個別支援計画未作成減算 運営指導で指摘される3点【2026】

「計画、あとから日付を入れてもいいんですよね」

先週、名古屋市内で開いた運営指導の勉強会。就労継続支援B型を2事業所もつA理事長が、質疑の最後に手を挙げてそう聞きました。悪気はまったくない質問です。むしろ、真面目に運営してきた人ほどこの聞き方をします。

答えは、いいえ。日付を後から入れた瞬間、その月の基本報酬は3割減ります。翌々月まで直らなければ、半分。後追いでは埋まりません。


減算率は7割ではなく、3か月目から5割になる

個別支援計画未作成減算は、率が2段構えになっています。こども家庭庁が公表している障害福祉サービス費等の算定に関する留意事項の新旧対照表には、こう書かれています。

減算が適用される月から3月未満の月については、所定単位数の100分の70とする。

減算が適用される月から連続して3月以上の月については、所定単位数の100分の50とする。

最初の2か月が7割。3か月目からが5割。読み違えが起きるのは、この「所定単位数」の範囲です。同じ通知には、こう続きます。

当該所定単位数は、各種加算がなされる前の単位数とし、各種加算を含めた単位数の合計数について減算するものではないことに留意すること。

つまり減るのは基本報酬の側で、加算は加算として別に乗ります。「加算を含めた総額が半分になるわけではない」という意味では救いがあります。ただし基本報酬は事業所の収入の土台です。B型事業所で土台が半分になった月がどうなるかは、理事長なら電卓を叩くまでもないはずです。

対象は療養介護、生活介護、施設入所支援、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助。日中活動系から住まい系まで、ほぼ横断しています。


愛知県が実際に出した指示は「減算を行うこと」だった

制度の条文だけ読むと、まだ他人事に見えるかもしれません。私が勉強会で必ず配るのは、愛知県が公開している主な指導改善指示事項一覧です。平成31年4月から令和8年1月までに、県が実際に事業所へ出した指示が並んでいます。

そのなかに、これがあります。

個別支援計画作成前にサービスを提供している事例が見受けられたので、個別支援計画未作成減算を行うこと

「気をつけてください」ではありません。減算を行うこと、です。しかもこの一文は、生活介護のページにも、施設入所支援のページにも、児童発達支援のページにも、ほぼ同じ文言で繰り返し出てきます。それだけ拾われている、ということ。

愛知県が令和7年度に運営指導へ入った障害福祉の事業所・施設は、合計で1,062。県内の事業所数を思えば、順番が回ってくるのは「いつか」ではなく「そのうち」です。障害福祉の運営指導が原則3年に1回のサイクルへ寄せられていく流れは、8月の記事でも触れました。


指導で見られているのは、計画書そのものではない

ここが今日いちばん伝えたいところです。運営指導の担当者は、個別支援計画の「中身の良し悪し」を採点しに来るわけではありません。見ているのは、作成から交付までの一連の流れが動いた証拠です。

先ほどの新旧対照表は、減算の起点をこう定めています。

サービス管理責任者による指揮の下、個別支援計画が作成されていないこと。

指定障害福祉サービス基準又は指定障害者支援施設基準に規定する個別支援計画の作成に係る一連の業務が適切に行われていないこと。

後半の「一連の業務」。ここに全部が入っています。愛知県の指示事項一覧を読むと、その一連が具体的に何を指すのかが逆算できます。

サービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)は、個別支援計画の作成にあたっては会議を開催し、担当者等から意見を求めること。また、個別支援計画の作成にかかる会議の記録を適切に残すこと

サービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)は、計画を作成した際は利用者等に同意を取り、計画を交付すること。また、個別支援計画に同意年月日の欄を設けること

会議の記録。同意年月日の欄。交付。この3つが、計画書の中身より先に見られます。うちが支援に入った事業所でも、いちばん多い穴は「同意年月日の欄が様式にそもそも無い」でした。欄が無ければ、いつ同意を得たのか書きようがない。書きようがなければ、作成前にサービスを提供していた疑いを晴らせない。そういう連鎖です。

期限の目安は、契約から1か月

では当初の計画はいつまでに作るのか。厚生労働省の報酬改定に関するQ&Aが答えています。

当初の個別支援計画は契約締結後1ヵ月以内に作成することを基本とする。

交付のタイミングも同じQ&Aに明記されています。

個別支援計画を作成、見直し(見直しの結果、変更がない場合も含む。)した後、速やかに利用者等及び相談支援事業所に交付すべきである。

見直して変更がなかった場合も交付対象に入る、という一文を見落とすと事故ります。「変えなかったから渡していない」は通りません。なお、セルフプランで担当の相談支援事業所がない利用者については、相談支援事業所へ交付しないことをもって基準違反にはならない、とも同じQ&Aに書かれています。ここだけは例外です。

モニタリングの頻度はサービスで違う

愛知県の指示事項には、見直しの頻度も明示されています。

個別支援計画の作成後は計画の実施状況を把握し、少なくとも6月に1回以上(自立訓練、就労移行支援、自立生活援助においては3月に1回以上)モニタリングをして計画の見直しを行い、必要に応じて計画の変更をすること

原則6か月に1回。ただし自立訓練、就労移行支援、自立生活援助は3か月に1回。多機能型で複数サービスを回している事業所は、ここで周期が混ざります。混ざったまま「うちは半年ごと」で通していた事業所を、私は何件か見てきました。悪意はありません。ただ、記録は事情を汲んでくれない。


今週やることは3つしかない

制度の理解より、手を動かす方が早いです。理事長が今週のうちに事務室でやれることを3つに絞ります。

  • 様式に同意年月日の欄があるか確認する。無ければ今日追加します。既存の計画書を全部差し替える必要はありませんが、次に作る分から欄のある様式にします
  • 直近3か月の新規契約者を抜き出し、契約日と計画作成日の差を数える。1か月を超えている人がいたら、その月が減算の対象月になっていないかを確認します
  • 会議記録と交付の記録が、計画とセットで綴じられているか見る。別々のファイルに散っているなら、利用者ごとに1冊へまとめます。指導当日に探し回る時間がそのままリスクです

3つとも、外部に頼まなくてもできます。ただし、これを毎月まわし続ける体力が本部にあるかどうかは別の話です。サービス管理責任者は支援の責任者であって、書類管理の専任ではありません。実務としては、管理者かサビ管に業務が寄り、その人が辞めた瞬間に記録が崩れる。運営指導で慌てる法人は、ほぼこの形をしています。

令和9年度の報酬改定へ向けた議論も動き始めています。改定前に運営の型を整えておく話はこちらに、加算の届出まわりの手順はこちらにまとめてあります。

冒頭のA理事長には、勉強会のあとで様式を1枚お渡ししました。同意年月日の欄が入っているだけの、なんてことのない様式です。それでも、あの欄が1つあるかないかで、来年の運営指導の空気は変わります。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の取扱いは自治体により運用が異なる場合があるため、最終的な判断は指定権者へご確認ください。


あわせて読みたい


株式会社Reliefのサービスで、事業運営を強力サポート!

株式会社Reliefは、医療機関や介護・福祉・保育施設の運営をトータルサポートする専門企業です。
業界特化型のオンラインアシスタント「セレナ」
月一回からはじめる事務長アウトソーシング「困ったときのじむちょー君」
バックオフィスの業務改善・効率化、MoneyForwardクラウドICT・クラウドDX導入支援
経営課題の解決や業務効率化を実現し、貴社の発展を全力でサポートいたします。

現場の事務負担を減らす自社開発アプリも無料で公開しています。
PC・ソフトの台帳づくりを自動化するIT資産管理ツール
社用車・送迎車の記録を一元管理する車両管理アプリ
最新情報のお知らせは公式LINEでお届けしています。お気軽にご登録ください。