保育 処遇改善等加算 区分3 研修未修了で加算減【2026】

「配分の書類は完璧に作ったんです。なのに、加算額が去年より下がってて」

名古屋市内の認可保育所、A理事長が事務室のデスクに実績報告の控えを広げながら、そう言った。夏の終わりの、まだ蝉が鳴いている日の午後だった。書類は本当によくできていた。誰にいくら配ったかも、給与規程との整合も、隙がない。

血の気が引いたのは、私のほうだ。理事長が見ていた場所が、そもそも違っていたから。


加算額は「配分」では決まらない。決めているのは人数Aだ

処遇改善等加算の相談で持ち込まれる資料は、9割が配分の話だ。誰に、いくら、基本給か手当か賞与か。一本化されてからは特にそうなった。

けれど、区分3の加算額そのものを決めている式は、配分とは別のところにある。こども家庭庁の通知にはこう書いてある。

区分3-① 「区分3-①に係る単価」×「人数A※」×「賃金改善実施期間の月数」(千円未満の端数は切り捨て)(こども家庭庁「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」令和7年4月11日)

単価は国が決める。月数は年度を通せば12だ。園が動かせる変数は、実質「人数A」しかない。

その人数Aの算式が、これ。

「人数A」=「基礎職員数」×1/3(同通知。区分3-②を選ぶ場合の「人数B」は「基礎職員数」×1/5)

ここまでなら、多くの園が知っている。問題はこの直後に付いている但し書きのほうだ。

ただし、第2の3(1)ⅰとⅲに定める研修修了者が人数Aに達しない場合は、人数Aは当該研修修了者の人数で算定し(同通知)

基礎職員数の3分の1という「枠」があっても、研修を修了した職員がその枠に届いていなければ、人数Aは実際の修了者数まで下がる。枠ではなく、頭数で切られる。

A理事長の園で起きていたのは、まさにこれだった。配分の精度をいくら上げても、掛け算の手前で数字が減っていた。


令和7年度だけ許された「見込みで数える」は、もう終わっている

ここで「去年は大丈夫だったのに」と思った方は、正しい。去年は本当に大丈夫だったのだ。

令和7年度には、経過措置があった。

令和7年度に限り、令和6年度に加算Ⅱの認定を受けていた施設・事業者においては、令和7年4月1日時点で在籍していた職員について、加算額算定に係る研修修了見込みの者(略)であっても、「人数A」の「研修修了者」に含めて差し支えないものとします(こども家庭庁 処遇改善等加算FAQ 第5版 No.20)

制度の切り替えで加算額が急に落ちないようにするための、1年限りの緩衝材だった。「令和7年度に限り」と本文に明記されている。

そして同じFAQの No.22 には、その後どうなるかが書いてある。

なお、令和8年4月1日時点で研修を修了していない場合、令和8年度の加算額算定に当たり、当該者は「人数A」に含めることができなくなるので御留意ください(同FAQ No.22)

修了見込みでは数えられない。修了していないと数えられない。この一行で、令和8年度の加算額は令和7年度と別の基準で算定されることになった。

判定の時点も、通知で固定されている。

加算当年度の4月1日時点の研修修了者(年度内に別に定める研修を修了する予定であって(略)(同通知 注1)

「加算当年度の4月1日時点」。つまり令和9年度の加算額は、令和9年4月1日の朝に何人が修了証を持っているかで決まる。3月に慌てて研修を探しても、間に合わない年度がある。


では、あなたの園は何人足りないのか

紙とペンで出せる。3分もかからない。

  • 基礎職員数を確認する(加算の認定通知や算定資料に記載がある)
  • 3で割る。端数は四捨五入。四捨五入して0になるときは1とする
  • その数と、区分3-①の対象になりうる研修修了者の実人数を並べる

後者が前者を下回っていたら、その差分ぶんの単価×12か月が、丸ごと入ってきていない。

この計算を一度もやったことがない園は、正直、多い。配分簿は毎年作るのに、算定の分母を数えたことがない。書類の完成度と加算額は、別の話なのだ。

なお、区分3-②の「人数B」は基礎職員数の5分の1で、同じ構造の但し書きが付いている。どちらを選ぶかは園の事情によるが、選んだ側の頭数が足りているかは必ず見る。

研修の中身については、愛知県が県としての取扱いを整理して公開している。

施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)は、特定の研修を修了することが要件の一つとされています(愛知県 福祉局子育て支援課「施設型給付費等に係る処遇改善等加算(区分3)の研修修了要件の取扱いについて」)

このページは2026年9月14日に更新されている。県が適当と認めた研修実施主体の一覧や、園内研修の実施に係る確認申請書も同じページに置かれている。県内の園なら、まずここを開くのが早い。


令和9年4月1日までに動かす3つ

うちが保育のクライアントに対して、この時期から回している手順はこれだ。

1. 修了状況の一覧を、職員名簿とは別に作る。誰がどの研修を、いつ修了したか。修了証のコピーの所在まで書く。「受けさせている」と「修了を証明できる」は違う。実績報告の場面で効いてくるのは後者だけだ。

2. 人数Aの枠に何人足りないかを出し、そこから逆算して研修枠を押さえる。年度後半は募集枠が埋まりやすい。9月に動くか、1月に動くかで、令和9年4月1日に間に合う人数が変わる。

3. 誰を修了させるかを、配分設計とセットで決める。ここは配分の話と接続する。区分3-①の改善額は月額4万円を超えないものとされ、区分3-②は原則として月額5千円とされている。誰を人数Aに乗せるかは、翌年度の給与テーブルをどう動かすかの意思決定そのものだ。

配分そのものに裁量がないわけではない。FAQにはこうある。

若手職員への配分を厚くする、保育従事者の経験に応じて傾斜をつけるなど、合理的な理由により施設の方針に基づき賃金改善を行うことは差し支えありません(同FAQ No.44)

傾斜をつけること自体は認められている。ただし「合理的な理由」という条件が付く。そして、その理由を説明する相手は自治体ではなく、隣の席の職員だ。

もう一つ、計算で足をすくわれやすい論点を書いておく。区分②と区分③を合わせた改善額の2分の1以上を基本給・毎月の手当で改善する、というルールがあるが、その「改善額」の中身についてFAQはこう答えている。

賃金改善に伴い増加する超過勤務手当や一時金は「改善額」に含まれます(同FAQ No.67)

賃上げをすれば残業単価も上がる。その増加分も分母に入る。月額で配ったつもりの金額がぎりぎり2分の1だった園は、ここで割り込む。

令和8年度は、人件費の改善分も据え置きではない。こども家庭庁の資料には、令和7年補正予算で措置した+5.3%の改善を引き続き確保する、と書かれている(令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項)。原資が増えれば、2分の1の分母も増える。

A理事長の園は、今、令和9年4月に向けて研修の枠を押さえている。書類の精度は最初から高かった。足りなかったのは、掛け算の前に立っている数字を見る習慣だけだった。

あなたの園の基礎職員数を3で割ると、何人になるだろうか。その数と、修了証の枚数は、合っているだろうか。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の取扱いは通知・FAQの改訂で変わるため、実務では必ず最新版と所在市町村の案内をご確認ください。


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