無料のIT資産管理ツールはどこまで使えるか【2026】
無料でIT資産管理をやること自体は、できます。詰まるのは、無料で続けるほうです。
1回目の棚卸なら、Windowsに最初から入っている機能だけで終わります。追加のソフトは要りません。実際に手を動かして確かめました。
壊れ始めるのは、2回目からです。
「無料」の選択肢は、実は3種類ある
IT資産管理ツールを無料で探すと、性質のまったく違う3つが同じ「無料」という言葉で並びます。ここを分けないまま比べるので、話が噛み合わなくなります。
| 種類 | 何が無料か | その代わりに必要なもの |
|---|---|---|
| Windows標準の機能 | 本当に0円。買うものが何もない | 集めた結果を1つの表にまとめる作業が、全部手作業で残る |
| オープンソースの資産管理ソフト | ライセンス料だけ | 動かすサーバー、その更新、バックアップ、障害対応。要するに人の時間 |
| 無料枠つきのクラウドサービス | 上限の範囲内だけ | 台数か機能のどちらかに上限。超えた月から課金が始まる |
このうち、いちばん誤解されているのが1つ目です。Windowsは標準で、IT資産管理に必要な情報のかなりの部分を返してくれます。買う前に、まずここを知っておいたほうがいい。
Windows標準だけで、ここまでは取れる
PowerShell(ウィンドウズに最初から入っている、命令を打ち込んで操作する画面)を開いて、次のコマンドを打つだけです。管理者権限もインストールも要りません。
| 取れる情報 | コマンド |
|---|---|
| メーカー・機種名 | Get-CimInstance Win32_ComputerSystem | Select-Object Manufacturer, Model |
| シリアル番号 | Get-CimInstance Win32_BIOS | Select-Object SerialNumber |
| OSとビルド番号 | Get-CimInstance Win32_OperatingSystem | Select-Object Caption, Version |
| 22H2などのバージョン表記 | (Get-ItemProperty 'HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion').DisplayVersion |
| MACアドレス | Get-NetAdapter | Where-Object Status -eq 'Up' | Select-Object Name, MacAddress |
| ウイルス対策の状態 | Get-MpComputerStatus | Select-Object AntivirusEnabled, RealTimeProtectionEnabled |
| 更新プログラムの適用履歴 | Get-HotFix | Sort-Object InstalledOn -Descending |
うちの環境(Windows 11 Pro)で2026年9月6日に実際に打って、全部が返ってくることを確認しました。無料どころか、追加で入れるものが何ひとつありません。
自動で埋まるのは、機種とシリアル番号、OSとバージョン、MACアドレス、ウイルス対策と更新の状態。台帳に必要な9項目のうち4項目です。管理番号、利用者と部署、購入日と保証期限、いまの状態は、どのみち人が入れることになります。
ここまで読んで「じゃあ買う必要ないじゃないか」と思った方。私も一度そう思いました。
手を動かすと、無料の壁が3つ出てくる
同じ環境で続けて確かめたところ、無料の範囲では越えられない場所が、はっきり3つありました。
1. BitLockerの状態だけは、管理者権限がないと見えない
ディスクの暗号化が有効かどうかは、台帳のなかでも重要度の高い項目です。ところが、一般ユーザーの権限で確認しようとすると、こう返ってきます。
Get-BitLockerVolume → アクセスは拒否されました
manage-bde -status C: → ERROR: An attempt to access a required resource was denied.
実測です。つまり「各自のPCで自分でコマンドを打ってもらい、結果を送ってもらう」という無料の運用では、暗号化の状態だけ穴が空きます。そこを埋めるには、社員のPCで管理者権限を使うことになる。無料の一番きついところは、たいていここです。
2. メーカー製でないPCは、シリアル番号が空欄と同じになる
実際に返ってきた値がこれです。
Model : System Product Name
SerialNumber : System Serial Number
自作機やショップブランドのPCだと、メーカーが値を書き込んでいないため、こういう既定の文字列がそのまま返ります。台帳の一意キーにシリアル番号を使う設計だと、この時点で崩れます。事務所に1台でも自作機があると、この問題は必ず起きる。
3. MACアドレスは、仮想アダプタが混ざる
ネットワークアダプタの一覧を取ると、実際のLANポートに加えて、仮想環境やVPNソフトが作ったアダプタも並びます。うちの実測では、有効なアダプタ4つのうち3つが仮想でした。どれが本物の1台を指すのかを、人が毎回選ぶことになります。
1台なら選べます。30台ぶんを毎回選び分けるのは、別の話です。
オープンソースが無料なのは、ライセンスだけ
2つ目の選択肢、オープンソースの資産管理ソフトについても、同じ話が形を変えて出てきます。
ソフト自体の料金はかかりません。かかるのは、動かすサーバー、そのOSの更新、データベースのバックアップ、証明書の更新、そして年に何回か来るバージョンアップです。どれも金額の請求書は届きませんが、時間の請求書は毎月届きます。専任のIT担当がいる会社なら、この選択肢が本命です。いない会社では、導入した人が辞めた瞬間に誰も触れないシステムが1つ増えます。
クラウド型・オープンソース型・インストール型の性質の違いは、クラウド不要のIT資産管理ツール|社内にデータを置いたままPC台帳を作る方法で表にまとめてあります。具体的なソフト名もそちらに挙げました。
無料が壊れるのは、2回目の棚卸から
1回目は、気合いで終わります。30台ぶんのコマンド結果をExcelに貼り付けて、体裁を整えれば台帳の形にはなる。問題は半年後です。
- 集約:30台ぶんのバラバラなテキストを、また1つの表に戻す作業がもう一度発生します
- 同じ1台の判定:PC名を変えた端末は、素直にやると別の行として増えます。気づかないと台数が水増しされます
- 履歴:去年と比べて何が増えて何が消えたのか。前回のファイルを探すところから始まります
- 帳票:監査や上長に出す形に整える作業は、毎回ゼロからやり直しになります
無料でやると決めた会社の台帳が半年で止まるのは、担当者の意志が弱いからではありません。2回目の手間が1回目とまったく同じだからです。
どこで有料に切り替えるか
判断は、感覚ではなく掛け算で出せます。
台数 × 年間の実施回数 × 1台あたりの手間。30台の職場で年2回、1台10分かかるなら、年間10時間です。集約と体裁づくりを足せば、もう少し増えます。時給に直して、それが何円になるか。その金額と、ツールの値段を並べるだけです。
10台以下で、年1回でよくて、全員がメーカー製のPCを使っている。この条件が揃うなら、無料のまま続けられます。実際、そういう規模なら私も無理に勧めません。
逆に、30台を超えたあたりから、無料の維持コストは静かに逆転します。
うちの答えは、買い切りでした
月額を払い続けるのも、サーバーを立てるのも避けたい。けれど手作業には戻りたくない。その真ん中を埋めるものが見つからなかったので、うちは自社用に作りました。それがIT資産管理ツールです。
税込7,800円の買い切り、管理台数の制限なし、月額も年額もありません。上に書いた3つの壁は、そのまま設計に反映しました。BitLockerなどの詳細な情報は必要なときだけ権限を上げて取り、シリアル番号が使えない端末はMACアドレスとホスト名で同じ1台かを判定し、集約と重複の処理はソフト側で自動的に行います。社員のPCへのインストールは不要で、USBメモリに書き出した収集キットを挿して回るだけです。
インストールから30日間は、すべての機能を無料で試せます。クレジットカードの登録も要りません。30日あれば、上の掛け算の答えは出ます。
まとめ
無料のIT資産管理は、嘘ではありません。1回目は本当に無料で終わります。
ただ、無料で買えるのは「1回ぶんの作業」であって、「続く仕組み」ではない。ここを分けて考えると、自社がどちらを買うべきかは、わりとあっさり決まります。
まずは手元の1台で、上のコマンドを打ってみてください。返ってきた画面を見れば、残りの29台をどうやって集めるかという次の問いに、自然に行き着きます。
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出典・参考情報
- 本記事のコマンドと実行結果は、Windows 11 Pro(64bit)で2026年9月6日に実際に実行して確認しました。管理者権限の有無による差も同じ環境で実測しています。
- Microsoft Learn「Get-CimInstance」(2026年9月6日閲覧)
- Microsoft Learn「Get-MpComputerStatus」(2026年9月6日閲覧)
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