保育所のICT補助 概算要求で最大130万円【2026】
「うち、登降園の打刻だけ入れて、そこで止まってるんですよね」
先週、愛知県内の認可保育所の事務室。A園長は充電ケーブルを巻きながら、棚の上を指した。ホコリをかぶったタブレットが2台。導入は3年前だという。
その数日前に、こども家庭庁が令和9年度の概算要求を公開していた。保育のICTに、新しい枠が2本立っている。A園長の園にとっては、あの2台の話だ。
2兆7,221億円の中身に、ICTの新規枠が2本
こども家庭庁は2026年9月4日、令和9年度保育関係予算概算要求の概要を公表した。保育関係の要求額は2兆7,221億円。前年度予算額は2兆5,747億円だ。
園長が見るべきはこの総額ではない。内訳の「保育対策総合支援事業費補助金」が、463億円から700億円へ動いている。そのうち保育人材確保対策は307億円から482億円。
この人材確保対策の事業一覧に、【新規】と付いた項目が2つ並んでいる。「保育所等におけるICT化推進等事業」と「保育ICT人材育成・業務改善支援事業」。片方はモノに、もう片方は人に付く。
1施設あたり最大130万円。効いてくるのは「1回限り」
ICT化推進等事業の補助基準額は、導入する機能数で決まる。
- 1機能:1施設当たり20万円(併せて端末購入等を行う場合は70万円)
- 2機能:40万円(同90万円)
- 3機能:60万円(同110万円)
- 4機能:80万円(同130万円)
翻訳機等の購入は別建てで、1施設当たり15万円。外国籍の保護者が増えている園はここも読む価値がある。
問題は資料に添えられた一行。「1施設1回限り対象」と明記されている。
打刻機能だけを1機能で取った園は、残り3機能ぶんの枠を原則もう使えない。冒頭のA園長の園が、まさにこれ。ただし例外が2つ書かれている。新たにキャッシュレス決済の機能を導入する場合と、保育業務施設管理プラットフォームを導入済みの施設が新たに登降園管理等の機能を導入する場合は、過去に本補助金を活用していても対象になる。
ここで順番の話になる。1機能ずつ小刻みに取るより、必要な機能をまとめて入れたほうが枠を使い切れる建て付けになっている。登降園管理を先に単体で入れてしまった園が、あとから連絡帳や指導計画・記録を足そうとして「もう対象外です」と言われる。この流れが、うちが相談を受ける保育所でいちばん多い。
自園が何機能ぶん使ったのか。これを知らないまま来年度の相談に入る園が、毎年出る。
補助割合を動かすのは、園ではなく自治体
補助割合は国1/2、市区町村1/4、事業者1/4。園の持ち出しは4分の1だ。
ここに嵩上げがある。国2/3、市区町村1/12、事業者1/4。事業者の1/4は変わらず、軽くなるのは市区町村側の負担。
そして嵩上げの条件は、園側では1ミリも動かせない。自治体・ICT関連事業者・保育事業者などで構成される協議会を自治体が設置し、かつシステム導入費の補助以外の取組を実施していること。うちの市がその協議会を作るかどうかで、来年度の話の通りやすさが変わる。
Reliefの判断では、ここは待つ場面ではない。園長会でも市の保育担当課でもいい。「令和9年度、ICT推進の協議会を作る予定はありますか」と一言投げておく。答えが「検討中」でも、園の側が関心を持っていると伝わるだけで違う。
自治体の担当者にとって、協議会を立ち上げる手間に見合う声が現場から上がっているかどうかは判断材料になる。制度が動くのを黙って見ている園と、担当課に一度でも顔を出した園とでは、募集要項が出たときの情報の届く速さが変わる。愛知県内でも、市によって温度差はかなりある。
もう1本の新規事業は「入れて終わり」を潰しにきている
保育ICT人材育成・業務改善支援事業。補助基準額は都道府県または指定都市で1自治体あたり8,130千円、それ以外の自治体で4,065千円。
中身は2つ。研修と実践を繰り返す往還型の研修と、ICTを活用した保育業務改善の専門家によるプッシュ型の巡回支援だ。
棚の上でホコリをかぶった端末2台。あれは製品が悪かったわけじゃない。園内で使い方を決めきる人がいなかった、それだけの話だ。国がわざわざ人材育成に別枠を立ててきたということは、同じ光景が全国の園にあるということでもある。
今週、園でやれること
- 過去に本補助金を使ったかを確認する。「使った」ではなく「何機能ぶん使ったか」まで
- まだ入れていない機能を3つ書き出す(連絡帳、指導計画・記録、キャッシュレス決済など)
- 市区町村の保育担当課に、令和9年度のICT関連補助の見込みを1回聞く
釘を1本刺しておく。ここまでの金額はすべて概算要求時点のもので、資料自体に「今後の予算編成過程において変更があり得る」と注記がある。年末の予算編成で削られる目はある。
それでも準備の中身は変わらない。自園が何機能まで使ったのか、使っていない機能はどれか。今日の午後、15分あれば書き出せる。A園長の園は、その15分で3機能ぶん残っていることが分かった。
出典・参考情報
- 保育関係予算(こども家庭庁、確認日:2026年9月8日)
- 令和9年度予算 概算要求の概要(保育関係)(こども家庭庁成育局保育政策課・成育基盤企画課、確認日:2026年9月8日)
- こども家庭庁 新着情報(2026年9月4日「令和9年度保育関係予算概算要求の概要について掲載しました」、確認日:2026年9月8日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。概算要求段階の金額・要件は、今後の予算編成過程で変更される場合があります。実際の申請にあたっては、各自治体が公表する募集要項を必ずご確認ください。
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