保育士 処遇改善手当 3月支給の正体は人勧分【2026】
3月に振り込まれる保育士の「処遇改善手当」を、年度末のボーナスだと思っている園は少なくありません。あれはボーナスではない。実は、4月にさかのぼって上がった給料の1年分の差額です。
ここを取り違えると、職員への説明も払い方もずれていき、最後は市町村から追加払いの指導が来る。人事院勧告から3月の振込までのお金の流れと、10月のうちに園で決めておくことを、順に書いていきます。
3月の手当は、4月から上がるはずだった給料の後払いだ
保育所の公定価格は、人件費・事業費・管理費を積み上げて決まります。そのうち人件費は、国家公務員の給与に準じて算定されている。こども家庭庁の分科会資料に、そのまま書いてあります(こども家庭庁「令和7年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定」令和7年12月23日)。
つまり、公務員の給料が人事院勧告で上がれば、保育士の人件費単価も後から追いかけて上がる。問題は、その「後から」の長さです。
人事院勧告は夏に出て、公務員の給与は4月にさかのぼって改定されます。保育の公定価格を同じように引き上げるには、補正予算の成立が要る。令和7年分は補正予算の所要額844億円で、令和7年4月まで遡って公定価格を引き上げました(同資料)。12月に新しい単価が示され、国から市町村への交付は年度末になります。
子どものための教育・保育給付交付金の変更交付決定が市町村に行うのは例年3月になるところ、3月中に管内の施設・事業所に改定分が支弁されるよう変更交付申請と並行して施設・事業所への支弁の手続きを進めること。(こども家庭庁 事務連絡 令和7年12月16日)
4月から3月まで、1年分の差額が年度末にまとめて届く。だから「3月の手当」に見えるわけです。
しかもこれは、たまたまの臨時措置ではありません。人件費単価の改定率は、令和4年が+2.1%、令和5年が+5.2%、令和6年が+10.7%、令和7年が+5.3%(同資料)。毎年のように起きている、ほぼ定例の動きです。
定例なのに、毎年同じところでつまずく園がある。
「給料が5.3%上がる」と職員に言ってはいけない
国は昨年12月の事務連絡で、わざわざこう書きました。
改定分によって、単純に賃金が改定率分(+5.3%等)増えるなどの誤解の声も聞かれるため、改定分の趣旨や内容等について職員向けに説明をすること。(同事務連絡)
5.3%は公定価格に積まれた人件費単価の改定率です。一人ひとりの給料の上がり幅ではない。ここを説明しないまま3月に一時金を出すと、「5.3%と聞いていたのに少ない」という声が必ず出ます。
使い道にも縛りがあります。改定分は全額を人件費(法定福利費等の事業主負担を含む)に充てる。基本はベースアップによる差額分を一時金等で払う形で、対象者や支払額が恣意的に偏ってはいけない(こども家庭庁 分科会資料)。処遇改善等加算の区分2と区分3を算定している園では、全額充当がそのまま加算認定の要件になっています。
実際、令和6年度補正予算の改定分(+10.7%)では、全額を人件費に充てていないとする施設・事業所が約1%ありました。国は市町村に、充てていない場合は追加で支払うよう指導することを求めています(同資料)。
名古屋市内の認可保育所で、C事務長が昨年度分の支給明細を見せてくれたことがあります。金額そのものは合っていた。ところが改定分は冬の賞与に足し込まれていて、明細の項目は「賞与」の一行だけ。どこまでが改定分なのか、C事務長本人も説明に詰まっていました。
事務連絡は、翌年度に払う場合でも今年度の追加的支払分であることを「賃金の項目上明確に管理すること」と求めています。払ったかどうかより先に、払ったと示せるかどうか。私が明細で真っ先に見るのはそこです。
令和8年の人勧は8月7日に出た。保育の改定率は、まだ決まっていない
今年の人事院勧告は8月7日に出ています(人事院「令和8年人事院勧告」)。中身はこうです(人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」)。
- 民間給与との較差 15,056円(3.51%)を解消するため、月例給を令和8年4月実施で改定
- 行政職俸給表(一)の平均改定率は全体で3.3%、初任給は一律9,500円引上げ
- ボーナスは年間4.65月分から4.70月分へ(+0.05月分)。6月期は支給済みのため、引上げは12月期の支給月数に乗る
この3.3%を、そのまま保育の改定率だと受け取らないでください。公定価格の人件費改定率は、補正予算の積算で決まります。昨年は12月16日の事務連絡で取扱いが示されました。今年度分の改定率は、10月4日時点でこども家庭庁から公表されていません。
民間の予測値はもう出回っていますが、私は職員説明には使いません。外れたときに、その数字が園の約束になってしまうから。
確定していることもあります。令和8年度当初の公定価格では、令和7年補正予算で措置した+5.3%の改善が引き続き確保されています(こども家庭庁「令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項」)。昨年分はこの4月から単価に入っていて、事務連絡もこの分は「ベースアップが可能」と書いている。昨年の改定分を一時金で払ったきり、今年度の給与表に反映していない園は、ここが先です。
もう一つ。改定分の算出機能を持つ請求システム(保育施設業務管理プラットフォーム)が令和8年度から運用開始とされ(分科会資料)、その活用状況を踏まえて、これまでの「0.9(調整率)を掛ける」簡便計算は廃止する予定とされています(事務連絡)。去年と同じ電卓の叩き方が、今年も通るとは限りません。
3月に慌てない園が、10月のうちに決めている3つのこと
改定率が出る前でも、決められることは多い。私が10月のうちに園長と詰めておきたいのは、次の3つです。
- 払い方と対象者の基準を文書にする。ベースアップの差額を一時金で払う基本形でいくのか。対象は誰か。国の要請は3月中の支払いで、遅くとも夏季の賞与(夏季の賞与がない場合は7月中)まで。支払いが3月以降になる見込みの園は、支払予定時期を職員に必ず周知することになっています。
- 給与明細に「改定分」の項目を立てる。処遇改善等加算の実績報告では、支払賃金の総額から公定価格の人件費改定部分を除いて計算します。賞与に混ぜてしまうと、この引き算が組めません。
- 立替えの資金を見ておく。昨年の処遇改善実態調査では、市町村から管内の施設・事業所への改定分の支弁が「3月までに全額」達成できたのは23.8%でした(事務連絡)。3月中に職員へ払うなら、入金より先に払う前提で資金繰りを組むことになります。
3つとも、改定率の数字が出てからでは間に合わない作業です。12月に単価が出て、3月に払う。その間は、実質3か月しかありません。
最後に、昨年度分と一昨年度分の払い残しの確認を。事務連絡によれば令和8年度は市町村を通じて調査を行い、職員への支払いが遅い施設・事業所への個別のフォローアップを検討しているとのこと。調査票が届いてから明細を掘り返すのは、正直しんどい作業で
出典・参考情報
- 令和7年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定(第13回子ども・子育て支援等分科会 資料1-1)(こども家庭庁、確認日:2026年10月04日)
- 令和7年人事院勧告に伴う国家公務員給与改定等を踏まえた令和7年度補正予算における公定価格の取扱いについて(令和7年12月16日 事務連絡・横須賀市掲載)(こども家庭庁成育局保育政策課、確認日:2026年10月04日)
- 令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項(こども家庭庁、確認日:2026年10月04日)
- 本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和8年8月)(人事院、確認日:2026年10月04日)
- 令和8年人事院勧告(人事院、確認日:2026年10月04日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。今年度の公定価格の人件費改定率は、補正予算の成立後にこども家庭庁から示されます。
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