介護・保育施設向けキャリアアップ助成金2026申請ガイド
「正社員にすると損」という思い込みはどこから来るのか
介護施設や保育施設のクライアントと話すとき、正社員転換の話が出ると反応が2つに分かれる。「知ってます、使ってます」か、「うちにはハードルが高い」か。 後者によく聞くと、助成金の存在を知らないケースより、「申請が複雑で、もし要件を満たしてなかったら返還になる」という恐れから動けないパターンが多い。 正直、気持ちはわかる。助成金はミスると痛い。私もクライアントの申請サポートを始めた当初、書類を1枚間違えて差し戻しになった経験がある。あのときは冷や汗ものだった。 ただ、そこで止まったままにしておくのも、それはそれでもったいない話だ。1人あたり最大80万円を見送っているのと同じことだから。 どこでつまずきやすいか、何をどの順番でやれば通るか。それさえわかれば、思ったほど難しくない。正社員転換コースの金額 ─ 中小企業はいくらもらえるのか
厚労省のキャリアアップ助成金ページに掲載されている2026年度の正社員転換コース(中小企業)の支給額は、転換する労働者の属性によって異なる。- 有期雇用 → 正規雇用(重点支援対象者):40万円×2回=最大80万円
- 有期雇用 → 正規雇用(その他の労働者):40万円×1回
- 無期雇用 → 正規雇用(重点支援対象者):20万円×2回=最大40万円
- 無期雇用 → 正規雇用(その他の労働者):20万円×1回
2026年度から変わった申請の入口 ─ 「事前承認」が「届出制」になった意味
これが今回いちばん伝えたい変更点だ。 以前のキャリアアップ助成金は、正社員転換を実施する前に都道府県労働局へ「キャリアアップ計画書」を提出し、承認を受けてからでないと動けなかった。承認が下りるまでに時間がかかるケースもあり、「やろうとしたが手続きが間に合わなかった」という話も珍しくなかった。 2026年度からは「届出制」に変わった。つまり、実施前に計画書を提出して届け出るだけでよく、承認を待つ必要がない。届出が受理された後、スムーズに転換手続きに入れる。 これは実務上かなり大きい変化だ。 ただし、1点だけ注意が必要なのは、転換の実施前に必ず届出を済ませておくこと。転換後に「やっておけばよかった」で遡って届出することはできない。転換を決めたら、今日中にでも計画書を用意して労働局へ持ち込む、というくらいのテンションで動いてほしい。申請の流れ ─ 決めたらその日に動き出す5ステップ
実際の申請ステップを整理する。複雑に見えるが、やることは5つだけだ。- 就業規則に正社員転換規定を設ける
「有期雇用スタッフが一定の要件を満たした場合、正社員に転換できる」旨を就業規則に明記する。これがないと助成金の対象にならない。既に記載がある施設は次のステップへ。 - キャリアアップ計画書を作成・届出する
厚労省の様式(「キャリアアップ計画書」様式第1号)に記入し、都道府県労働局またはハローワークへ届出。2026年度からは承認不要なので、届出後すぐに次へ進める。 - 対象者を正社員に転換する
労働契約を締結し、正社員としての賃金を支払い始める。賃金は転換前より3%以上引き上げることが条件(賃金規定等改定コースの場合)。 - 転換後6か月間、正社員として雇用を継続する
支給申請の条件は「転換後6か月間の賃金を支払っていること」。この6か月が最初の支給申請のタイミングになる。 - 支給申請書を提出する
6か月経過後、2か月以内に支給申請。様式は厚労省のWebサイトからダウンロードできる。
現場で見てきた失敗3パターン ─ 要件は満たしていたのに通らなかったケース
うちがサポートしてきた中で、一番多い失敗を3つに絞る。 ① 就業規則の転換規定が「努力義務」になっていた 「…転換することができる」という記載でなく、「…転換に努めるものとする」という曖昧な書き方にしていた施設がある。これは規定として認められないケースがある。転換規定は権利として明確に書く必要がある。 ② 転換前に届出を忘れていた 「転換してから申請を考えればいいと思っていた」は一番もったいない失敗だ。2026年度からは届出制なので、実施前の届出はより簡単になったが、順序を間違えると申請できなくなる。 ③ 転換後の賃金台帳の保管が不十分だった 支給申請時に「転換後6か月間の賃金を支払ったこと」を証明する書類が必要になる。賃金台帳・タイムカード・出勤簿の原本または写しが求められるが、電子化せず紙で管理していた施設が、担当者の退職時に書類を紛失してしまったケースがあった。 電子保存でも問題ない。マネーフォワードのような給与管理ソフトを導入していれば、データはすぐ出てくる。 3つとも、知っていれば防げる失敗だ。逆に言えば、これをクリアできれば通る確率は格段に上がる。出典・参考情報
- 厚生労働省 キャリアアップ助成金(厚生労働省、確認日:2026年4月28日)
- キャリアアップ助成金 様式・記載要領(厚生労働省、確認日:2026年4月28日)
- 都道府県労働局・ハローワーク 各種給付金申請窓口(厚生労働省、確認日:2026年4月28日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。助成金の要件・金額は年度ごとに変更になる場合があります。最新情報は都道府県労働局またはハローワークへお問い合わせください。
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