協力医療機関の経過措置終了まであと半年【2026】

67.9%。義務化された要件をすべて満たす協力医療機関を定めている、特別養護老人ホームの割合です。

老健は83.3%、介護医療院は84.9%、養護老人ホームは60.4%。前年度はそれぞれ56.6%、70.0%、72.4%、45.7%で、1年で確かに伸びています(第264回介護給付費分科会 資料2 p.5)。

ただ、経過措置が切れるのは令和9年3月31日。今日から数えて半年と少し。特養の残り3割は、その日までに体制を作り切らないといけない。


9月3日、厚労省は「今後の在り方」を論点に置いた

第264回の社会保障審議会介護給付費分科会。資料2の最終ページに、こう書かれています。

令和6年度介護報酬改定において、高齢者施設等に一定の要件を満たす協力医療機関の設定を義務付け、令和9年3月31日までの経過措置を設けている。協力医療機関の確保状況や制度の意義を踏まえ、今後の在り方についてどのように考えるか。

「今後の在り方」と置かれた以上、次の改定でこの要件は何かしら動きます。緩む方向か、加算や指導で締める方向か。まだ分かりません。同じページには令和8年度改定検証調査の速報値を「本年秋頃を目処に」示す予定ともあります。

ただ、議論がどう転んでも経過措置の期限そのものは動いていない。令和6年度改定で決まった3年間の猶予は、今のところ令和9年3月31日で終わります。

義務なのか努力義務なのか、まずそこを間違えない

意外と混ざっているのがここです。義務なのは特養・地域密着型特養・老健・介護医療院の4類型で、経過措置3年間が付いているのもこの4つ。一方、特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設・認知症対応型共同生活介護は努力義務で、要件も①常時の相談対応と②常時の診療体制の2つ。入院受入れの③は入っていません。

義務側の要件は3つ。①急変時に医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保、②診療の求めがあった場合に診療を行う体制を常時確保、そして③です。

入所者の病状の急変が生じた場合等において、当該施設の医師又は協力医療機関その他の医療機関の医師が診療を行い、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。

③は病院に限る。ここが実務で効きます。長く付き合っている診療所が1軒あるから安心、というケースで①②は満たしても③が空いている。複数の医療機関を組み合わせて要件を満たす形でも差し支えないと明記されていますから、③だけ別の病院に依頼する、という埋め方ができます。

そしてもう一つ、見落とされがちなのが年1回の宿題です。基準のイには、1年に1回以上、急変時の対応を協力医療機関と確認したうえで、その名称等を指定権者である自治体に提出しなければならない、と書かれています。定めて終わりではなく、毎年確認して毎年出す。運営指導では提出履歴が残っているかを見られます。契約書だけあって年次の確認記録がない、という状態は義務を満たしていない扱いになり得る。

愛知県は84%。それでも安心できない一点

都道府県別も資料に載っています。特養で「全ての要件を満たした協力医療機関を定めている」割合は、愛知県84%、岐阜県83%、三重県92%、静岡県48%(令和7年8月1日時点の届出状況にもとづく自治体調査)。東海でも静岡だけ大きく低い。

うちは名古屋の会社なので、愛知の84%にはひとまずほっとしました。ただ、この数値の見方には注意がいります。同じ調査で、定めの状況を「集計していない」と答えた割合が、全ての施設種別で12.8%〜33.4%あった。愛知の特養は1%と低いものの、全国では3分の1近くが集計していない種別もある。

都道府県別の高低は「施設が体制を作れているか」だけでなく「自治体が届出を集計できているか」も混じった数字です。

「まだ検討を行っていない」が特養の24.4%、介護医療院は50.0%

私がいちばん気になったのは、この数字でした。

要件を満たす協力医療機関を定めていなかった施設に確保の進捗を聞いた結果、「まだ検討を行っていない」と答えたのが、特養で24.4%(n=123)、老健で44.0%(n=25)、介護医療院で50.0%(n=10)、養護老人ホームで28.6%(n=14)。母数は小さいものの、未確保の施設の4分の1から半分が、まだ動き出してすらいない。

特養の内訳は、「年度内には定められる見込み」25.2%、「年度内に定められるか未定」20.3%、「周辺の医療機関に協議を行うことを予定している」27.6%。動いている施設が7割強、止まっているのが4分の1です。

ただ、悲観だけの数字でもありません。厚労省は令和8年5月に、この層へヒアリングをしています。

「要件を満たす協力医療機関を定めた」と回答した事業所がほぼ半数を超える一方で、対応予定がない事業所も存在した。

半年から1年あれば、半数は決まる。逆に、半年を切ってから動き出すと間に合わない側に回ります。

断られる理由は「常時」。だから頼み方を変える

協力医療機関になることを断った医療機関に理由を聞くと、上位は「常時診療を行う体制の確保が困難」「常時相談対応を行う体制の確保が困難」。施設側の交渉の問題ではなく、医療機関側の人員の話です。夜間も含めて常時、という条件を1軒で背負うのは、地域の中小病院やクリニックにはきつい。

だから、1軒に全部を頼まない。①相談対応、②診療、③入院受入れを分けて、それぞれ引き受けられる先を探す。訪問診療で日常的に入っているクリニックに①②を、後方支援を担う地域の病院に③を、という組み方が現実的です。資料には自治体向けの対応として、在宅医療・介護連携推進事業や連携拠点を使ったマッチングも挙がっています。困ったら自治体に相談していい、という話です。

会議の負担が重い、が半数。ここは令和8年度改定で動いた

確保できた施設にも次の壁があります。協力医療機関連携加算を算定できない理由で最も多かったのが、「その他」を除くと「定期的な会議の負担が重く、会議を行えていない」。特養46.3%、老健52.9%、介護医療院40.3%と、半数近くが会議の頻度で加算を落としていました。

ここは動きました。令和8年度診療報酬改定で、カンファレンスの頻度がICTによる情報共有を行う場合は年1回、行わない場合は原則年3回へと見直されています。9月3日の資料では、介護側の協力医療機関連携加算も同じ頻度へ見直す方針が示されました。

従来は、電子的システムで入所者情報を随時確認できる体制があれば年3回以上、なければ概ね月1回以上でした。月1回のカンファレンスを病院と回すのは、正直かなり重い。それが年1回(ICTあり)まで下がるなら、諦めていた施設も取りに行けます。

会議の回数を減らす条件がICT側に寄っている点に注意がいります。電子的に情報を共有できる仕組みを先に作った施設だけが、少ない会議で加算を維持できます。

半年で何をするか

令和9年3月31日まで、残り半年ちょっと。順番はこうなります。

  1. 今の協力医療機関が①②③のどれを満たしているか、書面で確認する。契約書と覚書を出して、③が病院かどうかを見る
  2. 足りない要件だけを別の医療機関に依頼する。全部を1軒に頼み直さない
  3. 年1回の確認と自治体への提出が今年度分できているかを見る。記録がなければ作る
  4. ICTでの情報共有体制を整える。会議頻度の見直しに乗るなら前提条件になります
  5. 秋に出る改定検証調査の速報値を待つ。要件そのものが動く可能性があるので、大きな設備投資はこの数字を見てから決める

1から3は改定の中身に関係なく必要な作業です。先に済ませて損はありません。


協力医療機関の確保は、事務の仕事に見えて、実際は理事長・施設長が医療機関に頭を下げに行く仕事です。だからこそ、誰がいつ動くかを決めないまま年末を迎える施設が出てくる。

67.9%は、裏返せば3割が未達ということ。その3割に入っているかどうかは、契約書を1枚開けば10分で分かります。今日の午後にでも。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度内容は今後の答申・告示で変更される可能性があります。


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