介護分の基金内示1回目 184億円と16都県ゼロ【2026】

先週の夕方、愛知県内の特別養護老人ホームの事務室。デスクの上には、ユニット増設の平面図が広げたままになっていました。A理事長はその隅を指でとんとん叩きながら、「基金、今年は回ってきますかね」と言いました。図面の日付は、もう3年前のものです。

その問いの答えが、9月18日に出ました。


276.25億円の表で、最初に目が止まったのは0.00の列だった

厚生労働省が令和8年9月18日(金)に公表した令和8年度地域医療介護総合確保基金(介護分)の内示(1回目)について。本文はたった一行です。

標記につきまして、本日、別添のとおり各都道府県あて内示をいたしましたのでお知らせします。

中身は別添のPDFにあります。別添1の内示額一覧を開くと、47都道府県の「基金規模」と「内示額(国費)」が並んでいて、合計は基金規模276.25億円、内示額(国費)184.16億円。

ただ、金額の大きい県より先に目に入ったのは、0.00と印字された行のほうでした。数えると16都県。青森、宮城、秋田、山形、福島、栃木、東京都、富山、福井、山梨、島根、山口、愛媛、高知、熊本、大分。東京都が0.00億円です。

最大は神奈川県の基金規模53.19億円・国費35.46億円。ここまで割れます。1回目の内示は、全国に薄く配るものではないということ。


別添1と別添2が、まったく同じ数字だった

今回の発表には別添が2つ付いています。別添1が「介護分」の内示額一覧、別添2が「介護施設等整備分」の内示額一覧。名前が違うので、当然ちがう表だと思って開きました。

同じでした。47行と合計行、すべての数字が一致しています。

つまり1回目の内示は、施設等整備分で構成されている。そう読むのが素直です。介護従事者の確保に使う枠の話ではなく、建てる・直す・買うための枠が先に動いた。

去年からの流れを追っている方なら、9月に出た医療分の1回目内示とは性格が逆だと気づくはずです。あちらは人の枠が主役でした。介護分は、初回から整備に振れている。

ここで「うちの県、ゼロじゃないか」と落胆する必要はありません。1回目です。回数を重ねて配分されるのが基金の通例で、初回の0.00は打ち切りを意味しません。ただし、次の回に手を挙げられる状態になっているかどうかは、まったく別の話になります。


愛知は9.93億円。この数字は事業者に配られる金ではない

東海圏を拾うと、愛知県が基金規模9.93億円・国費6.62億円。岐阜県3.90億円・2.60億円、三重県1.97億円・1.31億円、静岡県0.77億円・0.51億円。

A理事長に数字を伝えたとき、最初に返ってきたのは「で、うちはいくら申請すればいいんですか」でした。ここが、毎年いちばん多い誤解です。

内示は、国から都道府県に対して出されるもの。事業者が受け取るのは、その先にある県や市町村の補助金です。愛知県の地域医療介護総合確保基金(施設整備分)のページには、補助の建て付けがこう書かれています。

県が補助主体となる県補助事業と、市町村が補助主体となる市町村補助事業(市町村及び東三河広域連合)で補助主体が分かれております。

自分の法人がどちらのルートかで、話を持っていく先が変わる。県のページを見ているつもりで市町村の要綱を見落とす、あるいはその逆をやる。これで1年ずれた事業者を、私は何件も見てきました。


内示の前に契約すると、補助は消える

今日いちばん伝えたいのは、ここです。同じ愛知県のページに、太字でも赤字でもなく、さらっとこう書いてあります。

各補助主体の内示等の前に行った契約は補助対象外となりますので、契約時期及び手続きの方法について、事前に必ず各補助主体に確認してください。

補助対象外。減額ではありません。ゼロです。工事を急ぎたい気持ちが先に立って、内示を待たずに施工業者と契約を交わす。それだけで、その工事は基金の対象から外れる。

しかも順番はもっと手前から始まっています。

本補助金の交付を受けて事業を行う場合、予算編成の都合上、事業実施の前年度に事前協議を行う必要があります。

事前協議は、整備をやる年度ではなく前年度。しかも協議先は県ではなく、整備予定地の市町村です。今日の内示を見て「うちも来年やろう」と動き出した法人は、まず市町村の担当課へ行くことになります。図面より先に、アポイントです。

終わったあとにも宿題が残ります。

遅くとも基金事業完了日の属する年度の翌々年度6月30日までに知事(市町村等が補助主体の場合は、各市町村等の要綱に定める期日までに各市町村等の長)に報告してください。

消費税の仕入控除税額の報告です。控除額が0円でも報告対象。工事が終わって2年近く経ってから期限が来るので、担当者が代替わりしていると、そのまま忘れられます。忘れたぶんは返還の話になる。


内示が出たこの週末に、事務室でやること3つ

制度の全体像を勉強するより、手を動かすほうが早いです。

  • 整備予定地の市町村に、補助主体がどちらかを電話で確認する。県補助事業か市町村補助事業か。ここが確定しないと、以降の手順がすべてずれます
  • 構想中の工事について、業者と交わした書面を全部出す。見積書は問題ありません。問題は契約書・請書の類です。日付を確認して、内示前のものがあれば補助を当てにしない前提で組み直します
  • 県の交付要綱をダウンロードして、様式と別表だけ先に見る。愛知県の要綱は【最終改正:令和8年8月28日】。去年の様式を使い回すと差し戻されます

3つとも、外注しなくてもできます。できるんですが、市町村との事前協議は平日の日中にしか進まず、要綱は毎年のように改正され、交付申請と実績報告の様式は別表とセットで読まないと書けず、しかもそれを図面の検討や施工業者との調整と同じ時期に理事長ひとりで回すことになる、というのが整備事業のいちばん現実的な姿です。整備の本番は工事であって、書類の締切管理ではないはず。

基金まわりの動きは、報酬改定の議論とも連動して進みます。令和9年度の改定論点や、夜間人員配置の緩和のように、ハコと人員基準はいつも同じテーブルの上にあります。

A理事長の机に3年置かれたままだった図面は、来週から市町村の担当課へ持っていくことになりました。いまのところ、それだけです。それだけですが、去年とは違う。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の取扱いは自治体により運用が異なる場合があるため、最終的な判断は都道府県・市町村の担当課へご確認ください。


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