歯科金パラ 9月点数改定 全部金属冠181点減【2026】

「点数、もう出てるって本当ですか」

9月の最初の週、名古屋市内の歯科医院。院長室のデスクで、D院長がカルテから顔を上げてそう言った。8月に私が書いた記事を読んでくれていたらしい。あのとき私は「材料の価格は決まったけれど、点数はまだ公表されていない」と書いて、そこで筆を止めていた。

出ていた。8月31日付で、しっかり。

その場でPDFを開いて一緒に画面を覗き込んだ30分が、今日の話のはじまりです。


8月31日付の通知で、9月1日から適用

根拠になるのは保医発0831第1号(令和8年8月31日)です。厚生労働省保険局医療課長と歯科医療管理官の連名で出ている通知で、冒頭にこう書いてあります。

今般、下記の通知の一部を別添のとおり改正し、令和8年9月1日から適用することとするので、その取扱いに遺漏のないよう、貴管下の保険医療機関、審査支払機関等に対して周知徹底を図られたい。

歯科にとって効いてくるのは別添3です。使用歯科材料料の算定に関する通知(令和8年3月5日保医発0305第2号)の改正で、PDFの24ページから27ページに新旧対照表が付いています。傍線が引かれた行が、9月1日から変わった行。改正後と現行が左右に並んでいるので、この1本のPDFだけで新旧が突き合わせられます。経過措置の記述はありません。


大臼歯の全部金属冠、2,023点が1,842点に

D院長と一緒に拾った主なところを並べます。いずれも材料料(使用歯科材料料)であって、技術料とは別枠です。

区分8月31日まで9月1日から
M010 金属歯冠修復 金パラ 大臼歯 全部金属冠2,023点1,842点−181点
M010 同 小臼歯・前歯 全部金属冠1,448点1,318点−130点
M010 同 大臼歯 インレー 複雑なもの1,277点1,163点−114点
M011 レジン前装金属冠 金パラ1,803点1,642点−161点
M017 鋳造ポンティック 金パラ 大臼歯2,328点2,120点−208点
M010-3 接着冠 金パラ 大臼歯1,607点1,463点−144点
M002 支台築造 間接法 メタルコア 大臼歯173点157点−16点

大臼歯の全部金属冠で181点。率にすると8.95%です。1割近い。

D院長が最初に口にしたのは「思ったより下がったな」でした。その次に出てきたのが「うち、これ何本やってたっけ」。経営者として正しい順番だと思う。


月30本の医院なら、年間141万円が消える計算

件数を仮に置いて計算してみます。ここから先は上の点数を使った私の試算値で、通知に書いてある数字ではありません。

  • 大臼歯の全部金属冠を月30本:181点×30=5,430点=54,300円
  • レジン前装金属冠を月20本:161点×20=3,220点=32,200円
  • 鋳造ポンティック(大臼歯)を月15本:208点×15=3,120点=31,200円

合わせて月11,770点、117,700円。12か月で1,412,400円です。

もちろんこれは10割相当の話で、実際には患者負担と保険者支払に分かれます。件数も医院ごとに全然違う。それでも、歯科衛生士をもう1人雇えるかどうかという規模の金額が、告示ひとつで動いている。この感覚だけは持っておいたほうがいい。

うちが支援している歯科のクライアントには、まず直近3か月のレセプトからM010とM011とM017の算定本数を引いてもらいました。自院の数字に181点を掛けないと、この話は他人事のままで終わるからです。


効いてくるのは、素材価格と点数の2か月のズレ

ここからが本題です。

歯科用貴金属の随時改定は、金・銀・パラジウムの国際価格に合わせて3か月ごとに行う仕組みになっています。中医協 総−3(令和5年11月17日)の資料に、その計算の前提がはっきり書いてあります。

前回改定以降、改定2カ月前までの平均素材価格を使用

つまり9月の点数は、9月の相場ではなく、それより前の期間の平均で決まっている。同じ資料の論点ページには「令和6年6月1日施行後の随時改定については、9月・12月・3月・6月に行うこととしてはどうか」とあり、今の6月・9月・12月・3月というサイクルはここから来ています。

ここに医院側の落とし穴がある。点数は9月1日にきっちり下がる。一方で、技工所からの請求単価や金属の仕入れ値がいつ下がるかは、通知では決まっていません。下がるとしても医院ごとの契約と在庫のタイミング次第です。

点数だけが先に下がって仕入れが据え置きなら、その差は全部医院がかぶる。逆に仕入れが先に下がっていたなら、ここ数か月は少し得をしていたことになる。どちらに転んでいるかは、通知を読んでも分かりません。自分の医院の納品書を見るしかない。


日曜の夜に、5分でできる2つ

D院長と決めたのは2つだけでした。

1つめ、9月1日以降に算定したレセプトで、材料料が新しい点数に切り替わっているかをレセコンの画面で1件だけ確認する。ベンダーの更新が入っていれば自動ですが、入っていなければ返戻の山になります。院長が自分の目で1件見るのが、いちばん早い。

2つめ、金属の直近の納品書を1枚だけ引っ張り出して、6月と9月の単価を並べる。下がっていなければ技工所か商社に電話を1本入れる材料になります。逆に下がっていたなら、それはそれで安心して眠れる。

制度の改定は3か月後にまた来ます。次は12月。そのときも同じ手順で確認できるように、今回の2つをカルテ棚の横にメモしておけばいい。

D院長は帰り際、「毎回これ、誰かが教えてくれるわけじゃないんですよね」と言って笑っていた。笑い事ではないのだけれど、たしかにそのとおりで、この通知が院長のところに届く仕組みはどこにもない。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細は必ず原典をご確認ください。本文中の年間試算は当社が件数を仮定して算出した試算値であり、通知に記載された数値ではありません。


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