有料老人ホーム 届出 未届568件 愛知は全国2位【2026】
「住宅を貸しているだけだから、有料老人ホームの届出はいらない」。介護の業界で根強いこの常識は、法律の上では通りません。
老人福祉法は、建物の契約の形ではなく、入居者に何を提供しているかで有料老人ホームかどうかを決めているからです。食事の提供か、介護か。家事や健康管理でも同じで、どれか一つを行えば届出の対象になります。
厚生労働省が9月25日に公表した調査では、その届出をしていない有料老人ホームが全国で568件ありました。愛知県は80件。全国で2番目に多い県です。
未届568件のうち、1年で届出に至ったのは40件だけ
今回出たのは「令和7年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第17回)」の結果です。数字は2025年6月30日時点のもの。届出済みのホームは17,883件で、前年の17,246件から増えました。
未届は568件、未届率は3.1%。前年の584件、3.3%からわずかに下がっています(調査結果PDF)。2016年6月末の時点では1,207件、未届率9.3%でした。長い目で見れば、減ってきたのは確かです。
ただ、中身を開くと手放しでは喜べません。
前年に未届だった584件のうち、1年後までに届出を済ませたのは40件。477件は未届のまま残りました。67件は実態調査の結果、有料老人ホームに該当しなかったものなどで、リストから外れています。そのうえ、この1年で新たに見つかった未届が121件ある。
届出が進んだから減ったというより、該当しないと整理された分と新しく見つかった分が入れ替わっている。私はこの表をそう読みました。
地元の数字も見ておきます。愛知県の届出済みは1,287件、未届は80件です。内訳は、県が所管する地域で53件、名古屋市で20件。都道府県別の表で愛知より未届が多いのは、89件の北海道だけでした。
「賃貸だから」「介護保険の指定があるから」は免除の理由にならない
この夏、名古屋市内の訪問先で、訪問介護の事業所と高齢者向けの賃貸住宅を同じ建物で運営している法人のB代表に聞かれました。「うちは部屋を貸しているだけで、介護は訪問介護の契約でやっている。有料老人ホームじゃないですよね」。
よく受ける質問です。私は即答できませんでした。答えは建物ではなく、そこで何を提供しているかで決まるからです。
老人福祉法第29条第1項は、老人を入居させて介護や食事の提供などを行う施設を有料老人ホームと定めています。しかも条文には、他に委託して行う場合や将来行うと約束する場合も含む、とはっきり書いてある。
愛知県の案内はもっと平易です。(1)食事の提供から(4)健康管理までの4つのうち、「いずれかのサービスを提供する施設」が有料老人ホームだとしています。
介護保険の手続きとは別の届出
もう一つ多いのが「介護保険の指定を受けているから、行政には把握されている」という思い込みです。愛知県は案内の中で「介護保険法の申請・届出を行うものでも老人福祉法の届出は必要です」と明記しています。
例外はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住:高齢者住まい法に基づいて登録された賃貸住宅)です。この登録を受けていれば、届出は免除されます。
開設時に出して終わりでもない
届出は一度きりではありません。第29条第2項で、届け出た事項が変わったら変更の日から1か月以内に届け出る。第3項で、廃止や休止はその1か月前までに届け出る。
愛知県の案内では、料金の変更や施設長の交代、入居定員の変更も届出が要る例として挙がっています。休止する場合は最長半年まで、という県の運用もある。開設から数年たって、届出の控えと実態がずれたままのホームは少なくないはずです。
罰則は30万円以下の罰金、法人も対象になる
届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合は、老人福祉法第40条で30万円以下の罰金です。第41条には両罰規定(違反した本人だけでなく法人も罰する規定)があり、従業者が業務として違反すれば法人にも罰金刑が科されます。担当者個人の話では終わりません。
厚労省は今回の結果を受けて、9月25日付で都道府県などに通知を出しました。未届のホームは速やかに実態を把握し、該当すれば早急に届出を指導すること。市区町村と連携して、届出制度の周知を強めること。
通知は前払金にも踏み込んでいます。保全措置を講じていない事業者には重点的に指導し、検査の拒否や改善命令への違反があれば「罰則の適用も視野に入れ」て厳正に対応するよう求めました。
前払金とは、入居時にまとめて受け取る家賃などのこと。第29条第9項は、受け取るなら算定の基礎を書面で示し、返還に備えた保全措置を講じるよう義務づけています。前払金を受け取っているホーム2,384件のうち、保全措置がないのは25件で、割合にして1.0%でした。
件数だけ見れば小さい。けれど入居者の側から見れば、事業が続かなくなったときに前払いした残りが戻ってこない、という話です。
登録制が始まる前に、今月確かめておく3つの書類
制度はもう一段動きます。6月25日に公布された社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)で老人福祉法が改正され、中重度の要介護者などを入居対象とするホームには登録制が導入されます。厚労省は施行に向けて準備を進めている段階です。
届出すら出ていないホームが、次の登録の審査で慌てずに済むとは私には思えません。
B代表とは、その場で机に書類を並べて確かめました。見たのは3つ。
- 入居契約書とサービスの委託契約書。4つのサービスのどれかを、自社か委託先が入居者に提供していないか。将来提供すると約束している文言も対象になります
- 届出の控え。今の料金表や施設長の名前と一致しているか。ずれていれば、変更の日から1か月以内の変更届が必要です
- 前払金の保全措置の契約書。入居時にまとめて受け取っているなら、銀行の保証や信託などの契約が手元にあるか
B代表の建物では、入居者のほとんどに法人の配食を出していました。それだけで食事の提供に当たります。
愛知県内なら、名古屋市と中核市4市(豊橋市・岡崎市・一宮市・豊田市)以外の市町村に開設するホームは愛知県知事への届出です。名古屋市や中核市にある物件は、各市の担当課に確認してください。
あなたの法人の届出の控え、最後に開いたのはいつでしたか。
出典・参考情報
- 「令和7年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第17回)」結果(厚生労働省、確認日:2026年09月30日)
- 令和7年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第17回)結果 PDF(厚生労働省老健局高齢者支援課、確認日:2026年09月30日)
- 老人福祉法(第29条・第40条・第41条)(e-Gov法令検索、確認日:2026年09月30日)
- 有料老人ホームについて(愛知県、確認日:2026年09月30日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・統計の内容は改定される場合がありますので、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
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