住宅型有老ホームの登録制が衆院委で可決──今週確認すべき3点

もしあなたが住宅型有料老人ホームを運営しているなら、今週中に「登録制」の概要だけ押さえておいた方がいい。 2026年5月22日、衆議院厚生労働委員会が介護保険法等の改正案を原案通り可決した。 施行前に省令で登録基準が固まるが、「知っていた施設」と「知らなかった施設」の差はもうすでに生まれている。

今回の改正案、4つの柱を1分で整理する

今回の衆院厚労委可決は、正式には「社会福祉法等の一部を改正する法律案」の審議結果だ。介護保険法・老人福祉法・社会福祉法をはじめとする複数の法律を束ねた改正案で、5月22日に衆院厚労委で原案通り可決・附帯決議27項目を採択した。近く衆議院本会議を通過し、参議院審議に移る見込みだ。 この法案で変わる主なポイントは4つある。
  • 住宅型有料老人ホームへの「登録制」導入:中重度の要介護者を受け入れる施設に事前の登録制を義務化する(「囲い込み」対策が主目的)
  • 「特定地域サービス」の新設:中山間・人口減少地域(省令で定める「特定地域」)において、ホームヘルプ・デイサービス等の人員配置基準を柔軟化できる特例類型を設ける
  • ケアマネジメントの新類型創設:住宅型有老ホームの入居者専用の「登録施設介護支援」を創設。現行の居宅介護支援とは別建てになる方向
  • ケアマネ更新制の廃止:更新制をなくし、継続研修の義務化と知事の受講命令制度を導入
4つのどれが自分の施設に直撃するか。 1分で判断できた人はすでに準備のスタートラインに立っている。まだ整理がついていない人は、次のセクションを読んでほしい。

住宅型有老ホームの「登録制」── 何を、いつまでに登録するのか

「登録制」という言葉だけが先行しているが、具体的な登録基準(人員要件・設備要件・書類の様式など)は、今後公布される厚生労働省令によって定められる。現時点で確定していることと、まだ不確かなことを分けて理解しておく必要がある。 確定していること
  • 法律案の対象は「中重度の要介護者を受け入れる住宅型有料老人ホーム」
  • 「囲い込み」── 施設が同グループの介護事業者に入居者の利用を誘導する行為 ── の抑制が主な目的
  • 附帯決議において「囲い込み対策の実効性担保」が厚労省に求められた
まだ確定していないこと
  • 登録の具体的な要件(書類の様式・人員基準の詳細)
  • 施行日(省令公布後に決まる)
  • 未登録施設への措置の内容
「まだ決まっていないのになぜ今週動くのか」と思う人もいるだろう。正直、私も最初はそう思っていた。 だが法律が成立してから省令が公布・施行されるまでの猶予期間は、過去の介護関連改正でも数か月から1年程度が多い。その猶予期間で体制を整えた施設が、施行日にスムーズに動ける。 衆院厚労委を通過した改正案は、近く衆院本会議を通過する見込みだ。今国会(第221回常会)内での成立可能性は高い。省令の公布はその後だが、方向性はすでに固まっている。いつ動き出すかではなく、どこから動き出すかを今考えることに意味がある。

「特定地域サービス」── 地方の施設は素直に喜んでいいのか

地方施設の経営者から最も関心を集めているのが「特定地域サービス」の創設だ。 対象は、都道府県が「特定地域」として指定した人口減少・中山間地域の事業者。この地域の事業者は、ホームヘルプサービス・デイサービス・福祉系ショートステイ・ケアマネジメントなどについて、現行の人員配置基準(管理者・専門職の常勤・専従要件、夜勤要件など)の一部を緩和した特例として提供できるようになる。指定次第では全国大半の市町村が対象になり得るという見解が、審議の中で示されている。 一見すると、人手不足に悩む地方施設の救済策に見える。喜ぶのはまだ早い。 参考人質疑では強い異論も出た。参考人として招かれた有識者からは「社会保険の原則を破壊する」「暮らしている地域によって受けるサービスが違ってくるというのは、全国標準の保険としてあり得ない」といった批判が相次いだ。 人手不足が深刻な地方施設にとって、基準の弾力化は運営の余地を広げる。一方で、基準を守りながら事業を続けてきた施設にとっては、同じ「特定地域サービス」の看板を掲げた事業者との差別化が難しくなるリスクもある。利用者・家族への説明責任も変わってくる。 特定地域の指定がいつ・どのように公示されるかを、都道府県の担当窓口に問い合わせる準備だけは今しておくべきだ。

ケアマネ新類型と利用者負担 ── 有老ホームに直撃する可能性

住宅型有老ホームの経営者が最も目を離せないのが、ケアマネジメントの新類型「登録施設介護支援」の創設だ。 現行の制度では、住宅型有老ホームの入居者のケアマネジメントは居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担い、利用者負担はない(保険給付で賄われる)。改正後の新類型では「利用者負担を求める方針」が審議の中で示されている。 ただし、具体的な負担額・負担割合は省令・告示で定められる段階にある。金額はまだ確定していない。 一方、日本介護支援専門員協会は2026年5月21日付で声明を発表し、財務省がこの新類型の報酬を現行の居宅介護支援より低く設定するよう要求していることに反論している。「現行の同一建物減算はすでに適正化されており、これ以上の引き下げは事業所の休廃止を加速させる」というのが協会の主張だ。令和9年度介護報酬改定をめぐる攻防の中で、この新類型の報酬水準はまだ決着していない。 有老ホームを運営する事業者は、「入居者が新類型のケアマネを利用する場合、自己負担が生じるかもしれない」という前提で、今から入居者・家族への説明の言語化を始めるべきだ。施行後に慌てて説明しようとすると、それ自体がトラブルの火種になる。

この週末に手帳へ書き込む3つのこと

法案の全体像を把握した上で、今週末にできることをまとめる。うちでもよくやっているが、「知った日」に書き留めておくかどうかで、半年後の動き出しが変わる。
  1. 自施設が「登録制」の対象かどうかを確認する
    中重度の要介護者を受け入れる住宅型有料老人ホームが対象とされている。自施設の入居者の要介護度分布と受け入れ方針を、担当者と確認しておく。対象でないなら一旦は安心して良いが、将来の方針変更時に備えて概要は頭に入れておく。
  2. 特定地域の指定動向を都道府県窓口に問い合わせる準備をする
    「特定地域サービス」の対象地域は都道府県が指定する。法案成立後、都道府県が指定プロセスを開始するはずだ。今のうちから都道府県の担当課(地域医療・介護の担当部署)へのコンタクト手順を確認しておく。問い合わせのタイミングは法案成立後でよいが、窓口だけは今確認できる。
  3. 入居者・家族への説明ポイントを社内で共有する
    「登録制の話が出ている」「ケアマネの制度が変わるかもしれない」という入居者側の不安に備え、現時点でわかっていること・わかっていないことを整理した内部ドキュメントを作り始める。「まだ決まっていません」では回答として弱い。「こういう法改正が進んでいる、施設はこのように対応していく方針だ」という言語化が、長期的な信頼につながる。
法案はまだ参議院の審議を控えている。今国会(第221回常会)内での成立が有力視されており、成立後に省令が出て施行日が決まる。施設側の準備期間は、法案の成立時点から実質的にカウントが始まる。 27項目の附帯決議が採択されたという事実は、国会が政府に「具体的な実効性担保」を強く求めた証拠でもある。省令案が出た段階では、かなりの速度で施設への周知が始まるはずだ。今週末、その日に備えるための一歩を踏んでおくかどうか。 それだけの話だ。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細・省令の内容は今後変更になる可能性があります。最新情報は必ず厚生労働省・都道府県の公式情報でご確認ください。


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