保育所の公定価格2026、上がる施設と7月から下がる施設の分岐点

もしあなたが保育所・認定こども園を運営していて、経営情報報告をまだ「ここdeサーチ」で公表完了していないなら、今月中に確認した方がいい。 令和8年7月から、公定価格の減算が始まる。 対応が遅れると毎月のキャッシュに直接穴が開く。

令和8年度の公定価格改定、「+5.3%」の恩恵を受けられる施設とは

令和8年4月8日告示・施行の公定価格改定で、保育士等の人件費改善分+5.3%が令和8年度も継続確保されることになった(令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項、こども家庭庁、2026年4月9日公表)。

これは「令和7年度の補正予算で措置した人件費の底上げを、そのまま令和8年度でも維持する」という内容だ。新しく増えた分ではなく、昨年度から続いている改善幅をそのまま引き継ぐかたちになる。

施設長・主任保育士・保育士・調理員等の常勤職員が対象で、年度当初に遡及適用される。決して小さな数字ではない。運営法人の立場からすれば、収支の安定を維持してくれる重要な措置だ。

また、3歳〜5歳のみを受け入れる小規模保育事業の全国展開(令和8年4月1日施行)に伴い、新たな公定価格単価も設けられた。従来の枠組みでは対応できなかった形態に対応するための整備だ。

ここまでは「プラス」の話。問題はここからだ。


7月から始まる「減算」、3つの条件のうち2つは今すぐチェックが必要だ

令和8年7月請求分から、公定価格の一部が減算される施設が出てくる。

理由の一つ目は、経営情報報告の未提出だ。

子ども・子育て支援制度(こども家庭庁)の根拠は子ども・子育て支援法第58条第2項。特定教育・保育施設の設置者および特定地域型保育事業者は、毎事業年度終了後5か月以内に経営情報を報告する義務がある。令和7年4月1日から施行された法律上の義務だ。

報告先は「ここdeサーチ」と呼ばれるこども家庭庁の公表プラットフォーム。単に数字を入力すれば終わりではなく、入力→自治体確認→公表という3段階のフローがある。「提出しました」の感覚と「公表完了」の間には、けっこうな時間差がある施設も多いはずだ。

未提出が続いた場合、令和8年7月請求分から1,350円/月の減算が適用される幼児教育・保育における継続的な経営情報の見える化について、こども家庭庁、2025年8月28日)。減算は報告が完了した月まで継続される。具体的な適用単位や計算方法は所管自治体に確認してほしいが、毎月の請求に影響が出ることは間違いない。

もし今まだ「そういう制度があるのは知っていたけど、まだ動いていない」という状態なら、今日が行動に移す最後のタイミングに近い。


もう1つの落とし穴、「安全計画」の未策定でダブル減算になりうる

令和8年7月から新設される減算がもう1つある。安全計画の未策定・未実施だ。

こちらも1,350円/月の減算が設定された。経営情報報告の未提出と安全計画の未策定は別々の減算として並立する。両方に該当する施設は、同時に二重の減算を受ける構造だ。

適用の条件は「安全計画を策定していない場合」と「策定はしているが1年間継続して実施されていない場合」の二種類ある。書類として計画書が存在するだけではなく、実際に運用されているかどうかも問われる点が厳しい。

特に法人内で複数施設を運営しているケースは要注意だ。1施設では完備していても、別の施設では策定が遅れているというケースが実務では起きやすい。令和8年7月まで残り数か月、今のうちに全施設を横串で点検しておく価値がある。


「うちは大丈夫」と思っている施設が一番危ない

私がいくつかの保育施設の経営者と話していて感じるのは、「経営情報報告の義務化は知っているけど、自分たちは対応済みのはず」という認識が意外と曖昧なことだ。

「自治体に何か出した記憶はある」「事務局が処理しているはずだ」という施設長の言葉を聞くたびに、正直ヒヤっとする。義務化の施行は令和7年4月。制度開始から1年以上が経過した今、提出状況の確認はもはや「やっておくといい話」ではなく「7月のキャッシュに直結する話」だ。

「ここdeサーチ」での公表ステータスは施設側でも確認できる。法人担当者、事務長、施設長の誰かが今週中に一度ログインして確認する。これだけでいい。「公表済み」になっていれば問題ない。「未提出」「確認中」の状態であれば、7月までに完了させることを最優先に動く。

手順の詳細はこども家庭庁の子ども・子育て支援制度ページか、所管の都道府県・市区町村窓口に確認してほしい。


処遇改善の+5.3%は「令和9年度以降の保証がない」という現実

最後に、今回の+5.3%についての補足を一つ。

この改善分は令和7年度補正予算で措置された内容の継続だ。「令和8年度も引き続き確保する」という政策判断によって維持されているが、令和9年度以降の保証は今の段階では明言されていない。

社会保障費全体の膨張を財務省が問題視している状況は介護分野と同じで、保育分野も例外ではない。「毎年当たり前に続く」と前提で経営計画を立てると、見直し局面でのダメージが大きくなる。

今期の+5.3%は確実に享受しつつ、来年度以降のシナリオを2本以上持っておく経営判断が求められる時期に来ている。楽観的なシナリオと、据え置きまたはわずかな引き下げのシナリオの2本立てで収支を試算しておくことを、私は保育法人の経営者にはお勧めしている。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細・最新情報は所管のこども家庭庁または都道府県・市区町村窓口にご確認ください。


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