求職者等セクハラ 義務化 実習生も対象 施設の3点【2026】

10月1日、木曜の夕方。名古屋市内の病院の事務室で、うちのクライアントの総務課長Dさんが、11月に来る看護実習生の受け入れ名簿を眺めていました。

名簿には実習生の名前と、指導につく看護師の名前が並んでいる。

この日から、その実習生たちは法律上の「求職者等」になりました。病院には、彼らをセクハラから守る仕組みを用意する義務がかかっています。

カスタマーハラスメントと並んで、求職者等へのセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になったのは、厚生労働省のハラスメント対策ページのとおり令和8年10月1日の施行です。うちのクライアントでも、カスハラのマニュアルは春から作ってきたのに、実習生の側は手つかずで10月を迎えたところがありました。


応募者だけでは済まない。実習生はどこまで入るのか

厚労省が9月30日に改訂した解釈事項は、対象をこう定めています。

「求職者等」とは、当該事業主に雇用されようとし、その意思を表示している「求職者」に加え、当該事業主が行う労働者の採用に資する活動に参加する者や、教育実習、看護実習等の実習を受ける者のことである。

面接に来た応募者だけではありません。インターンシップに来た学生も、看護学校から来る実習生も入ります。

介護実習と保育実習は、指針にも解釈事項にも名前が出てきません。指針は「教育実習、看護実習等」、解釈事項は「教育実習、看護実習その他の実習」と書いているだけ。私は介護施設や保育園のクライアントに「その他の実習に入る前提で準備してください」と伝えています。読み違えていたとしても、失うのは研修1回分の手間で済むからです。

対象外も明記されています。授業の一環としての社会科見学や、企業を招いた講演会のように専ら教育を目的とするものの参加者は、採用に資する活動の参加者には含まれません。

見落としやすいのは場面の広さ。実習後の懇親の場でも、実習の延長と考えられるなら対象になる。指針は、SNSなどオンライン上のやり取りも含むと書いています。指導役の看護師が実習生と個人LINEを交換し、夜にメッセージを送る。私がいちばん気にしているのはこの形です。

では、受け入れ側は何を用意すればいいのか。うちがクライアントに勧めている順番があります。


受け入れ前に決める3つ。最初は面談のルール

1. 面談と連絡のルールを文書にする

解釈事項は、面談などのルールの例として3つを挙げています。面談時間と場所の指定。複数人で対応するといった実施体制。求職者等とのやり取りに使うSNSの種類の指定です。

病院や施設に置き換えると、こうなります。

  • 実習生との面談は勤務時間内に、院内の決めた部屋で行う
  • 振り返り面談は指導者と主任の2人で入る
  • 連絡は学校経由か施設の代表アドレスに限り、個人LINEの交換は禁止する

紙1枚で足ります。ただ、決めただけでは終わりません。職員には研修や講習で周知し、求職者等にはホームページやパンフレットで留意事項を知らせることが必要だと、解釈事項は書いています。

2. 相談窓口を、実習生から見える場所に出す

窓口の連絡先は、ホームページやパンフレットを通じて求職者等に示すことが必要です。外部の機関に相談対応を委託する形も認められています。

人選も考えどころ。解釈事項は、求職者等が採用担当の人事への相談をためらうことも想定し、人事担当者以外を窓口に指定することも考えられると書いています。実習の場合、指導者と窓口が同じ部署だと、実習生はまず相談してきません。

もう1つ、採用サイトのマイページに載せて済ませている施設は要注意です。解釈事項では、求職者等に該当する全ての者が閲覧できるページなら措置を講じたことになる、という扱い。ここが盲点です。実習生はマイページを持っていません。うちでは、実習オリエンテーションの配布資料に窓口の名前と連絡先を1行入れてもらっています。

3. 学校との連絡ルートを協定書に足す

実習生は、受け入れ先の窓口だけでなく、在籍する学校の窓口にも相談できます。解釈事項は、事業主がこうした情報提供元と連携し適切に対応することを「望ましい」としています。

義務ではない。それでも、学校経由で初めて事案を知る展開がいちばん後手に回ります。実習の協定書に、相談があったときの連絡先を双方1名ずつ書き足しておけば足ります。2行です。


採用を止めている施設も、面接1回で義務がかかる

「うちは今年は採用していないから」という声を、この1週間、クライアントから何度か聞きました。

解釈事項の答えははっきりしています。採用活動を開始し、求職者等に対する説明会や面接を実施することとなれば、その時点で全ての措置義務を履行する必要がある。欠員が出て急に面接を入れた日に、準備ゼロでは間に合いません。

院長や理事長本人の言動も気にしてください。解釈事項は、事業主や役員による性的な言動にも必要に応じて適切に対応するよう努めることが「望ましい」としています。小さなクリニックでは面接官が院長1人、ということも珍しくない。私は面談ルールの対象者に、院長と理事長の名前も入れるよう勧めています。

それでも事案が起きたら、どこに相談すればいいのか。


労働局に聞いても、白黒はつけてくれない

実習生や応募者は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にも相談できます。愛知なら、愛知労働局の雇用環境・均等部指導課(052-857-0312)が窓口です。

覚えておきたいのは、労働局は個々の事案がハラスメントに当たるかどうかの判断をしない、と解釈事項に書かれている点です。施設側が「これはセクハラだったのか」と問い合わせても、判定はもらえない。判断の材料になるのは、施設が事前に決めたルールと、窓口に残った記録だけです。

Dさんは名簿の余白に、窓口担当として医事課長の名前を書き足していました。11月の実習初日まで、あと4週間ほど。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細は各発行元の最新情報をご確認ください。


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