グループホーム 報酬改定案 大規模住居等減算と4論点【2026】
3.2倍。入居定員が8人以上の障害者グループホームの住居数が、この10年で増えた倍率です。
2015年度に2,066住居だったものが、2024年度には6,655住居。8人以上の住居には「大規模住居等減算」がかかる仕組みがあるのに、増え続けました。厚生労働省の資料は、この減算の抑制効果を「十分とはいえない状況」と書いています。
出どころは、2026年10月30日の第67回障害福祉報酬改定検討チームです(第67回 障害福祉報酬改定検討チーム 資料)。令和9年度(2027年度)の報酬改定に向けて、共同生活援助(グループホーム)の論点が4つ示されました。どれも「検討してはどうか」という方向性の段階で、単位数や減算率の数字はまだ出ていません。
先月、私は愛知県内でグループホームを運営する法人のF理事長と、住居ごとの定員表を並べていました。「10人の住居が2つあるんです。減算は織り込んで計画を立てたんですけどね」。今回の資料は、その「織り込み済み」を揺らしにくる内容でした。
大規模住居等減算は「減算後も利益率が高い」と指摘された
今の減算がかかる条件は3つです。
- 入居定員が8人以上の共同生活住居
- 日中サービス支援型の場合は、入居定員21人以上の共同生活住居
- 一体的に運営している共同生活住居の入居定員の合計が21人以上
問題にされたのは、減算を受けている事業所のほうが利益率が高い点です。令和7年障害福祉サービス等経営概況調査の任意集計で、減算を算定している事業所の収支差率は+8.6%。算定していない事業所の+4.9%を3.7ポイント上回りました。
規模別に見ると、差はもっと開きます。
- 20人以下の事業所は、減算なし+4.6%、減算あり+5.8%
- 21人以上の事業所は、減算なし+2.3%、減算あり+10.3%
21人以上で減算を受けている事業所が、いちばん高い。同じ敷地や近い距離に住居を固めれば運営の効率が上がり、減算分を吸収してなお余る。資料はそう読んでいます。
方向性は2つです。1つは、減算率の水準の見直し。対象に挙がったのは、8人以上の住居を複数持つ事業所と21人以上の大規模住居、それに一体的運営で21人以上になる住居です。もう1つは、今は減算の対象外になっている日中サービス支援型のうち、入居定員8人以上20人未満の住居を対象に加える案です。日中サービス支援型では、11人以上の事業所の収支差率が+8.2%で、10人以下の+3.5%を上回っていました。
減算率をどこまで動かすかは、いま実施中の令和8年度障害福祉サービス等経営実態調査の結果も見て決めるとされています。具体的な率は、今回の資料にはありません。
F理事長の法人は、8人以上の住居を複数持つ事業所にそのまま当てはまります。見直し後の減算率が出た日に収支をすぐ引き直せるよう、住居別に売上と人件費を分けて集計しておく。最初に手を付けたのはそこでした。
看護職員配置加算は、包括型の6.6%しか取れていない
医療的ケアの論点は、加算の取得率の低さから始まっています。令和8年4月サービス提供分の算定状況です。
| 加算 | 介護サービス包括型 | 外部サービス利用型 | 日中サービス支援型 |
|---|---|---|---|
| 看護職員配置加算 | 840事業所(6.6%) | 63事業所(6.0%) | 285事業所(18.2%) |
| 医療的ケア対応支援加算 | 62事業所(0.5%) | 2事業所(0.2%) | 52事業所(3.3%) |
一方で、令和7年度の調査研究では、グループホームへの入居を希望しない理由として4割以上が「医療的ケアがちゃんと受けられるか心配だから」と答えています。受け皿が足りていません。
見直しの方向性は2点。
- 日中サービス支援型と、医療的ケアの必要な方の支援実績が一定数以上ある介護サービス包括型を対象に、今の「常勤換算1人以上」より手厚い看護職員配置を評価する区分を新たに設ける
- 加算の要件である「常時の連絡体制」を、自前の看護職員だけでなく病院・診療所・訪問看護ステーションの看護職員との連携でも満たせるようにする
2つ目は、認知症対応型共同生活介護の例を参考にした案です。看護師を常勤で抱えられない小さな法人でも、地域の訪問看護ステーションと組めば加算に手が届く可能性が出てきます。訪問看護とは日ごろ付き合いがあるのに、取り決めが口約束のままという法人は珍しくありません。連携の中身を文書にしておくなら、今のうちです。
個人単位の居宅介護等の特例は、令和9年度以降も延長の方向
重度の方がグループホームに住みながら、個人単位でホームヘルプ(居宅介護等)を使える特例は、令和8年度末までの期限付きです。利用者は令和5年4月の3,056人から、令和8年4月には3,332人に増えました。
資料は課題も並べています。グループホームと居宅介護事業所のどちらが責任を持つのかが曖昧になること。サービスを二重に受け、公費も二重払いになること。そのうえで方向性は「当面の対応として、令和9年度以降も特例的な取扱いを延長してはどうか」でした。恒久化を求める要望が複数の関係団体から出ていることを踏まえ、実証的な取組も含めて扱いを検討するとしています。
来年4月で打ち切りという筋は、今回の案では選ばれていません。ただ、責任の所在は次の議論で必ず問われます。ヘルパーが入る時間帯の役割分担を、個別支援計画にどこまで書けているか。今のうちに点検しておきたいところです。
自己評価と外部評価が指定基準へ。地域連携推進会議は年2回に
4つ目は、支援の質をどう担保するかです。背景には、障害福祉サービスの実績や経験が少ない事業者の参入が多いことへの懸念があります。
令和8年2月に「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」が策定され、自己評価用のチェックシートも示されました。今回の案は、これを使った次の3つを指定基準に位置付けるというものです。
- 事業所が自らのサービスを評価・点検する(自己評価)
- その結果を、地域連携推進会議で第三者の目から評価する(外部評価)
- 自己評価と外部評価の結果を公表する
外部評価には、市町村職員や基幹相談支援センター職員などの参加を求めることも検討されています。公表先には、情報公表システムや法人のホームページ、事業所内の掲示などが挙がっています。
地域連携推進会議の開催頻度は、今の「おおむね1年に1回以上」から「おおむね1年に2回以上」へ。日中サービス支援型に義務づけられている協議会等による評価は、この仕組みが整うことを前提に、負担軽減のため廃止を検討するとされました。
私がいちばん気になったのは、ここでした。年1回の会議の段取りでさえ、施設長が一人で抱えている法人は多い。それが年2回になり、外部評価の資料づくりまで乗ってきます。
同じ資料の参考資料には、令和9年度から管理者の資格要件(実務経験要件、研修要件)を導入する予定も載っていました。居宅介護支援では管理者要件を緩める方向の見直し案が出ていますが(主任ケアマネ 管理者要件 撤廃案 居宅の採用判断3点)、グループホームは逆に要件が新しく入る側です。詳しい論点は、横断的事項として別に示される予定です。
改定案が固まる前に、住居ごとに数えておく3つ
単位数も減算率もまだ出ていません。それでも次の3つは、今の手元の資料で確かめられます。
- 住居ごとの入居定員と、一体的運営の合計定員。8人以上の住居が何か所あるか、21人以上になる組み合わせがあるか。日中サービス支援型なら、8人以上20人未満の住居があるか
- 看護職員の常勤換算と、訪問看護ステーションなどとの連携の取り決め。口約束のままなら、書面にできるか
- ガイドラインのチェックシートでの自己評価。一度でも付けてみたか、地域連携推進会議の資料に転用できる形になっているか
F理事長は、帰り際に住居別の集計表をもう一度開いていました。あなたの法人の定員表は、住居単位で今すぐ出てきますか?
出典・参考情報
- 第67回「障害福祉報酬改定検討チーム」資料(厚生労働省、確認日:2026年10月31日)
- 自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、共同生活援助、強度行動障害の状態にある者等への支援に係る報酬・基準について(第67回資料)(厚生労働省、確認日:2026年10月31日)
- 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(厚生労働省、確認日:2026年10月31日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の内容は審議中の対応案であり、今後の議論で変更される可能性があります。最新の情報は厚生労働省の公表資料をご確認ください。
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