OTC類似薬77成分 保険外療養は診療所が確認【2026】
「OTC類似薬の負担増は、薬局が窓口で説明する話」。この受け止め方は、順番が逆です。確認して書き残す役割を負うのは、処方する側、つまり診療所のほうです。
令和8年8月26日の中央社会保険医療協議会 総会(第655回)に、厚生労働省が「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」を提出しました。名古屋市内の無床診療所で、この資料を院長と並んで読みました。読み終えた院長の第一声は「受付の仕事が増えるやつだ」でした。
77成分1,042品目が、来年3月に一部保険外になります
根拠は健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)です。市販薬と似た効き目の医療用医薬品について「一部保険外療養」という枠組みを新設し、令和9年3月の施行が想定されています。
対象は令和8年8月1日時点で77成分・1,042品目。想定されている症状は、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などです。内科でも整形外科でも皮膚科でも、毎日出している薬が並びます。
患者が払う「特別の料金」は、対象となる医薬品に係る薬剤費の1/4(別途消費税)。残りは従来どおり保険給付です。資料の自己負担額イメージ(3割負担・薬剤料のみ)では、解熱鎮痛薬5日分が45円から72円、便秘薬30日分も45円から72円。ここだけ見れば数十円の話です。
日数が伸びると景色が変わります。去痰薬5日分は360円から570円、抗アレルギー薬30日分は540円から855円。慢性期に長めに出している薬ほど、差が開きます。
確認義務を負うのは、薬局ではなく処方元です
冒頭で「順番が逆」と書いた理由が、この実務フローです。院外処方の場合、資料は役割をこう分けています。
- ❶外形的な基準の確認 ── 保険医療機関
- ❷医師による確認 ── 保険医療機関
- ❸患者への説明 ── 保険薬局
- ❹特別の料金の徴収 ── 保険薬局
保険医療機関は❶❷を行ったうえで、その結果を処方箋とレセプトに記載します。薬局はその記載を前提に説明し、徴収します。診療所が書き漏らせば、薬局は判断材料を持たないまま患者の前に立つことになります。
紙に書き出すと当たり前に見えます。ところが窓口では、この4工程がひとつながりの作業に見えてしまう。「薬局が徴収する」という結論だけが先に広まると、その手前の2工程を誰が担うのか決まらないまま3月を迎えることになります。
「うちは院外処方だから薬局の話」という理解は、ここで崩れます。
払わなくていい人の判定が、受付では終わりません
特別の料金を求めない対象が、かなり細かく決まっています。
- こども(18歳に到達する日以後の最初の3月31日まで)
- がん患者(がんの治療に関連する状態)
- 指定難病患者
- 国の公費負担医療の対象者
- 入院患者(退院時を含む)
- 処置等の一環で新たに同日に処方される場合(14日分まで)
- 生活保護受給者
- 医師が長期の使用が医療上必要と認める方(内服薬は概ね50週)
年齢や公費の有無なら、受付でも保険証と受給者証を見れば分かります。ところが「がんの治療に関連する状態か」「長期の使用が医療上必要か」は、カルテを見た医師でなければ判定できません。❷医師による確認が別立てになっているのは、そのためです。
受付だけで完結する運用を組むと、必ずどこかで列が止まります。私が院長に「先生の確認を挟む場所を先に決めましょう」と言ったのは、この一点でした。
いま勧めているのは、判断表を1枚だけ作ることです。左に受付が保険証や受給者証で見る項目、右に医師がカルテを見て判断する項目。中身は通知が出てから埋めればいいので、先に枠だけ作っておきます。
経過措置と長期収載品が混ざると、事務が詰まります
湿布(鎮痛消炎剤)、皮膚保湿剤、皮膚保護剤、角化症治療剤には、令和10年度末までの経過措置が置かれています。対象ではあるけれど扱いが違う薬が、別枠で存在するということです。
もう一つ、すでに走っている長期収載品の選定療養との重なりがあります。資料は「OTC類似薬に係る一部保険外療養に該当する場合には、長期収載品の選定療養に係る特別の料金は求めない」と整理しました。二重には取らない、という意味です。
ありがたい整理ではあります。現場の言葉に直せば、「この薬はどちらの制度で処理するのか」を毎回判定する作業が増える、ということでもあります。
制度が重なるほど、判定の分岐は増えます。分岐が増えると、負荷は当日の窓口ではなく月末のレセプト点検に寄っていく。うちに相談が来るのは、たいてい後者が回らなくなってからです。
3月まで半年。いま決められることが3つあります
まだ固まっていない部分も残っています。令和7年12月24日の大臣折衝事項では、令和9年度以降に対象範囲を拡大する方針と、特別の料金の割合の引き上げを検討することが併記されました。77成分は入口です。
そのうえで、うちがクライアントに勧めているのは次の3つです。
- 自院の頻用薬を77成分と突き合わせる。レセコンから1か月分の処方実績を出せば、影響を受ける患者がどれくらいいるかは、その日のうちに見えます
- ❶と❷の担当を紙に書く。受付が保険証で見る項目と、医師がカルテで判断する項目を分けて手順書にしておきます
- 処方箋とレセプトの記載欄を先に決める。細部の通知を待っていると、施行月に全部が同時に降ってきます
制度の詳細はこれから詰まります。それでも、誰が何を確認するかの割り振りだけは、今日決められます。名古屋の院長は、あの日のうちに受付の朝礼ノートに「OTC類似薬・3月」とだけ書いていました。半年後の自分への申し送りとしては、たぶんそれで十分です。
出典・参考情報
- 中央社会保険医療協議会 総会(第655回)総-2「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(厚生労働省、令和8年8月26日、確認日:2026年8月31日)
- 第655回中央社会保険医療協議会総会 議事次第・資料(厚生労働省、令和8年8月26日、確認日:2026年8月31日)
- 中央社会保険医療協議会 総会 開催一覧(厚生労働省、確認日:2026年8月31日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細は今後の通知等で変更される可能性があるため、実際の運用にあたっては最新の告示・通知をご確認ください。
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