生活介護の所要時間 実時間ではなく計画時間【2026】

生活介護の基本報酬は、利用者が実際に事業所にいた時間では決まりません。「実績どおりに請求する」という現場の常識は、この報酬では通用しない。決めるのは、生活介護計画に位置付けた「標準的な時間」のほうです。

この一行を取り違えたまま、実績記録票の時刻をそのまま報酬区分に流し込んでいる事業所が、まだあります。運営指導で指摘されてから気付くと、返還の話になる。

厚生労働省の留意事項通知には、こう書かれています。

所要時間による区分については、現に要した時間により算定されるのではなく、生活介護計画に基づいて行われるべき指定生活介護等を行うための標準的な時間に基づき算定されるものである。この所要時間については、原則として、送迎に要する時間は含まないものである。

出典は実施上の留意事項通知の新旧対照表です。令和8年5月28日の一部改正でも、生活介護のこの部分は改正後と現行が同じ文言のまま。令和8年度も据え置きです。


実績記録票の時間を、そのまま報酬に使っていないか

先週、名古屋市内で生活介護を運営するA理事長と月次の定例ミーティングをしていたときのことです。請求データを画面に映しながら、事務担当の方が言いました。「送迎が遅れた日は、短い区分で請求し直しています」。

そこで手が止まりました。それ、やらなくていい作業です。

生活介護の報酬は、その日その日の実測値で上下させるものではありません。計画に「標準的な時間」を定め、原則としてそれで算定し続ける。遅れや早退に合わせて区分を動かす運用は、制度が求めるものと違います。

では実績記録票に書いた開始・終了時刻には、何の意味があるのか。


開始・終了と算定時間数、書き分けの答えは1つ

厚生労働省のQ&Aが、この点をはっきり書いています。障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A(VOL.2)の問22です。

開始時間及び終了時間は実際のサービス提供時間を記載する。

そして新しく設けられた「算定時間数」の欄には、標準的な時間を書く。つまり実績記録票は、2種類の時間を1枚の中に共存させる書式になっています。

  • 開始時間・終了時間。実際に提供した時間をありのままに書く欄
  • 算定時間数。計画の標準的な時間を書く欄で、報酬はこちらで決まる

この2つが一致しない日があっても誤りではありません。送迎の配慮規定を使っているなら、一致しないほうが自然です。

個別支援計画のほうの書き方についても、同じQ&Aの問21に答えがあります。

個別支援計画には、実際のサービス提供時間に加え、生活介護の配慮規定(※)に該当する時間を加えた合計の時間を支援の標準的な提供時間等の欄に記載されたい。

「実際の提供時間そのもの」ではなく「実際の提供時間+配慮規定分」の合計。ここを足さずに計画を作っていると、本来算定できたはずの区分を毎月自分で捨てていることになります。加算そのものの届出期限や手順は障害福祉の加算届出ガイドが詳しいです。


標準的な時間に上乗せできる4つの規定

留意事項通知は、標準的な時間の考え方についてア〜オの5項目を挙げています。このうち時間を上乗せできるのが、イ・ウ・エの3つ。まずここを押さえてください。

イ 送迎に往復3時間以上かかる場合

利用者が必要とするサービスを提供する事業所がその人の住む地域になく、送迎の往復が3時間以上になる場合。1時間を標準的な時間として加えられます。片道の定義も通知に明記されていて、送迎車両等が事業所を出発してから戻ってくるまでに要した時間のこと。往復はその往路と復路の合計です。

山間部や隣接市から通う利用者がいるなら、一度実測してみる価値があります。送迎の安全対策は車椅子の送迎事故と対策で扱いました。

ウ 6時間未満の短時間利用にならざるを得ない場合

医療的ケアスコアに該当する者、重症心身障害者、行動関連項目の合計点数が10点以上である者、盲ろう者等。障害特性等に起因するやむを得ない理由で、サービス提供時間が6時間未満にならざるを得ない利用者が対象です。

受け入れ準備、翌日の申し送り事項の整理、主治医への伝達事項の整理。こうした業務に実際に要した時間を、1日2時間以内を限度として加えられます。

ただし前提があります。通知はこう書いています。

なお、やむを得ない理由については、利用者やその家族の意向等が十分に勘案された上で、サービス担当者会議において検討され、サービス等利用計画等に位置付けられていることが前提であること。

事業所の判断だけでは足りません。相談支援専門員を巻き込み、サービス等利用計画に落とすまでがワンセット。飛ばすと運営指導で根拠を出せなくなります。指摘後の流れは障害福祉の運営指導と改善報告にまとめました。

エ 送迎時の居宅内介助等

着替え、ベッド・車椅子への移乗、戸締り。送迎時に居宅内で実施したこうした介助に要する時間は、生活介護計画に位置付けた上で1日1時間以内を限度として加えられます。

朝の送迎で毎回5分10分の介助が発生している事業所は珍しくない。誰も記録していないだけです。

そして残る2つ、アとオ。これが取り違えの起きやすい場所です。


短い日と長い日、同じ扱いをしてはいけない

アとオは、対称ではありません。

ア 予定より短くなった日

当日の道路状況や天候、本人の心身の状況など、やむを得ない事情により、その日の所要時間が、生活介護計画に位置付けられた標準的な時間よりも短くなった場合には、生活介護計画に位置付けられた標準的な時間に基づき算定して差し支えないこと。

短くなった日は、計画の標準的な時間で算定していい。冒頭のA理事長の事業所がやっていた「短い区分で請求し直す」作業は、この規定を知らなかったために生まれた自主的な減収でした。

オ 予定より長くなった日

実際の所要時間が、居宅においてその介護を行う者等の就業その他の理由により、生活介護計画に位置付けられた標準的な時間よりも長い時間に及ぶ場合であって、日常生活上の世話を行う場合には、実際に要した時間に応じた報酬単価を算定して差し支えないこと。

長くなった日は、実際に要した時間で算定していい。条件は2つ。家族の就業その他の理由で長時間に及ぶことと、日常生活上の世話を行うことです。

短い日は計画どおり、長い日は実測どおり。この非対称を「どちらも実測に合わせる」と読み替えてしまうと、短い日の分だけ毎月取りこぼす。逆に「どちらも計画どおり」と読むと、長い日に算定できたはずの上位区分を落とす。

うちが支援に入るとき、生活介護の請求で最初に見るのはここです。3か月分の実績記録票と計画を並べれば、どちらの取りこぼしかは30分で分かります。


記録を直しても意味がない。直すのは計画のほう

ここまでの話には、ひとつ大きな前提があります。標準的な時間が、実態を反映していること。

通知は逃げ道を残していません。

なお、生活介護計画に位置づけられた標準的な時間と実際のサービス提供時間が合致しない状況が続く場合には、生活介護計画の見直しを検討すること。

「続く場合」。単発のズレではなく、継続的なズレを問題にしています。

毎日30分早く帰る利用者がいて半年続いているなら、もう「やむを得ない事情」ではありません。実態に合った標準的な時間を計画に定め直す局面です。逆に、配慮規定の対象なのに計画へ位置付けていない利用者がいるなら、次のモニタリングで足す。

やることは3つに絞れます。

  1. 直近3か月の実績記録票で、開始・終了時刻と算定時間数のズレを利用者ごとに集計する
  2. ズレが継続している利用者を抜き出し、配慮規定イ・ウ・エのいずれかに当たらないか確認する
  3. 当たるものは計画へ位置付け、当たらないのに恒常的にズレているものは標準的な時間そのものを見直す

1つ目は表計算ソフトで足ります。2つ目からは相談支援専門員とサービス担当者会議を挟むので、月末に思いついて着手しても間に合わない。

週末に事務所で書類を整理しているなら、まず実績記録票の「算定時間数」欄だけを縦に見てほしい。全員同じ数字が並んでいたとしたら、それは計画を作っていないのと同じことです。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度は改正されることがあるため、実務判断の際は必ず最新の通知および指定権者の指示をご確認ください。


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