歯科訪問診療4・5が半減する日 令和9年5月末【2026】
「同じ日にまとめて回った方が効率がいい」は、歯科訪問診療では逆に働く。同一日に10人以上19人以下なら歯科訪問診療4で160点、20人以上なら歯科訪問診療5で95点。1人だけ診た日の歯科訪問診療1が1,100点だから、1件あたりは7分の1以下まで落ちる。
そのうえ、この160点と95点はさらに半分になることがある。半減を止めていた経過措置が、令和9年5月31日で切れる。残り8か月だ。
160点が80点になる ── 告示の「100分の50」
令和8年厚生労働省告示第69号、歯科点数表のC000歯科訪問診療料。注7にこう書いてある。
4及び5については、在宅療養支援歯科診療所1、在宅療養支援歯科診療所2又は在宅療養支援歯科病院に係る施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関以外の保険医療機関及び別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関以外の保険医療機関においては、所定点数及び注6に定める所定点数の100分の50に相当する点数により算定する。
二重否定が重なっていて読みにくいので、素直に書き直す。在支歯の届出もなく、大臣が定める施設基準も満たしていない歯科医院は、歯科訪問診療4と5が半額になる。
160点が80点、95点が48点。診療時間20分未満のときの96点・57点も同じく半分になる。施設を1軒まわって20人診た日、患者1人あたりの診療料が480円という計算だ。歯科衛生士を連れて、器材を積んで、片道30分かけて向かった先での480円。採算が合うかという以前に、訪問を続けられるかどうかの話になる。
減算を外す道は2つ。難易度はまるで違う
注7の文面を裏返せば、減算を避ける条件は2択になる。
ひとつは在宅療養支援歯科診療所1または2の届出。こちらは告示第71号の六の三に要件が並んでいる。高齢者の口腔機能管理の研修を受けた常勤歯科医師、歯科衛生士の配置、迅速な訪問体制を文書で示すこと、後方支援の病院との連携、定期報告、地域の会議への参加実績。正直、明日から用意できる中身ではない。
もうひとつが大臣が定める施設基準のほうだ。告示第71号の七の一の二に、こう書かれている。
(1) 次のいずれかに該当すること。イ 歯科訪問診療1又は歯科訪問診療2を行っていること。ロ 当該地域において、保険医療機関、介護・福祉施設等と連携していること。(2) 歯科訪問診療が適切に実施できる体制を有すること。
拍子抜けするほど軽い。研修も常勤要件も出てこない。歯科訪問診療1か2を実際に算定していれば(1)のイは満たすし、算定が無くてもロの地域連携で拾える設計になっている。名古屋で訪問中心に回っている先生なら、すでに該当しているところは多いはずだ。
ひとつ補足しておく。注16の基準は告示に「地方厚生局長等に届け出たものであること」と明記されているが、注7の七の一の二は「満たす保険医療機関」という書き方で、届出を求める文言がない。厚労省の届出様式一覧(保医発0305第8号 別添2)を全ページ当たっても、注16の行はあるのに注7の行は見当たらなかった。ただし運用の細部は地方厚生局の判断が入るので、愛知なら東海北陸厚生局に一度当てておいた方が確実だと思う。
令和9年5月31日 ── みなし規定が切れる日
ここまでの話には続きがある。告示第71号の「第十七 経過措置」の四だ。
四 令和九年五月三十一日までの間に限り、第四の七の一の二に該当するものとみなす。
つまり今は、条件を満たしているかどうかに関係なく、全部の歯科医院が七の一の二に該当している扱いになっている。減算が発動していないのは、要件をクリアしているからではなく、みなされているからだ。ただの猶予だ。
この「みなす」が令和9年5月31日に終わる。翌6月1日からは、在支歯の届出か七の一の二の要件か、どちらかを自力で持っていない医院の歯科訪問診療4・5が半額に落ちる。
先週、訪問中心でやっている歯科のC先生とこの話になった。「うちは訪問しかやってないから関係ない」と言われて、私は少し黙った。逆だ。同一日にまとめて施設を回る運用をしている医院ほど歯科訪問診療4・5の算定比率が高く、この減算をまともに食うのは、まさにそういう訪問に振り切った医院のほうになる。
8か月あまりで、院長が決めること
今日から令和9年5月31日まで、8か月と少し。期限は動かない。やることは3つに絞れる。
1. 直近1年の算定実績を引っ張る。歯科訪問診療1と2を算定した日があるか。あれば七の一の二の(1)イは押さえている。レセコンから件数を出すだけなので、事務で30分もかからない。
2. 連携の記録を形にする。(1)イが空振りでも、ロの「地域の保険医療機関、介護・福祉施設等との連携」がある。ケアマネとのやり取り、施設の担当者会議への出席、紹介元の病院。実態としてやっているのに記録が残っていない医院が、うちの支援先でもいちばん多い。
3. 在支歯を取りに行くかを決める。訪問を収益の柱にしていくなら、七の一の二で減算を止めるだけで終わらせるのはもったいない。在支歯1・2は加算面の扱いも変わる。ただし研修と人員の準備に時間がかかるので、取るなら逆算して今月中に動き出す話になる。
歯科の施設基準は、届出を出した日の要件のまま何年も放置されやすい。施設基準の棚卸しを年1回やっておくと、こういう経過措置の期限にも引っかかりやすくなる。9月の金パラの点数改定のように、待っていれば数字が届く変更とは性格が違う。何もしないと、静かに半分になる。
レセコンから実績を出すところまでは院内でできる。連携の記録を整えて届出の要否を厚生局に確認する工程で手が止まるなら、そこはうちのような外部に投げてしまった方が早い。院長が夜にやる仕事ではない。
出典・参考情報
- 歯科点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)(厚生労働省、確認日:2026年9月20日)
- 特掲診療料の施設基準等(令和8年厚生労働省告示第71号)(厚生労働省、確認日:2026年9月20日)
- 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第8号)(厚生労働省、確認日:2026年9月20日)
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省、確認日:2026年9月20日)
- 保険医療機関・保険薬局の指定及び届出(東海北陸厚生局、確認日:2026年9月20日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。施設基準の取扱いは地方厚生局により運用の細部が異なる場合があるため、最終的な判断は管轄の地方厚生局へご確認ください。
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