっかりで起きます。 もうひとつが変更届出の漏れです。届出事項に変更が生じた場合は速やかに厚生局長へ届け出ること、として挙げられているのは、診療時間、保険医の異動、保険医の勤務形態、診療科目の変更の4つ。 ややこしいのは、平成30年度改定以降、従事者等に変更があっても施設基準の区分の変更がなく引き続き要件を満たしている場合には変更の届出が不要になった点です。「もう出さなくていい」と覚えてしまった院長が多い。 例外があります。神経学的検査、精密触覚機能検査、画像診断管理加算1・2・3・4、麻酔管理料(Ⅰ)、歯科矯正診断料、顎口腔機能診断料などは、届け出ている医師に変更があったらその都度届出が必要です。CT撮影やMRI撮影のように、届出にあたり使用する機器を届け出ているものも同様に扱われます。 ついでに、受理番号の扱いも変わっています。令和7年8月1日算定開始にかかる届出以降、受理番号の郵送による通知は行われません。厚生局のホームページで受理状況を確認する運用です。「通知が来ないから受理されていない」と勘違いして問い合わせる、という無駄が現場で起きています。

うちが8月にクライアントと回している5手順

ここまでを診療所の事務に落とすと、こうなります。
  1. 8月12日の経過措置を先に潰す。厚生局の経過措置一覧と自院の届出を突き合わせ、該当があればその日までに再届出。該当なしと確認できたら、その事実をメモに残す
  2. 自院の届出一覧を、厚生局のホームページから作り直す。受理番号の郵送通知はもうない。院内のファイルではなく受理状況の公表データを正とする
  3. 別紙2-3の7項目を実績値で点検する。生殖補助医療管理料からニコチン依存症管理料まで、記憶ではなく数字で確認。満たせないものが出たら別紙2-2と辞退届をセットで用意
  4. 県の報告確認ツールで、3-1から3-16のうち出す様式だけを残す。実績ゼロなら不要という但し書きを一つずつ確認。今年度の様式を、片面印刷のA4で
  5. 院内掲示と届出内容を1行ずつ突き合わせる。名称の誤り、抜け、届出していないものの掲示。この3種類を探す。ここは事務長ひとりでやらず、必ず二人でやる
所要時間は、届出数が10前後の無床診療所で半日といったところ。手順4で県のツールを使うかどうかで、体感が倍くらい変わります。 案内のはがきは令和5年度からの運用で、8月初旬に発送されています。まだ届いていなくても慌てなくていい。逆に、はがきが来てから動き出すと8月31日はかなり厳しくなります。 今日が基準日です。届出一覧を開くところまでは、今日中に。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・様式は改正される場合があるため、実際の届出・報告にあたっては必ず管轄の地方厚生(支)局の最新情報をご確認ください。


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