看護師 求人倍率2.00倍 事務0.29倍 採用3点【2026】

2.00倍と0.29倍。

令和8年8月の全国の有効求人倍率を職業別に見ると、看護師は2.00倍、一般事務は0.29倍でした。看護師は求職者1人を求人2件で取り合い、事務は求人1件に3人以上が並んでいます。

同じ院内の採用なのに、市場はまったく逆を向いています。それなのに、看護師と受付の募集を同じ出し方で済ませているクリニックが少なくありません。

先週、名古屋市内の無床クリニックで、診療が終わった後の院長室でB院長と話しました。机の上に紹介会社の請求書が2枚。1枚は看護師、もう1枚は受付スタッフの分でした。「どっちも急いでいたから、同じ会社に頼んだんです」。看護師の分は払う意味があったと思います。受付の分は、払わなくても埋まった可能性が高い。数字がそう言っています。


2.00倍と0.29倍。同じ求人票で戦っていないか

出どころは、厚生労働省が10月2日に公表した「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」です。ハローワークに出された求人と、ハローワークで仕事を探している人の数を毎月まとめた統計で、職業別の内訳は参考統計表に載っています。

有効求人倍率(求職者1人あたりに何件の求人があるか)を、パートを含む常用で並べるとこうなります。

  • 保健師・助産師・看護師:有効求人99,234人に対し、有効求職49,591人。2.00倍
  • 一般事務従事者:有効求人119,803人に対し、有効求職409,453人。0.29倍
  • 職業全体:1.06倍

前年同月と比べると、看護師は0.02ポイント上がり、一般事務は0.03ポイント下がりました。差は縮むどころか、少しずつ開いています。

地元の数字も見ておきます。愛知労働局が同じ日に出した「最近の雇用情勢 令和8年8月分」では、愛知県全体の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月から0.03ポイント下がっています。ところが職業別の表を開くと、景色が変わります。

  • 愛知の保健師・助産師・看護師:2.90倍(有効求人5,680人、有効求職1,956人)
  • 愛知の一般事務従事者:0.30倍(有効求人6,148人、有効求職20,278人)

愛知の看護師は全国より採りにくい。2.90倍は、全国の2.00倍を大きく上回ります。一方で事務の倍率は全国とほぼ同じです。

なお、受付や医療事務の求人がこの「一般事務従事者」にどこまで含まれるかは、統計表からは読み取れません。ただ、私がクリニックの事務採用を手伝ってきた実感とは、ずれていない数字です。

では、この差を採用のやり方にどう落とすのか。私は3つに分けて考えています。


1点目 看護師は「出して待つ」では埋まらない

愛知のハローワークで8月に看護師等の紹介が行われたのは197件、就職に至ったのは80件でした。同じ月の有効求人は5,680人分あります。5,680人分の求人に対して、ハローワーク経由で決まった就職が80件です。

求人票を出したまま3か月待って、応募ゼロ。看護師の募集でこれが起きても、院長の求人票が悪いとは限りません。市場の側に人がいないんです。

だから看護師の採用には、お金と時間を寄せていい。うちがクライアントに勧めている順番は次のとおりです。

  1. いま働いている看護師に辞められない手を先に打つ。私の経験では、1人の退職を止めるほうが1人採るより安くつきます
  2. 職員の知人紹介と、ブランクのある有資格者の復職ルートを用意する
  3. それでも足りない枠にだけ、紹介会社を使う

紹介手数料は高い。それでも2.90倍の市場では、払う価値がある場面が残ります。問題は、その同じ感覚で事務の採用にもお金を出してしまうことです。


2点目 事務に紹介手数料を払う理由は薄い

全国の一般事務は、有効求人119,803人に対して有効求職409,453人。求人1人分に約3.4人の求職者がいる計算です(統計表の値から私が割った試算値)。愛知でも、求人6,148人に求職20,278人が並んでいます。

この市場で紹介会社に頼むのは、混んでいる店にわざわざ予約代行を頼むようなものです。B院長の受付の求人も、ハローワークと自院のホームページに出しておけば、応募はおそらく来ていました。

私はB院長に、次の事務の募集では紹介会社を外して、浮いた分を看護師の定着に回しましょうと伝えました。院長は請求書をもう一度見て、しばらく黙っていました。

ただし、事務の採用にも落とし穴はあります。応募が来ないことではなく、来すぎることのほうです。


3点目 応募が多い職種ほど、院長の時間が消える

愛知の一般事務では、8月に2,692件の紹介があり、就職は415件でした。単純に割ると、紹介から就職に至ったのは約15%です(試算値)。看護師等は197件の紹介で80件、約41%でした(同じく試算値)。

事務は、1人を決めるまでに会う人数が多くなりやすい。応募書類を読み、面接の日程を合わせ、断りの連絡を入れる。この作業を診療の合間に院長が自分でやっているクリニックは、名古屋でも珍しくありません。

院長の1時間は、外来の1時間です。事務の採用で本当に詰まるのは「人が来ない」ことではなく、選ぶ作業に院長の時間が吸われることだと私は見ています。

手は2つあります。

  • 選ぶ基準を先に紙に書く。レセプト経験の有無、勤務できる曜日、パソコン入力の速さ。3項目に絞れば、書類選考は院長でなくても回せます
  • 応募の受付から日程調整までを院長から外す。事務長がいれば事務長に、いなければ外部に。院長が出るのは最終面接の30分だけにする

うちでも、クリニックの事務採用で応募の受付と日程調整だけを預かることがあります。院長に残すのは、最後に「この人と働けるか」を決める判断だけです。


今週、院長室で決めておく3つ

  1. 看護師と事務の募集経路を分ける。紹介会社の予算は看護師に寄せる
  2. 事務の求人は、ハローワークと自院ホームページを先に出す
  3. 事務の書類選考の基準を3項目で書き、応募対応を院長以外に渡す

2.00倍と0.29倍は、どちらも同じ統計表の同じページに並んでいる数字です。片方だけ見て採用費を決めると、払わなくていいところに払い、払うべきところで渋ることになります。B院長の机にあった2枚の請求書は、まさにそれでした。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。倍率は常用(パートを含む)の原数値で、愛知県全体の1.18倍だけが季節調整値。試算値は統計表の値から筆者が計算しました。


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