訪問介護 サービス提供責任者 50人配置の3条件【2026】
「サ責をもう1人、採らないと基準を割ります」
火曜の定例、Zoomの画面越しに、名古屋市内で訪問介護を2事業所運営するD理事長がそう切り出しました。求人票の原稿は、もうできあがっていた。
私はその場で、採用の手をいったん止めてもらいました。省令の条文に、その1人を採らずに済む道が書いてあるからです。
訪問介護のサービス提供責任者(サ責。訪問介護計画をつくり、訪問介護員に指示を出す役割)の配置は「利用者40人ごとに1人」で記憶されていることが多い。ところが同じ条文の少し先に、50人ごとに1人でよいとする規定が置かれています。
40人に1人という線は、動かせる
まず原則の確認から。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第5条第2項は、「利用者の数が四十又はその端数を増すごとに一人以上の者をサービス提供責任者としなければならない」と定めています。同条第1項では、訪問介護員等の員数を常勤換算方法で2.5以上とすることも求めています。
ここで見落とされやすいのが、利用者数の数え方です。第5条第3項は「前項の利用者の数は、前三月の平均値とする」と定めています。先月ぽんと増えた月だけを見て慌てる必要はない。逆に、3か月かけてじわじわ増えている事業所は、気づいたときには線を越えています。
D理事長の大きいほうの事業所は、この3か月平均がちょうど線をまたぐ位置にありました。40人ごとに1人という原則で割れば、次の1人が要る。これが「もう1人採らないと」の正体です。
緩和の条件は3つ。3つ目で多くが落ちる
同じ第5条の第5項に、こう書かれています。「常勤のサービス提供責任者を三人以上配置し、かつ、サービス提供責任者の業務に主として従事する者を一人以上配置している指定訪問介護事業所において、サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合にあっては、当該指定訪問介護事業所に置くべきサービス提供責任者の員数は、利用者の数が五十又はその端数を増すごとに一人以上とすることができる」。
条件を分解すると3つです。
- 常勤のサ責が3人以上いること
- サ責の業務に主として従事する者が1人以上いること
- サ責が行う業務が効率的に行われていること
1つ目と2つ目は、頭数と勤務形態の話なので判定しやすい。問題は3つ目です。ここは書類の枚数でも資格の数でもなく、業務の回り方そのものを問われている。
数字で置き換えるとこうなります(条文の数値からの試算値)。利用者が120人を超えて150人までの帯なら、40人ごとの原則では4人以上、50人ごとの緩和では3人以上。ここに1人分の差が生まれます。D理事長の事業所は常勤サ責が3人。4人目の採用は、条文を読んだその日に消えました。
では、サ責の事務は誰が引き取るのか
緩和の2つ目の条件、「サ責の業務に主として従事する者」を置くというのは、裏を返せば、その人からサ責以外の仕事を剥がすという意味になります。頭数だけ揃えても届かない。
剥がせない仕事もあります。同省令第24条は、訪問介護計画の作成、利用者への説明と同意、交付、実施状況の把握をサ責の業務として定めている。第28条第3項は、利用申込みの調整、利用者の状態変化や意向の定期的な把握、サービス担当者会議への出席等による連携、訪問介護員への指示と情報伝達、研修や技術指導まで、サ責が担う業務を並べています。これらは他人に投げられません。
投げられるのは、その周りにこびりついている事務のほうです。国保連への請求データの突合、シフト表の組み直し、実績記録の回収と入力、加算要件の書類そろえ、求人媒体とのやりとり。うちがサ責の1日を追いかけると、この手の作業が半日を食っている事業所が珍しくない。
管理者に寄せる手もあります。同省令第6条は、事業所ごとに専らその職務に従事する常勤の管理者を置くことを求めつつ、管理上支障がない場合は他の職務や他の事業所の職務に従事できるとしています。ただし、管理者がすでに現場に入っているなら、そこに事務を積み増しても場所が変わるだけです。
うちの判断は、こうです。事業所ごとに事務を抱えるのをやめて、請求と労務と書類作成を本部側に1本化する。本部に人がいないなら、その機能だけ外に出す。サ責を4人目まで採るコストと、事務を集約するコストを並べて比べたとき、後者が安く済む事業所は多い。
運営規程の書き方ひとつで、6月の変更届が消える
人員の話を整えたら、運営規程も一緒に見直しておきたい。愛知県は運営規程の記載方法及び運営規程変更の特例についてで、令和3年度以降の取扱いをこう示しています。「人員基準を満たす範囲で「○人以上」と記載して差し支えない」。さらに「常勤、非常勤、専従、兼務の別は、記載を要しない」。
記載例も出ています。「A:サービス提供責任者 1人以上、訪問介護員 2.5以上(常勤換算)」という書き方でよい、と。
効いてくるのは届出の頻度です。同ページは、年に1回、6月1日現在の状況を同月末までに届け出れば足りる取扱いを「6月特例」と呼んだうえで、「「○人以上」と記載した場合は、毎年6月1日現在で「○人未満」にならなければ、6月特例を用いて変更届を提出する必要はない」としています。
正確な人数で書いてある運営規程は、1人辞めるたびに書き換えの対象になる。「○人以上」で書いてあれば、その下限を割らない限り動かさなくていい。この差が、1年で何時間になるか。
D理事長の事業所は、来週から請求と実績記録の入力を本部に寄せる作業に入ります。求人票は、机の引き出しに戻りました。
出典・参考情報
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)(e-Gov法令検索、確認日:2026年08月28日)
- 厚生労働省 法令等データベース(同省令本文)(厚生労働省、確認日:2026年08月28日)
- 運営規程の記載方法及び運営規程変更の特例について(愛知県、確認日:2026年08月28日)
※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の運用や届出の取扱いは自治体により細部が異なるため、実際の届出前に指定権者へご確認ください。
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