障害福祉の運営指導 3年に1回へ 処分基準も明示【2026】

16.5%。令和5年度に運営指導を受けた障害福祉分野の事業所の割合です。

国は指導指針で「おおむね3年に1度」の実施を求めてきました。3年に1回なら、1年あたり33%前後になるはずです。半分にも届いていません。

この差を国が埋めにきたのが、令和8年6月に都道府県へ流された通知一式でした。


実施率16.5%の内側には、48倍の開きがあった

社会保障審議会障害者部会に出された資料には、こう書かれています。

令和5年度の運営指導の実施率(実施件数/全事業所数)は16.5%(1.0%~48.8%の平均値)であり、指導指針においておおむね3年に1度の実施を求めている

目を留めてほしいのは括弧の中です。1.0%から48.8%。自治体によって48倍の差があります(障害福祉分野における運営指導・監査の強化(案)について)。

内訳も出ています。指定障害福祉サービス事業者等が15.8%、指定障害児通所支援等事業者等が18.8%。放課後等デイサービスや児童発達支援を運営している側のほうが、わずかに高い。

つまり「うちには10年来ていない」という感覚は、事業所の優秀さではなく、所在地の事情でした。そしてその事情のほうが、今回動きます。


国が引いたレバーは2本ある

令和8年6月、都道府県等に通知・周知展開が行われました。中身を経営判断に効く形で言い直すと、レバーは2本です。

1本目は頻度。指導指針は、次の5サービスについて明確な線を引きました。

就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援及び放課後等デイサービスについては、3年に1回以上の頻度で行う

国の概要資料では、これを「実施率約33%/年」と数値で言い換えています。対象5サービスの平均実施率は令和5年度18.0%、令和6年度19.0%。今の倍近くまで引き上げる、という宣言です(障害福祉分野における運営指導・監査の強化について(概要))。

頻度以外にも、優先順位の指定があります。

  • 指定後まもない事業所については、指定後3年以内に運営指導を行う
  • 過去の指導内容、通報等により不適切な運営や報酬請求が疑われる事業所については、優先的に運営指導を行う

開設して2年、まだ体制が固まりきっていない放課後等デイサービス。ここが名指しで対象に入りました。開設バブルの時期に指定を取った事業所ほど、順番が早く回ってきます。

2本目のレバーは、もっと重い話です。


処分の「級」が表に出た

これまで、行政処分は自治体ごとの運用でした。同じ違反でも、県が違えば勧告で済むこともあれば効力停止まで行くこともある。事業者からすると、どこまでやったら何が起きるのかが読めませんでした。

国の概要資料は、第156回障害者部会(令和8年6月5日)資料3を引きながら、処分基準の考え方の例を載せています。骨格はこうです。

  • A級:勧告(人員基準違反、運営基準違反時のみ)、勧告以外の行政指導
  • B級-2号:指定の一部効力停止3月(新規利用者受入停止等)
  • C級-2号:指定の全部効力停止3月
  • D級:指定取消

処分事由との対応も、あわせて示されました。人員基準違反(障害者総合支援法第50条第1項第4号)と運営基準違反(同第5号)はA級の勧告。一方、人格尊重義務違反(同第3号)、不正請求(同第6号)、不正の手段による指定(同第9号)はC級、指定の全部効力停止です。

全部効力停止3月が何を意味するか。利用者への支援は続けられず、報酬も立ちません。3か月です。放課後等デイサービスの規模なら、それは廃業と同義になりかねない。

ここで恐ろしいのは、人員基準違反と不正請求の距離が、現場では驚くほど近いことです。児童指導員が一人欠けた月に、加算を止め忘れた。それだけで、A級の勧告で済む話がC級の側へ滑ります。書類の不備ではなく、線の引かれ方の問題です。

では、その線はいつ引かれるのか。運営指導の当日です。


当日までに何を出すのか、全国で揃った

令和8年6月、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課監査指導室は、42ページの集団指導・運営指導マニュアルを出しました。全国標準の手順書が存在するのは、これが初めてです。

整理の軸が変わっているのが要点です。

障害福祉サービスごとに、「サービスの質に関する事項」と「サービスの質を確保するための体制に関する事項」に分け、それぞれ確認項目を列挙したうえで、当該項目を確認するための文書を記載

従来の「必要書類一覧」ではありません。確認項目が先にあって、その項目を裏づける文書が後ろにぶら下がる構造です。書類が揃っていても、その書類で何を証明しているのかが説明できなければ、指摘の対象になります。

マニュアルには「事前提出資料」「障害福祉サービス事業者等による自己点検」の節が置かれ、実施状況指導・最低基準等運営体制指導・報酬請求指導の3本立てで進む流れが書かれています。自治体側の準備も、すでに動いている。愛知県は障害福祉サービス事業者等運営指導事前提出資料のページを公開済みです。

実施体制そのものも増強されます。指定事務受託法人(障害者総合支援法第11条の2)の活用と、オンラインの活用。自治体の人手が足りないから3年に1回は無理、という言い訳を国が先回りで潰しにかかっている形です。


自前で回すか、外に出すか。分かれ目は3つ

ここからは、うちがクライアントと話すときに実際に使っている判断の順番です。

1つ目。前回の運営指導から何年経っているか。4年以上空いているなら、今年度か来年度に来ると見ておくべきです。3年に1回の運用が本気で回り始めれば、長く空いた事業所から順に消化されます。「来たら考える」は、もう間に合いません。

2つ目。事前提出資料を作れる人が、事務方に何人いるか。ここが1人なら、内製は危険です。運営指導の準備は、直前3週間に事務作業が集中します。その3週間に管理者が有給を取れない、退職の申し出が出せない、という状態を毎回作ることになる。属人化の怖さは、本人の能力ではなく代替不可能性のほうにあります。

3つ目。加算の算定要件を、根拠文書まで遡って説明できるか。説明できないなら、書類を整える前に運用を直す必要があります。整った書類で説明のつかない運用を守ろうとすると、それは不正請求の側に近づく。順番を逆にしてはいけません。

この3つのうち2つが引っかかる事業所は、外部の手を入れたほうが安いというのが私の実感です。準備そのものを外注しなくても、事前提出資料の棚卸しと自己点検の伴走だけを切り出す形でも十分効きます。逆に、3つとも問題なければ内製で回せます。全部を外に出す必要はありません。

実施率16.5%という数字の裏側には、その年に一度も呼ばれなかった事業所が大量に残っている。そこから順番に消化が始まります。私は今、東海圏の放課後等デイサービスを回るたびに、前回の実施年月だけを先に聞くようにしています。

あなたの事業所は、何年前でしたか。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の運用は自治体ごとに異なる場合があるため、実際の対応は所管の指定権者にご確認ください。


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