訪問看護 処遇改善加算 算定率67.6% 判断3点【2026】

67.6%。今年6月時点の、訪問看護における処遇改善加算の算定率です。

裏を返すと、3割強の訪問看護ステーションが、今年度から取れるようになった加算をまだ取っていない。同じタイミングで対象に加わった居宅介護支援は76.0%、介護予防支援は76.9%です。訪問看護だけが、ひとまわり低い位置にいます。

この数字は、賃上げの原資をそのまま置いてきているという意味でもあります。


67.6%という数字は、どこから出てきたのか

出所は、令和8年8月28日(金)に開かれた社会保障審議会 介護給付費分科会(第263回)です。この日の資料1が介護人材確保に向けた処遇改善等で、今年度の改定で拡充した処遇改善加算の取得状況が報告されました。

介護ニュースJointの報道には、こう出ています。

今年度から新しく対象に加えられた居宅介護支援の算定率は、今年6月時点で76.0%だった。

● 介護予防支援=76.9%● 訪問看護=67.6%● 訪問リハビリテーション=59.8%

6月時点、つまり制度が動き出してすぐの数字です。まだ動いている途中、という読み方もできる。ただ、居宅介護支援との差が8ポイント以上ある事実は、そのまま残ります。

同時に対象へ加わった3つを並べると、訪問看護は真ん中にいます。介護予防支援76.9%、訪問看護67.6%、訪問リハビリテーション59.8%。どれも同じ月の数字で、同じ制度の話です。それでも17ポイント開いた。事業の中身の違いというより、届出まで走りきれた事業所の割合の違いだと私は見ています。

「取れる事業所」と「取れない事業所」に割れている

同じ分科会では、最上位の加算Ⅰロの算定率も報告されています。こちらの報道によると、対象サービス全体で39.3%。内訳はこうです。

例えば特養が69.4%、老健が59.0%と、介護保険施設は相対的に高い。一方、訪問介護は34.3%、通所介護は35.3%、地域密着型通所介護は19.6%、認知症グループホームは26.4%にとどまる

特養と地域密着型通所で、3倍以上の開き。要件の難易度が事業所ごとに変わるわけではありません。差がついているのは、書類を作りきれる人が中にいるかどうかです。それだけ。

訪問看護ステーションは、この構図でいうと苦しい側にいます。管理者が訪問に出ていて、事務は非常勤が週2日。うちが関わっている東海圏のステーションでも、この形はかなり多い。書類仕事は「訪問が終わってから」に積み上がり、積み上がったまま月が変わります。

加算というと要件の話ばかりが語られます。実際に現場で効いているのは、要件を読んで、規程に落として、様式に転記して、期限内に出す。この一連を誰が持つかという体制の問題です。特養が69.4%で地域密着型通所が19.6%という差は、そこを映しています。

四日市のEさんが止まっていた理由

先月、三重県四日市市のステーションを訪ねたときのことです。管理者のEさんは、机の上に加算の手引きを開いたまま、こう言いました。

「読めば分かるんです。ただ、賃金規程を触るところで止まってます」

知らなかったわけではない。やる気がないわけでもない。就業規則と賃金規程に手を入れる人が社内にいない、というそれだけの理由で半年が過ぎていました。血の気が引いたのは、そのステーションの常勤看護師が7人いると聞いたときです。7人分の賃上げ原資が、書類1本のところで止まっていた。

正直に書くと、この構図は珍しくありません。ここまで読んでくれた経営者の方なら想像がつくと思いますが、加算を取れない理由の大半は制度が難しいからではなく、要件を読む時間も規程を直す時間も月末には残っていないという、ただそれだけの運用上の事情です。時間がない。それが答えでした。

9月に決めるべき3つのこと

未算定のまま年度後半に入ると、判断できる材料が減ります。今月のうちに、次の3つを決めてください。

  1. 自分が67.6%の側か、3割強の側かを確定させる。直近の請求明細を1枚だけ出して、処遇改善加算の行があるかを見ます。所要5分。ここが曖昧なまま会議をしている法人が、本当に多いのです
  2. 未算定なら、理由を3つに切り分ける。制度を把握していない、賃金規程が整っていない、届出書類を作る人がいない。この3つは、打ち手がまったく違います。1つ目なら読めば済む話で、3つ目は読んでも1ミリも進みません
  3. 誰がいつまでに動くかを、名前と日付で置く。「事務長が見ておきます」は決定ではない。9月30日までに賃金規程のドラフト、10月中に届出。ここまで書いて、はじめて予定になります

3つ目でつまずくなら、外に出すことも選択肢になります。うちの判断としては、賃金規程と届出書類は外注に向いている業務です。毎月発生する仕事ではないので、内製で人を抱えるより速い。

来年度、この差はもっと開く

8月28日の分科会では、委員からこういう声が出ています。

この日の会合では委員から、人材の確保・定着が課題となっているケアマネジャーや看護師らの一層の賃上げを訴える声があがった。

令和9年度改定に向けて、処遇改善の議論はまだ動きます。ここで拡充が入ったとき、すでに算定している事業所は上乗せを受け取り、未算定の事業所は据え置きのままです。差が開くのは、来年の4月ではありません。今の6月と、今年度末の数字の間で開きます。

67.6%の内側にいるか、外側にいるか。今月、決められますか。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。算定率は今年6月時点の速報値であり、今後の集計で変わります。最新の情報は各省庁の公式サイトでご確認ください。


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