居宅介護支援 サテライト事業所 制度化案の4要件【2026】
28.6%。テレワークを認めている居宅介護支援事業所のうち、テレワーク中に緊急事態が起きたときの体制を整備していない事業所の割合です。
11月6日の介護給付費分科会に、厚生労働省はこの数字を載せた資料を出しました。同じ資料の数ページ先で、居宅介護支援のサテライト事業所を制度に位置付け、その体制を評価する加算をつくる案が示されています。
先月、愛知県東部の山あいにある居宅介護支援事業所で、G管理者と打ち合わせ机をはさんでいたときのことです。「峠の向こうの利用者さんのところへ、毎回車で山を越えて通っているんです。向こうに机ひとつ置けたら、だいぶ楽になるのに」。私は即答できませんでした。答えは、この資料にありました。
11月6日の案で、居宅のサテライトが制度に入る
第274回社会保障審議会介護給付費分科会の資料2に、対応案としてこう書かれています。
本体事業所によるバックアップの下、本体事業所とは別に活動拠点を設け、地域の実情の把握や関係機関との連携を行いながら継続的なケアマネジメント提供体制を確保するサテライト事業所を制度的に位置付けるとともに、その体制を評価する加算を創設してはどうか。
介護専門紙のJoint介護は、この案を「全国で設置可能とすることを提案」と報じました。加算については「中山間・人口減少地域などでは、その体制を評価する加算を新設する案も提示した」とあります。会合では委員から賛同の声があがり、不適切な事業所の設置につながらないよう要件づくりに留意を促す意見も出たそうです。
ただ、まだ案です。厚労省の進め方の案では、12月中に報酬・基準の考え方をとりまとめ、令和9年1月頃に介護報酬改定案の諮問・答申という段取りになっています。加算の単位数と施行日は、11月8日時点の資料では示されていません(要確認)。
要件は4つ。事務室を借りなくてもかまわない
資料には、設置の要件として「例えば以下」という形で4つが並んでいます。中山間地域等でも設置しやすくしつつ、不適切な設置を防ぐという両にらみの書き方です。
- ①人員基準や各種加算・減算は、本体事業所と一体的に取り扱う
- ②事務室等の区画を自ら確保することは不要とし、貸し会議室の活用やテレワークも認める
- ③クラウドシステムで本体事業所に電子保存できることを条件に、サテライトに別途書類を備え置かなくてよい
- ④緊急時等に本体事業所が適切に対応できる体制を要件とし、都道府県外への設置は認めない(中山間地域等は要件の緩和)
経営の目で見ると、効くのは②です。家賃のかかる事務所を新しく借りなくても、拠点を持てる設計だからです。G管理者の言う「机ひとつ」は、公民館の会議室でも成り立つことになります。
重いのは③と④です。利用者の記録を紙のファイルで管理している事業所は、③の前提を満たせません。④は本体がいざというときに動ける体制を求めるもので、ここが次の数字につながります。中山間地域等の緩和が具体的に何を指すかは、資料ではまだ書かれていません(要確認)。
28.6%の事業所が、緊急時の段取りを決めていない
冒頭の数字は、三菱総合研究所の令和7年度老人保健健康増進等事業の調査として資料に引用されたものです。母数はテレワークを認めている居宅介護支援事業所で、全事業所に占める割合ではありません。
- テレワークの効果として「事業所所在地では支援できない利用者を支援できる」と答えた事業所がある
- テレワークの場所として「事業所所在地とは別の都道府県の自宅やサテライトオフィス」という回答もある
- テレワーク中の緊急発生時に管理者が対応できない事業所が6.5%、体制を整備していない事業所が28.6%
要件④の「都道府県外は認めない」は、この県をまたぐ働き方にそのまま当たります。サテライトとしては認められない方向だと私は読みました。
28.6%は違います。もっと身近な話です。担当ケアマネが自宅にいる日に利用者が転倒したら、誰が電話を受け、誰が駆けつけるのか。この手順が紙一枚に落ちていない事業所が、3割近くあるわけです。サテライトを置くかどうかに関係なく、ここは今週から手を付けられます。
ケアマネの数を見ると、待っていられない理由がわかる
背景も資料にあります。論点には「ケアマネジャーの従事者数は横ばい傾向にあり、年齢構成も60歳代の割合が増加する」と書かれていました。
介護サービス施設・事業所調査の数字では、介護支援専門員の従事者は平成30年の189,754人に対し、令和6年は186,165人。全体ではほぼ横ばいです。減ったのは居宅です。居宅介護支援に絞ると、120,002人から113,381人へ、6年で6,621人減っています。
自治体への調査(令和5年度老健事業)では、居宅介護支援事業所と地域包括支援センターのケアマネについて「やや不足」が53.1%、「大きく不足」が18.8%でした。人口3万人未満の自治体に限ると、「大きく不足」は22.7%まで上がります。
すでに中山間地域向けの仕組みとして特別地域加算がありますが、居宅介護支援で算定している事業所は1,697。請求事業所35,634のうち4.8%にとどまります(令和7年11月審査分)。山あいの利用者を誰が受け持つのか。その問いへの答えとして出てきたのが、本体のバックアップ付きで拠点を増やすサテライトの案だと私は読んでいます。
加算の額が出る前に、管理者が決めておく3つ
単位数が公表されてから動くと、届出の準備が間に合わない事業所が出ます。Reliefの判断では3つです。
1. 記録を本体のクラウドに置けるか
要件③は、クラウドで本体事業所に電子保存できることが前提でした。アセスメントやモニタリングの記録をいまも紙で綴じている事業所は、まずその量を数えてください。加算の額を待つと遅れます。
2. 緊急時の連絡と駆けつけの手順を文書にする
要件④の「本体事業所が適切に対応できる体制」を、どう証明するかはまだ決まっていません(要確認)。それでも手順書は無駄になりません。書くのは3点。連絡を受ける人と駆けつける人、そして管理者に上げる基準です。どんな要件になっても、この紙はそのまま使えます。28.6%の側にいる事業所なら、ここが最初の一手です。
3. 管理者要件の案と合わせて配置を組む
10月19日の第271回分科会では、居宅介護支援事業所の管理者に主任ケアマネジャーであることを求めない案が出ました。代わりの要件は「ケアマネジャーであって、5年の実務経験等を有する者」です。現行の主任要件には、一定の条件付きで令和9年3月31日までの猶予があります。サテライトに誰を出し、本体に誰を残すかは、この管理者要件と一緒に決めないと人が足りなくなります。管理者要件の案の読み方はこちらの記事にまとめました。
11月7日、G管理者には資料のスライド番号だけを送りました。返ってきたのは「まず紙のファイルを数えます」という一行です。加算の額はまだ誰にもわかりません。わかっているのは、峠の向こうの利用者がいまも待っているということだけです。
出典・参考情報
- 第274回社会保障審議会介護給付費分科会 資料(厚生労働省、確認日:2026年11月8日)
- 第274回 資料2(居宅介護支援ほか 改定の方向性)(厚生労働省老健局、確認日:2026年11月8日)
- 第271回 介護給付費分科会 資料(居宅介護支援 管理者要件ほか)(厚生労働省老健局、確認日:2026年11月8日)
- 令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)(厚生労働省、確認日:2026年11月8日)
- 居宅介護支援、サテライト事業所を制度化 全国で設置可能に 厚労省案|来年度改定(Joint介護、確認日:2026年11月8日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度・数値は公表元の最新情報をご確認ください。
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