運営指導 加算の返還リスクが残る3つの理由【2026】

標準確認文書をそろえれば運営指導は乗り切れる。介護業界のこの常識は、加算の返還には通用しません。書類の完成度と返還リスクの低さが連動しないことは、厚生労働省の指導指針に一行で書いてあります。

「確認文書以外の文書は原則求めない」という、あの有名な負担軽減ルール。あれは運営指導の一部にしか適用されていません


負担軽減ルールは「ア及びイに限る」と明記されている

まず運営指導の中身の整理から。介護保険施設等指導指針(老発0331第6号、最終改正 老発0326第6号)は、運営指導を3つに分けています。

  • ア 介護サービスの実施状況指導(個別サービスの質に関する指導)
  • イ 最低基準等運営体制指導(運営体制に関する指導。ウに関するものを除く)
  • 報酬請求指導(加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導)

加算の話は、まるごとウです。そして指針の同じページには、こう書かれています。「運営指導(上記(1)ア及びイに限る。)においては、確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めないものとする」。

ア及びイに限る。カッコ書きで、しれっと。

つまり標準確認項目・標準確認文書という枠は、サービスの質と運営体制にはかかっていて、加算の請求根拠にはかかっていない。書類一式をそろえた達成感で「これで運営指導は通る」と判断した理事長は、いちばん重い部分を確認していないことになります。私が通所介護の運営指導の準備支援に入るとき、最初に見るのがここです。


不正でなくても、返還は起きる

返還と聞くと、多くの経営者が不正請求を思い浮かべます。実際に多いのは、そこではありません。

指針は指導結果の通知についてこう定めています。「介護報酬請求について不正には当たらない軽微な誤りが認められ過誤による調整を要すると認められる場合には、後日文書によってその旨を通知する」。

不正には当たらない、軽微な誤り。それでも過誤調整を要すると判断されれば、お金は戻します。悪意の有無は関係ありません。個別機能訓練加算の計画書に利用者の同意日が入っていない、送迎減算の判断が一部の利用者で抜けている、加算の要件を満たす職員が異動した月の届出が動いていない。この種の事務のずれは、書類の見た目が整っているほど気づかれないまま積み上がります。

そして加算は毎月算定するものです。誤りが1種類でも、それが続いた月の数だけ返還額は積み上がります。金額を決めているのは誤りの重さではなく、気づかなかった期間の長さのほうです。


「疑い」が出た時点で、運営指導は監査に切り替わる

3つ目が、経営者にとっていちばん見落とされている段差です。

指針の「第6 監査への変更」には、運営指導を中止して直ちに監査へ移る事由が並んでいます。そのひとつが「介護報酬請求について、不正を行っていると認められる場合又はその疑いがあると認められる場合」。

認定ではなく、疑い。その場で切り替わります。

監査に移ったあと取消処分等に至ると、経済上の措置が動きます。介護保険法第22条第3項は、不正の行為による支払について「その支払った額につき返還させるべき額を徴収するほか、その返還させるべき額に百分の四十を乗じて得た額を徴収することができる」と定めています。指針側も、原則としてこの100分の40を併せて徴収するものとする、と受けています。

返還元本に4割の上乗せ。通所介護の一事業所の年間利益が、これだけで消えます。


通所介護が今週やる3つの確認

やることは書類を増やすことではありません。むしろ逆で、確認する対象を絞ります。

1. 算定中の加算を全部書き出す。国保連への請求データから、直近12か月に実際に算定したコードを抜き出します。管理者の記憶から書き出さない。記憶からの一覧は、たいてい算定をやめたはずの加算が残り、途中で始めた加算が抜けます。

2. 加算ごとに「毎月発生する記録」と「年に一度でよい記録」を分ける。返還の火種は、ほぼ前者に集中します。毎月の実施記録・計画書の同意日・職員の配置実績。ここだけを、算定開始月の1か月分と直近1か月分の2点で突き合わせます。全期間を見ようとすると誰も手をつけません。

3. ずれを見つけたら、運営指導を待たずに保険者へ相談する。指針は運営指導の実施通知を「原則として運営指導実施日の1月前まで」としています。通知が来てからの1か月で、加算の過去分をさかのぼる時間はありません。自主的な過誤調整と、指導の場で指摘されての過誤調整では、その後の扱いが変わります。

運営指導の頻度は「指定又は許可の有効期間内に少なくとも1回以上」。裏を返せば、指定の有効期間まるごと来ない事業所もあります。来ない期間が長いほど、返還対象の月数だけが静かに伸びていく。

書類をそろえる作業と、加算の算定根拠を検算する作業は、まったく別の仕事です。前者は事務職員でも進められます。後者は制度改定を追い続けている人間の目がいる。うちが月一回からの事務長アウトソーシングで引き受けているのは、この後者のほうです。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・通知は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず最新の原本と保険者の運用をご確認ください。


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