介護・福祉施設整備交付金 1回目内示709件【2026年6月】
「申請したら通る」は、もう前提が違う
2026年6月26日(金)、厚生労働省 老健局 高齢者支援課が 令和8年度 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金(一次協議分)の内示 を公表した。一次協議の数字は、合計 計画数 709件、計画額 6,873,286千円(約68.7億円)。
うち 国土強靱化対策分が471件・4,741,743千円(約47.4億円)。額ベースで68.9%、件数ベースで66.4%が「国土強靱化」枠に振られたことになる。これは 第1次国土強靱化実施中期計画(令和7年6月6日 閣議決定) に基づく取組分だ。
うちのクライアントの介護施設のA理事長と、内示が出た翌日の土曜の夜に電話した。「うちは耐震診断を後回しにしていた。今期は申請も出さなかった」と。額にして数千万単位の差が、年度の半年でつく。これは、もう「補助金が当たった、外れた」の話じゃない。強靱化要件を事業計画に組み込めたか否かの話だ。
強靱化対策分でないと枠が薄い。では、強靱化対策分とは何を指すのか。
47.4億円が国土強靱化に流れた理由
国土強靱化中期計画は、地震・水害・土砂災害・大雪などの大規模災害を想定し、社会機能を維持するためのインフラを国全体で底上げする計画だ。介護・福祉施設は、高齢者・障害者という「自力避難が難しい人」を抱える。だからこそ、施設の耐震化・浸水対策・非常用電源の確保が、強靱化計画の中核に位置づけられている。
地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金は、厚生労働省 福祉・介護 の所管で、地域密着型サービス(認知症対応型グループホーム、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護 等)の創設・改築・大規模修繕が主な対象になる。ここに、令和8年度から強靱化要素が深く食い込んだ。
具体的には、計画書の「整備内容」欄に 耐震基準への適合・浸水対策・非常用自家発電・備蓄スペースの確保 といった項目を組み込んだ申請が、優先的に枠を確保していった。逆に、利用定員拡大だけを目的にした「単純な増床」案件は、一次協議では後回しになりやすい構造になった。
都道府県別の計画額を見ると、東京238,136千円・愛知182,244千円・北海道178,295千円・鹿児島164,252千円・神奈川157,930千円・滋賀156,471千円。指定都市では浜松174,632千円・横浜153,974千円・堺123,350千円・神戸116,313千円と、人口規模や災害想定が大きい自治体ほど額が伸びている。これは偶然じゃない。強靱化計画の地域指定と連動している。
では、強靱化要件を計画に乗せられなかった自治体は、どう動いたのか。
計画数0の自治体に名を連ねた13市の意味
内示資料には、計画数0の自治体がはっきり載っている。指定都市では 千葉市 1市。中核市では 青森市・八戸市・水戸市・川口市・大津市・豊中市・八尾市・明石市・松江市・倉敷市・下関市・那覇市 の12市。合計13市が「今期は協議自体が無かった」ことになる。
これは「住民ニーズが無かった」のではない。申請したい事業者がいなかったか、自治体側が募集を絞ったか、どちらかだ。私の知る限り、後者のケースが少なくない。市の高齢者福祉計画と整備交付金の補助率(原則1/2程度)の足し合わせで、市の単独負担が読めない年度は、自治体側が一次協議を見送る判断をすることがある。
事業者側に何が起きるか。同じ市内で、同じタイミングで建てたい競合事業者がいても、二次協議までは動けない。半年の遅れが、用地確保・建設業者の発注・職員採用の準備すべてに連鎖する。これは経営判断として小さくない。
うちが事務長アウトソーシングで関わっている認知症GH(グループホーム)のB施設は、3年前にこの「市が一次協議を見送った」パターンに当たった。結果、別の事業者が二次協議で枠を取りに動き、B施設は1年待ちになった。1年待つということは、職員の内定辞退・建設費の追加上振れ・運転資金の組み直し、これがセットで来る。「市が動かないから自分も動かなくていい」は、いちばん危険な勘違いだ。
では、今からでも二次協議で枠を取りに行くなら、何をやるか。
二次協議に枠を取りに行くなら、来週やる3つの実務
今回の一次内示は6月26日。二次協議は例年、夏から秋にかけて自治体ごとに公募される。残り時間は3〜4か月。事務長や管理者として、来週から動くなら順番はこの3つだ。
1. 自治体の介護保険事業計画と整備交付金の整合性を確認する。市町村介護保険事業計画(第9期:令和6〜8年度)に、自施設の整備構想(定員・サービス種別・整備手法)が記載されているか。記載が無い場合、二次協議に乗らない可能性が高い。記載があるなら、計画担当課に「二次協議の見込み」を口頭で確認する。窓口は基本、市の高齢福祉課か介護保険課。
2. 強靱化対策分に乗せる要素を整備計画に書き加える。耐震診断結果・浸水想定区域の確認・非常用電源(72時間以上を推奨水準とする自治体が増えている)・備蓄スペース。この4点を「整備内容」に組み込んだ計画書は、一次・二次を問わず審査で評価される。耐震診断をまだ受けていない既存施設は、診断費用にも別の補助制度(自治体独自分)が当たることが多い。
3. 採択を逃した場合の年度内代替策を並走で組む。整備交付金が落ちた場合に備え、自治体の単独補助(介護施設整備事業補助金など名称は自治体ごとに違う)・福祉医療機構の貸付・地域医療介護総合確保基金(介護分)の活用可能性を、申請前にリスト化しておく。「採択されたら動く」では遅い。不採択を前提に動いた施設の方が、結果として翌年度に強い形で残る。これはここ5年でうちが見てきた共通点だ。
耐震診断書・浸水想定図・電源仕様書、ここまで揃えれば、二次協議の窓口で「あ、この事業者は強靱化対策分で行けますね」と言われる。逆に、これが無いまま申請を出すと、「単純増床」の枠で後ろに回される。差は紙1枚じゃなくて、書類の厚みで決まる。
出典・参考情報
- 令和8年度地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金(一次協議分)の内示について(厚生労働省 報道発表資料、確認日:2026年6月29日)
- 令和8年度一次協議の内示について(都道府県・指定都市・中核市別)PDF(厚生労働省 老健局 高齢者支援課、確認日:2026年6月29日)
- 国土強靱化(内閣官房 国土強靱化推進室、確認日:2026年6月29日)
- 福祉・介護(厚生労働省、確認日:2026年6月29日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。リンク先の内容は予告なく変更されることがあります。
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