介護 求人 応募が来ない 効果があった経路3つ【2026】

9.6%。介護の仕事に就いた人のうち、民間の求人情報サイト経由で入職した人の割合だ。

同じ調査で、友人・知人からの紹介は33.8%。媒体3つ分を軽く超えている。

求人媒体を増やしても応募が増えないのは、募集の出し方が下手だからではない。人が流れてくる川が、そもそもそこではないからだ。

数字は公益財団法人 介護労働安定センターの「令和7年度 介護労働実態調査」による(結果報告 PDF/労働者票 n=20,675)。

入職経路の1位は、求人媒体ではない

労働者票の「現在の職場を知ったきっかけ」を上から並べると、こうなる。

  • 友人・知人からの紹介:33.8%
  • ハローワーク:19.4%
  • 民間の求人情報サイト:9.6%
  • 折込チラシ・新聞雑誌広告:4.8%
  • 民間の職業紹介:3.9%
  • 法人のホームページ:2.2%

紹介とハローワークで、半分を超える。有料の媒体は全部足しても2割に届かない。

「昔の話だろう、若い人は違う」と思われるかもしれない。私も最初はそう思った。だから勤続1年未満だけを抜き出した数字(n=1,602)を見た。友人・知人29.3%、求人情報サイト21.3%、ハローワーク19.9%。

たしかに求人情報サイトは9.6%から21.3%へ跳ね上がる。それでも1位は紹介のままだ。

ここで多くの法人が、ひとつ手前の問いを飛ばしている。

実施率は高いのに、効果が出ていない採用活動がある

同じ調査には、事業所側が「何をやったか」と「効果があったか」を並べた表がある(事業所票 n=8,899)。実施率と、実施した中で効果があったと答えた割合を、そのまま置く。

  • 職員に友人・知人の紹介を依頼:実施66.0% / 効果47.3%
  • ハローワーク・福祉人材センターに相談:実施64.8% / 効果41.8%
  • 有料職業紹介所の利用:実施37.9% / 効果53.4%
  • 事業所のホームページで情報発信:実施36.8% / 効果24.4%
  • 民間の有料求人情報サイトへの掲載:実施36.3% / 効果44.8%
  • SNSで情報発信:実施16.3% / 効果27.6%

目が止まったのは、事業所ホームページだ。3社に1社以上がやっていて、効果があったのは4社に1社。実施率と効果の差が、この表でいちばん開いている。

逆に有料職業紹介所は、実施37.9%に対して効果53.4%。使った側の実感としては、いちばん効いている。手数料が重いのは百も承知だが、「効かないから減らす」ではなく「効くから高い」という順番で数字が並んでいる。ここを混同すると、削る場所を間違える。

名古屋市内の特養で、採用担当の方と資料を突き合わせたことがある。求人媒体を3つ契約していて、うち1つは2年前から自動更新のままだった。応募数を月別に出してもらったら、その1つは11か月でゼロ。契約書を見るまで、誰も気づいていなかった。

媒体を増やす判断は、増やした後に誰も検証しない。だから増え続ける。

入所型の42.0%が「人数・質ともに確保できていない」

採用した従業員をどう評価しているか、という設問がある。「人数・質ともに確保できていない」が30.6%、「質には満足しているが人数は確保できていない」が27.6%。合わせて6割近くが、人数の面で足りていない。

サービス系型別で見ると、施設系(入所型)が42.0%、居住系が38.6%。入所型の負けが、はっきり出る。

定着側も同じ形をしている。「定着率が低く困っている」は全体18.7%に対し、施設系(入所型)27.7%、居住系23.7%。入所型は、採用も定着も他より重い。

だから入所型の法人ほど媒体に金を積みたくなる。気持ちは分かる。ただ、入ってこないのと出ていくのは、同じ蛇口の話ではない。

ちなみに全体の採用率は14.6%(2年ぶりの上昇、上昇幅0.3ポイント)、離職率は12.4%で横ばい。従業員の不足感は65.8%で前年度から0.6ポイント上がった。訪問介護員に限れば82.9%。業界全体としては、じわりと悪化している。

この中で、求職者は何を見て決めているのか。

求職者が選んだ理由の1位は、賃金ではなかった

「現在の法人に就職した理由」の上位はこうだ。

  • 通勤が便利だから:51.8%
  • 職場の人間関係がよさそうだから:35.1%
  • 自分のやりたい介護ができると思ったから:34.2%

勤続1年未満に絞ると、通勤52.1%、人間関係41.7%、やりたい介護40.3%、そして「時間外労働が少ない」が30.5%で顔を出す。

通勤が1位、というのは身も蓋もない。ただこれは、募集の設計に直接効く。商圏が半径何キロなのかを決めずに全国配信の媒体に出すと、届く相手のほとんどが最初の条件で落ちる。

人間関係が2位に来るのも大きい。前職の介護の仕事を辞めた理由の1位が「職場の人間関係に問題があったため」27.3%だから、求職者は前の職場で痛い目に遭った項目を、次の職場選びの基準にしている。

賃金はどこへ行ったのか。事業所側が「採用に効果があった」と答えた方策の1位は「賃金水準の向上」38.4%。月給者の通常月の平均月収は254,951円で、前年度比2.4%増(同調査)。賃金が効かないわけではない。効くが、求職者が最初に見るのは通勤と人間関係だ、という順番の問題だ。

そして定着に効果があった方策の1位は、賃金ではなく「有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」57.9%だった。

では、来週から何を止めるか

数字を並べただけでは何も動かないので、うちがクライアントと最初にやる3つを書く。

1. 媒体ごとの応募数を12か月分、契約書と並べる

応募ゼロの契約が1本もない法人を、私はまだ見たことがない。掛かった費用と応募数を月次で並べるだけで、切る先が自動的に決まる。エクセル1枚、30分で終わる。まずここから金を回収する。

2. 紹介制度を「制度」にする

入職経路1位が友人・知人の紹介で、事業所側の実施率も66.0%(効果47.3%)。すでに多くの法人がやっている。ただ「声をかけてね」で終わっていることが多い。誰にいつ依頼するか、紹介した職員に何を返すか、選考のどこを短縮するかを紙に落とすかどうかで、同じ施策が別物になる。就業規則・賃金規程との整合は必要なので、そこは社労士と詰める。

3. 求人票の1行目を、通勤と人間関係に書き換える

1位が通勤51.8%、2位が人間関係35.1%なら、最初に読まれる場所にその2つを置く。「駅から徒歩◯分」「送迎あり」「◯◯町から車で15分」。人間関係のほうは抽象語では伝わらないので、シフトの決め方や、有休申請から承認までの日数など、運用が見える事実を書く。定着の1位が有休と勤務日時の変更しやすさ57.9%であることと、同じ方向を向いている。

愛知県の最低賃金は、現行1,140円が10月1日から1,195円になる予定だ(愛知労働局・令和8年8月5日答申)。賃金で殴り合うと、体力のある法人が勝つ。うちが手を入れられるのは、そこではない場所だ。

あなたの法人は、いま何本の媒体と契約していて、そのうち直近12か月で応募がゼロだったのはどれですか。

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