サービス管理責任者 みなし配置 ─ 減算回避3点【2026年6月】

「先週、サビ管が突然辞めました」── 月曜の朝、障害福祉のE理事長から、LINE が一通だけ届いた。 返信を打ちかけて、指が止まった。聞かなくても、次に何が起きるかが分かったからだ。 配置基準欠如、減算、最悪は事業所の閉鎖。そこまで一気に景色が降りてくる、あの感じ。 サービス管理責任者(以下、サビ管)が抜けた瞬間から、報酬の時計は静かに動き出す。1年以内に次のサビ管を据えられなければ、報酬は所定単位数の 70% へ落ちる。さらに 5ヶ月続けば 50%。月商の半分が消える計算だ。 うちのクライアントでも、ここ2年で「サビ管欠如からの減算」を踏みかけた事業所が3社あった。全部、突然の退職か体調不良が引き金だ。準備していなかったわけではない。準備の中身が、現場の動きに追いついていなかっただけだ。 今日は、Relief として「サビ管が抜けたあと、減算を回避する具体的な動き方」を3点に絞ってまとめる。

1. みなし配置は「いきなり1年」では始まらない

サビ管欠如時のみなし配置を「とりあえず1年使えばいい」と思っている経営者は、けっこう多い。だがこの制度、入口の要件で つまずく事業所 が一定数いる。 大阪府の特例ページを読むと、みなし配置の基本ルールは次のとおり整理されている。
  • サビ管が「急死・事故・急病」または「予見不可能な急な退職」で欠如した場合に発動できる
  • みなし配置できる期間は、サビ管が欠如した日から 1年以内
  • 代わりに置く人は「実務経験要件を満たしている者」であること
  • 配置誓約書の提出など、指定権者への手続きが必要
ここで詰まる事業所が多いのは、3つめの「実務経験要件を満たしている者」のくだりだ。サビ管に近い職種で長年働いてきたベテラン職員でも、相談支援業務や直接支援業務の年数がカウント基準に届いていないケースがある。実務経験表を埋めようとして、職員本人ですら過去の勤務先で何年・どの業務に従事していたか即答できない。書類を集めるだけで2週間溶ける、というのは決して大げさではない。 予見不可能な退職、というのも字面より厳しい。年度末で予定どおり退職するケースは「予見不可能」に当たらない。半年前から退職の意思表示があった人材については、みなし配置で穴埋めできないと考えておいた方が安全だ。 つまり、サビ管がいなくなってから慌てて誰かを充てる、という発想ではもう間に合わない。サビ管欠如のシナリオを想定して、実務経験表を全職員分・常時アップデートしておく必要がある。これがうちのクライアントに最初に頼む宿題だ。

2. 基礎研修修了者を「2人目以降」にどう仕込むか

ここからが本題。みなし配置の出口戦略として、基礎研修修了者の活用は外せない。 大阪府の特例では、次の3要件をすべて満たす基礎研修修了者は、みなし配置を 最長2年まで延長 できる、と整理されている。
  1. 実務経験要件(相談支援業務または直接支援業務 3〜8年)を満たしていること
  2. サビ管が欠如した時点で、すでに基礎研修修了者となっていること
  3. サビ管欠如の以前から、引き続き当該事業所に配置されていること
注目したいのは2つめだ。「欠如した時点で、すでに基礎研修を修了している」という条件。これは、サビ管が辞めてから慌てて基礎研修に申し込んでも間に合わない、という意味になる。 基礎研修の受講は地域によって枠が限られる。厚生労働省 障害福祉課の研修制度資料を読むと、各都道府県が年に数回のクールで開催し、定員も決まっていることが分かる。年度の途中で「来月の研修にねじ込みたい」と言っても、たいていは断られる。 Relief の判断としては、こうだ。事業所が サビ管1名で回っているなら、必ず2人目候補に基礎研修を先に受けさせておく。たとえ今は実務経験年数が足りていなくても、満了時点で2人目の駒として動かせるよう、研修だけは前倒しで埋めておく。これが現実的な保険になる。 ついでに付け加える。基礎研修だけ受けさせて満足する事業所も多いが、それでは半分しか効かない。実践研修まで通すのが本筋だ。OJT期間も令和5年6月の告示改正で 最短6ヶ月 に短縮できるようになった(基礎研修受講開始時に実務経験要件を満たしていることが条件)。条件がそろう職員は、計画的に進めれば1年以内で実践研修まで終えられる。

3. みなし配置の「カウントダウン」は2ヶ月後から始まっている

これは正直、現場でいちばん誤解されているところだ。 「みなし配置の1年が切れたら減算が始まる」と思っている経営者がいる。違う。減算は 欠如した翌々月から 始まる。みなし配置の届出を済ませている事業所だけが、この減算を回避できているにすぎない。 大阪府の特例ページの整理によれば、減算の段階は次のとおり。
  • 欠如発生 → 翌々月から所定単位数の 70% へ減算
  • 70%減算が開始した月から5月以上連続で基準を満たせない場合 → 5月目以降は 50% へ減算
つまり、サビ管が辞めてから動き出す準備時間は、実質1〜2ヶ月しかない。みなし配置の届出を済ませてようやく時計が止まる、という構造だ。 ここで効くのが、事業所単位での「欠如時アクション・チェックリスト」を作っておくことだ。うちが障害福祉のクライアントに渡しているフォーマットは、おおむね次のような並びになる。
  • サビ管が抜けた当日:指定権者の窓口に連絡(電話 → 書類フォーマット入手)
  • 翌週中:実務経験要件を満たす候補者を選定、配置誓約書の準備
  • 2週間以内:配置誓約書とみなし配置の届出を指定権者に提出
  • 翌月:欠如した月の請求は通常どおり、翌々月の請求に向けて減算回避の届出を確実に
  • 1ヶ月以内:基礎研修修了者を2人目候補として整理、満了時点での後継戦略を文書化
E理事長の事業所では、実はこのチェックリストが半年前から共有フォルダに置いてあった。だから LINE 一通の翌週には配置誓約書まで出し終わっていた。減算ゼロで、4ヶ月後には新しいサビ管が稼働している。 逆に、チェックリストを持たない事業所は、最初の電話で「うちの管轄じゃない」と回されるところでつまずく。指定権者の窓口、相手の部署名、提出書類のファイル名まで、平時に1枚にまとめておくこと。これが、減算を踏まないための最後の差になる。

サビ管欠如は「いつ起きるか」ではなく「いつでも起きる」

E理事長のケースは、運がよかった例ではない。半年前に Relief と組んで「欠如アクション・チェックリスト」を整備していたから、機械的に動けただけだ。準備があるかないかで、月商の3割が変わる世界に、サビ管欠如のリスクは静かに横たわっている。 サビ管欠如は、いつ起きるかを当てるゲームではない。いつでも起きる前提で、平時から手を打っておくゲームだ。今いるサビ管が来月辞めると言ってきたら、何をどの順で動かすか。その手順書を、来週までに一枚にまとめておく価値はある。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。指定権者ごとに運用が異なる場合があります。実際の手続きにあたっては所轄の都道府県・市町村にご確認ください。


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