歯科用貴金属 9月改定 金パラ514円下げ【2026】

材料が安くなるのはいいことだ。歯科では、その常識が通りません。

仕入れ値が下がるより先に、手元の在庫と保険点数のほうが動くからです。2026年9月1日、歯科用貴金属の随時改定が入ります。

今日は、その9月1日をまたぐときに事務が止まる場所の話をします。


下がるのは金パラだけではない

中央社会保険医療協議会(中医協)の第653回総会が令和8年7月22日に開かれ、資料総-3「歯科用貴金属価格の随時改定について」で9月分の告示価格案が示されました。

対象は9項目。そのすべてが引き下げです。1g当たりの主なものを、令和8年6月の通常改定の価格と並べます。

  • 歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金12%以上JIS適合品):5,746円 → 5,232円
  • 歯科用金銀パラジウム合金ろう(金15%以上JIS適合品):8,250円 → 7,770円
  • 歯科鋳造用14カラット金合金 インレー用(JIS適合品):16,789円 → 15,871円
  • 歯科用14カラット金合金鉤用線(金58.33%以上):16,958円 → 16,040円
  • 歯科鋳造用銀合金 第1種:327円 → 296円
  • 歯科鋳造用銀合金 第2種:414円 → 383円

いわゆる金パラ(歯科鋳造用金銀パラジウム合金)の下げ幅は1g当たり514円。東京歯科保険医協会の告知では30gあたり172,380円から156,960円になると整理されています。差は15,420円。1本の冠でどうこうという額ではありませんが、月に何十グラムも動く医院なら無視できない幅です。

では、点数はどうなるのか。


点数がまだ出ていないという事実

歯科用貴金属の随時改定は、年4回の定例です。中医協資料には「歯科用貴金属価格の随時改定は、変動幅にかかわらず、平均素材価格に応じて診療報酬改定時以外に6月、9月、12月、3月に見直しを行うもの。」とあります。かつてあった「変動幅5%以上なら」という条件は、今は付いていません。

価格の計算に使う期間も決まっています。同じ資料に「※平均素材価格の算出には前回改定以降、改定2カ月前までの期間の取引価格を用いる」と明記されています。今回の金パラでいえば、令和8年4月から6月までの平均が4,432.6円、その前の令和8年1月から3月までが4,900.3円。この差が補正幅になります。

問題はここから先です。

材料価格基準が動くと、それに紐づく保険点数の通知も改正されてきました。直前の例が令和8年3月1日適用分です。令和8年1月30日付の保険局医療課事務連絡には「今般、歯科用貴金属材料の材料価格改定を行い、(中略)関連する通知を下記のとおり改正し、令和8年3月1日から適用する予定である」と書かれ、M010 充填適合冠の金パラ大臼歯 全部金属冠が1,338点から1,682点へ、といった形で点数が動いています。このときは材料価格が上がったので、点数も上がりました。

今回は逆方向です。ただし、令和8年9月適用分の具体的な点数は、本稿を書いている2026年8月17日時点でまだ公表されていません。東京歯科保険医協会も、詳細な点数は公表され次第あらためて知らせるという書き方をしています。なお先ほど挙げた3月1日の点数は、その後の令和8年6月1日の診療報酬改定で置き換わっているため、現行点数として読まないでください。

未公表のまま、9月1日は来ます。そして事務が止まる場所は、だいたい決まっています。


9月1日をまたぐときの3点

うちが歯科診療所のバックオフィスに入るとき、随時改定のたびに確認しているのは次の3つです。

1つめ。在庫の原価と、算定に使う価格は別物です。8月中に仕入れた金パラは、旧い価格で買ったものとして原価に乗ります。一方で9月1日以降の算定は、新しい材料価格基準に紐づきます。引き下げ局面では、この差が薄く効いてきます。だからといって在庫を切り詰めすぎると、今度は技工物の納期が詰まる。ここは天秤です。

2つめ。印象採得と装着が月をまたぐケースです。どちらの日で見るかは、告示と事務連絡の適用日の規定で決まります。過去の運用感覚で自院だけ先に決め打ちすると、9月の事務連絡が出た瞬間にレセプトを直すことになります。9月分の通知を待ってから運用を固める。それだけで返戻はかなり減ります。

3つめ。技工所への発注価格です。材料価格基準が下がっても、技工料が自動で下がるわけではありません。契約の話を持ち出すのは、告示が出て、下げ幅が確定してからで十分です。案の段階で交渉に入ると、根拠のない値切りに見えます。

この3点は、告示が出てから考えると間に合いません。


告示までの2週間でやることは1つ

名古屋市内の歯科医院を回っていると、随時改定の話をした瞬間に院長の視線が奥の棚に向くことがあります。棚の中身が、すぐには言えない。

やることは1つだけです。8月末時点の貴金属在庫を、品目ごとにグラム数で数えて紙に残す。ついでに、いくらで買ったかも横に書いておく。

地味です。でも9月の事務連絡が出たとき、この紙があれば判断は5分で終わります。無ければ、まず棚卸しから始めることになる。年4回の改定でそれを毎回やっていたら、事務の時間はいくらあっても足りません。

今回の下げは、次の12月の随時改定でまた振れます。実際、金パラの告示価格は令和7年12月に3,802円、令和8年3月に4,779円と上がり、6月の通常改定で5,746円まで来て、9月に5,232円へ戻す動きになっています。上がるか下がるかを当てにいく必要はありません。数えておくだけでいい。

紙は、A4一枚で足ります。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。令和8年9月適用分の告示価格は中医協資料時点の案であり、点数に関する事務連絡は本稿執筆時点で未公表です。実際の運用は厚生労働省の発出通知をご確認ください。


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