保育士 処遇改善等加算 一本化──月給化2/3ルール3点【2026】

もしあなたが認可保育所を運営しているなら、今週中に処遇改善等加算の配分実績を1枚にまとめた方がいい。

令和7年度から、I・II・III の3つに分かれていた処遇改善等加算が一本化された。そして賃金改善の2/3以上を「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」で支給するルールが正面に出てきた。

つまり、賞与や一時金で人件費に厚みを乗せてきた園は、来年度の加算が確実に削られる側にいる。


なぜ「一時金中心」の配分は通用しなくなったのか

処遇改善等加算III は、令和4年度(2022年)からスタートした。全職員を対象に、月額9,000円相当の賃金改善を実施するための加算だ。当初から、改善分の3分の2以上を月給ベースに乗せることが想定されていたが、実態としては賞与や一時金で配分する園も少なくなかった。

令和7年度から、こども家庭庁は処遇改善等加算 I・II・III を一本化した。この一本化は、加算額の使途を整理し、月給ベースの賃金改善を強く誘導する建てつけになっている。こども家庭庁・公定価格関係の資料で公開されている通り、賃金改善の最低3分の2以上を、基本給または毎月決まって支払われる手当によって行うことが求められる。

言い換えると、賞与で配分してきた園は、来年度から方向転換しないと加算が成立しない。

うちでクライアントの認可保育所を年に何件か支援しているが、令和6年度までは「賞与で乗せれば足りる」と整理してきた園長先生が多かった。それが今年度から急に立て付けが変わって、現場が混乱している。


落とし穴1:賞与・一時金で配分してきた園が直面する「2/3未達」

最も多い相談がこれだ。

令和6年度の処遇改善等加算III は、保育所の場合、月額11,030円×加算III算定対象職員数で計算されていた。仮に職員30人が対象なら、年間で約397万円。これを夏冬の賞与に乗せて配分してきた園は珍しくない。

令和7年度の一本化後、賃金改善のうち最低2/3を基本給または毎月の手当で行う必要がある。先ほどの397万円なら、そのうち約265万円は月給化しなければならない。

30人の対象職員に均等に配ると、1人あたり月額約7,360円。これを「処遇改善手当」のような名目で毎月の給与明細に組み込む必要がある。

放っておけば、計画書と実績の整合が取れず、来年度の確認で減額対象になる。


落とし穴2:旧加算IIIだけ職員配分簿を作っていた園の盲点

もう一つ、見落としやすい論点がある。

令和6年度までは、処遇改善等加算I・II・III それぞれに別の様式の配分計画書・実績報告書を作っていた。経理担当者の頭の中では「Iは基本給アップ、IIはキャリアアップ職員への加算、IIIは月9,000円ベース」と分かれていた。

一本化後は、この縦割りが崩れる。賃金改善総額をひとつの計画書にまとめ、その2/3以上が月給ベースであることを示す必要がある。

うちが見たある社会福祉法人では、加算IIIの実績報告だけ別ファイルで持っていて、加算Iと突合できない状態のまま新年度に入っていた。改善計画書を提出するタイミングで「合算した賃金改善総額」を求められて、初めて手元のExcelに穴があることに気づいた。

3月末で締めるはずの旧加算実績と、新制度の計画書を、いま同じ表にまとめておく作業が必要だ。これを後回しにすると、6月以降の自治体ヒアリングで詰む。


落とし穴3:賃金改善計画書と給与規程の文言ズレ

3つ目は、書類同士の整合性。

賃金改善計画書には「基本給に月額○○円を加算する」「処遇改善手当として月額○○円を支給する」と書く。一方で、就業規則や賃金規程の手当一覧に「処遇改善手当」の項目がない園が、思った以上に多い。

規程上に存在しない手当を、計画書だけで支給することはできない。実態として支給していても、根拠規程がなければ「決まって毎月支払う手当」とみなされないリスクがある。

賃金規程を改定するには、就業規則変更の手続きが必要だ。職員代表からの意見書添付、労働基準監督署への届出。最低でも2週間は見ておきたい。

6月にこの作業を始めれば、夏のボーナス計算と並行で進められる。9月以降に気づくと、年度後半の支給開始で逆算が苦しくなる。


いますぐ動く3アクション

うちが今、保育所のクライアントに伝えている動き方は3つに整理できる。

  1. 処遇改善等加算の配分実績を、令和6年度分まで合算で1枚にまとめる。加算I・II・IIIをばらしたまま新年度に入らない。
  2. 令和7年度の賃金改善計画書を、月給ベース2/3以上の前提で組み直す。賞与中心の配分を維持するなら、その根拠と数値を別紙で示せる状態を作る。
  3. 就業規則・賃金規程に「処遇改善手当」を明文化する。職員代表意見書と労基届出のスケジュールを6月のうちに引く。

うちのクライアントだと、この3つを並行で進めるのに、園長・事務担当・社労士の連携で約3週間かかった。経営者ひとりで抱えると、本業の保育運営に確実にしわ寄せが行く。

事務長機能を外部に置く判断も含めて、6月中に手を打つかどうかで来年度の加算が変わる。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新の通知は各省庁の公式サイトでご確認ください。


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