人勧分 保育士がもらえない3つの理由と確認先【2026】

128施設。国の調査に答えた名古屋市の561施設のうち、去年の7月の時点で人勧分をまだ払い終えていなかった施設の数です。

払う側が遅れれば、受け取る側には「人勧分がもらえない」と映ります。先日も名古屋市内の認可保育所で、2年目の保育士が園長にスマホの検索画面を見せながら「私、もらってない気がするんです」と聞いてきたそうです。園長はその場で答えられず、同じ質問がそのまま定例訪問の私に回ってきました。

この「もらえない」は、ほどくと3つに分かれます。対象から外れているのか。まだ払われていないのか。別の道を通って届いているのか。どれに当たるかで、確かめる相手が変わります。


「パートだから対象外」は、国が決めた線ではない

人勧分は、公務員の給与改定に合わせて保育所の公定価格の人件費を引き上げたお金です。公定価格の人件費は国家公務員の給与に準じて算定されていて、令和7年分の改定率は+5.3%でした(こども家庭庁 子ども・子育て支援等分科会 資料1-1)。

誰に配るかについて、国の書き方ははっきりしています。

改定分を活用した賃金改善は、通常の教育・保育に従事する職員全てが対象に成り得る。(こども家庭庁 事務連絡 令和7年12月16日)

単価の積算に入っているのは、常勤の施設長や保育士、調理員などです。けれど実際に誰へいくら配るかは、法人が決めます。パートの保育士も、ふだんの保育に入っていれば対象になり得る側にいる。

そのかわり、配り方には縛りがあります。分科会資料には「対象者や支払う額が恣意的に偏らないこと」とあり、払い方は一時金などを基本としつつ、ほかの方法も妨げないとされています(同資料1-1)。給与明細に「人勧分」という名前で載るとは限らないわけです。

「パートだから対象外」と言われたなら、それは園の配分ルールの話です。国が外したのではありません。そのルールの中身は、園に聞くしかない。


期限の7月を過ぎても、払い終えない園はある

2つ目は、まだ払われていないケースです。国は令和7年分の支払いについて「遅くとも、夏季の賞与(夏季の賞与がない場合は7月中)までには支払うこと」と示しました(資料1-1)。いまは10月なので、この期限はもう過ぎています。

ただ、期限どおりに払いきれない園は前回もありました。令和6年分について国が施設に支払状況を聞いた調査には、市町村別の集計があります。名古屋市の数字はこうです(処遇実態調査 市町村別の支払時期(別紙2))。

  • 有効回答は561施設
  • 7月時点で全額支払済が433施設
  • 7月時点で一部支払済が80施設(うち残りを12月以降に払う予定が52施設)
  • 7月時点で未払いが48施設(うち12月以降に払う予定が25施設)

冒頭の128施設は、一部支払済と未払いを足した数です。2割を超える園が、7月の時点でまだ払い終えていなかった計算です(私の試算)。愛知県全体でも、1,114施設のうち一部支払済が185、未払いが107でした。この集計は施設が入力した市町村名で数えたもので、合計は国の公表値と一致しないと注記されています。

全国で見ると、3月までに一部か全額を払った施設が約63%、7月までに払い終えた施設が約73%です(資料1-1)。遅れること自体は珍しくない。困るのは、遅れていることを職員が知らされていないときです。


企業主導型の園には、同じお金が別の道で届く

3つ目は、勤め先が企業主導型保育所のケースです。企業主導型の運営費は、公定価格とは別の基本分単価で決まります。だから認可保育所の「3月に人勧分」という話が、そのまま当てはまりません。

それでも人勧分は反映されています。令和8年3月25日の事務連絡に、こう書かれています。

人事院勧告を踏まえた処遇改善は、公定価格の改定率と同じ考え方により基本分単価等へ反映を行っています。(こども家庭庁 事務連絡 令和8年3月25日)

同じ事務連絡は運営側に、改定の趣旨をふまえて「漏れのないように反映すること」を求めています。施設ごとの人件費比率や給与のモデルケースを公表する形も検討中だとあります。届く道は違っても、届けるべきお金であることは認可保育所と変わりません。道が違うだけです。


確認先は2つ。園の周知と、市町村の改定分

順番は、まず園、次に市町村です。

支払いが3月以降になる見込みの園には、払う時期を職員に知らせる決まりがあります。事務連絡は「支払予定時期について、職員に必ず周知すること」としたうえで、対象者が年度末時点で決まっていない場合は「全職員に周知すること」と書いています(事務連絡 令和7年12月16日)。知らされた覚えがないなら、園長か法人本部に、いつ・どの名目で払ったのかを聞けばいい。遠慮のいる質問ではありません。

園の答えに納得できないときの次の窓口が、園のある市町村の保育担当課です。市町村は国から、改定分の額を算出して管内の施設に知らせるよう求められていて、前回は約69%の市町村が協力しました(資料1-1)。

全額を人件費に充てていない施設には、追加で払うよう指導が入ります。令和6年分では、全額を人件費に充てていないとした施設が約1%ありました(同)。国も支給状況を調べて、支給がされていない施設にはフォローアップをすると明記しています。

経営者の側から見ると、職員がスマホで検索した時点で周知が届いていなかった、ということでもあります。


令和8年分は、まだ園に届く段階にない

最後に、これからの話です。令和8年の人事院勧告は8月7日に出ました(人事院 令和8年人事院勧告)。けれど保育の公定価格に反映するには、補正予算の成立が要ります(資料1-1)。

令和8年度当初の公定価格は、令和7年補正で措置した+5.3%の改善を引き続き確保した段階です(こども家庭庁 令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項)。令和8年分の改定率は、私が確認した範囲ではまだ公表されていません。まだ、です。いま「令和8年分がもらえない」と感じても、遅れではない。お金がまだ園に来ていないのです。

経営者がいま打てる手は、令和7年分の説明を紙1枚にすることです。払った時期と相手。名目と金額。それを職員室に置いておけば、令和8年分が決まったときも同じ紙を書き換えるだけで済みます。冒頭の園も、翌週の職員会議でこの1枚を配りました。保育園の事務をお手伝いするとき、私が最初に一緒につくるのも、たいていこの紙です。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細は各自治体・こども家庭庁の最新資料をご確認ください。


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