介護の夜間人員配置 緩和は3か月試行が条件【2026】
102.3分。夜間に見守り機器を入れた特別養護老人ホームで、介護職員1人が1日に「直接介護」と「巡回・移動」へ使う時間が、これだけ減りました。
老健では68.6分、認知症対応型共同生活介護では59.9分。厚生労働省が8月28日の審議会に出した実証結果です(第263回介護給付費分科会 資料2 p.69)。介護職員1人1日を600分と置き、5日間の自記式タイムスタディで測った値。
この数字を持って、国は夜間の人員配置基準をもう一段ゆるめる検討に入りました。ただし、ゆるんだ基準に乗るには届出の前に3か月かかります。そこを知らないまま改定を待つと、施行日には間に合わない。
8月28日、厚労省は「夜間の見守り機器」を論点として置いた
第263回の社会保障審議会介護給付費分科会。資料2の最終ページに、こう書かれています。
特に夜間の見守り機器の活用による職員の業務時間の削減等が見られたことを踏まえ、夜間の見守り機器を活用した場合の方策についてどのようなものが考えられるか。
行政文書の「どのような方策が考えられるか」は、事実上の予告です。同じ日の議論を報じた介護ニュースJointも、委員から一層の緩和に理解を示す声が上がった一方、既存職員の負担増を懸念する慎重論も出たと伝えています。
念のため書いておくと、緩和はまだ決まっていません。答申も告示も出ていない段階です。それでも私は、介護施設の理事長には今から動いてほしい。理由は「3か月」という要件にあります。
現行ルールは「2人以上」が「1.6人以上」になる
令和6年度改定で、介護老人保健施設(ユニット型を除く)と短期入所療養介護の夜間配置基準はすでに一度ゆるんでいます。
1日あたりの配置人員数を改定前2人以上としているところ、要件を満たす場合は 1.6人以上とする。ただし、配置人員数は常時1人以上配置することとする。
要件は3つ。全利用者への見守りセンサー導入、夜勤職員全員のインカム等ICT使用、そして安全体制の確保です。安全体制のほうは委員会設置、休憩時間の確保、緊急参集要員の確保、機器の定期チェック、職員教育、夜間訪室が必要な利用者への個別対応と、6項目が並びます。
問題は、その先に置かれた一文でした。
見守り機器やICT導入後、上記の要件を少なくとも3か月以上試行し、現場職員の意見が適切に反映できるよう、夜勤職員をはじめ実際にケア等を行う多職種の職員が参画する委員会(具体的要件①)において、安全体制やケアの質の確保、職員の負担軽減が図られていることを確認した上で届け出るものとする。
機器を買った翌月に届出、ができない。3か月まわして、委員会で確認して、それから届出。年度初めに合わせて機器を入れても、算定開始は夏までずれ込む計算になります。
グループホームは「0.9人の上乗せ」で加算が取れる
認知症対応型共同生活介護の夜間支援体制加算は、単位数そのものは変わっていません。共同生活住居が1つなら1日あたり50単位、2つ以上なら1日あたり25単位。
変わったのは人の数え方です。
夜勤を行う介護従業者が最低基準を0.9人以上上回っている場合にも算定を可能とすることとする。
常勤換算1人の加配が必要だったところ、0.9人でよくなった。ただしこちらも見守り機器の導入割合10%と委員会設置が条件です。0.1人分の緩和を小さいと見るか、シフトが1枚組めると見るか。夜勤のシフト表を実際に引いている管理者なら、後者だと思います。
加算を取らない事業所の37.6%が挙げた理由
ここまで読んで「うちは無理だ」と感じた方へ。同じ資料に、生産性向上推進体制加算を算定していない1,642事業所への調査が載っています。
算定しない理由の1位は「見守り機器を新規導入する費用および維持管理費用が負担である」で37.6%。2位が「加算の単位数と比較して取組の負担が大きい」で37.3%。ほぼ横並びでした。
一方で、今後の算定について「今後検討予定」が28.4%、「検討している」が26.4%。合わせて半数超が、まだ土俵の上にいます。
普及率の実測はもっと露骨で、介護老人福祉施設は約90%、介護老人保健施設は約85%がテクノロジーを何かしら導入済み。訪問系と通所系だけが取り残されている、と資料は書いています。施設系にいるなら、機器がないのではなく、機器の使い方と書類が揃っていないだけ、という施設のほうが多い。
来年度改定に乗るなら、起点は年明けではない
今回の論点は、厚労省が「来年度の介護報酬改定に向けて」進めている議論の一部です。施行が例年どおり年度初めなら、逆算はこうなります。
3か月の試行が要件として残るとして、届出は3月中。試行の開始は12月。機器の選定と設置、職員への教育、委員会の立ち上げに2か月みるなら、動き出しは10月。つまり来月です。
これは試算であって、告示で確定した日程ではありません。緩和が入らない可能性もある。それでも、試行の3か月と委員会の記録は、現行の1.6人ルールでもグループホームの0.9人ルールでも同じように要る。無駄になりません。
うちが介護施設の届出支援に入るとき、最初にお願いするのは機器のカタログではなく、委員会の議事録フォーマットです。安全体制の6項目を議題に落とし込んで、3か月分の記録が残る形にしておく。届出書類は最後に組み立てれば間に合います。
夜勤の職員配置を1人減らすかどうかの判断は、経営者にとって重い。それでも、102.3分という数字が国の資料に載った以上、次の改定はこの方向に動きます。動いてから慌てるか、12月から回し始めるか。
出典・参考情報
- 【資料2】介護現場の生産性向上等の推進(厚生労働省・第263回社会保障審議会介護給付費分科会、確認日:2026年9月7日)
- 第263回社会保障審議会介護給付費分科会 資料(厚生労働省、2026年8月28日開催、確認日:2026年9月7日)
- 介護分野における生産性向上ポータルサイト(厚生労働省、確認日:2026年9月7日)
- 介護施設の夜間の人員配置、さらなる基準緩和を俎上に(介護ニュースJoint、2026年8月31日、確認日:2026年9月7日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度内容は今後の答申・告示で変更される可能性があります。
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