処遇改善加算 届出書類 ─ 返戻を防ぐ6つの落とし穴【令和8年度版】

処遇改善加算の届出は、書類を出せば取れる ─ そんな感覚のまま動いている施設が、今年も詰まる。 書類は揃えた。締切も守った。それでも返戻になる。その原因のほとんどは、様式の量でも複雑さでもなく、記載の「ちょっとしたズレ」だ。 令和8年度から届出様式が更新された。例年通りでいくつもりの施設ほど、今年は一度立ち止まって確認が必要だ。

返戻の本当の原因 ─ 「書類を揃えた」のに通らない理由はここにある

うちのクライアントで、訪問介護のA管理者という方がいる。 処遇改善加算Iに初めて挑戦した年、書類は全部揃えた。様式も最新版を確認した。提出期限も守った。それなのに、1カ月後に返戻が届いた。 原因は「別紙様式2の記載不備」。具体的には、加算区分として選択したIの要件と、処遇改善計画書に記載した賃金改善の仕組みが整合していなかった、というものだった。 「揃えた」と「合っていた」は違う。これが処遇改善加算届出の怖いところだ。 返戻になると、当然ながら加算は算定できない。遡及適用も認められないケースがほとんどで、手続きのやり直しで数カ月分の機会損失が出ることもある。「どうせ後から修正できる」という感覚で出すと、痛い目を見る。 では、どこで詰まるのか。令和8年度の様式変更とあわせて見ていく。

令和8年度から変わった届出様式 ─ 何が変わり、なぜ危ないのか

厚生労働省は令和8年3月13日付の通知(老発0313第6号「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)で、令和8年6月以降の算定に係る様式を新たに公表した(厚生労働省 令和8年度介護報酬改定について、確認日:2026年5月9日)。 令和8年度から適用される主な様式は以下のとおりだ。
  • 別紙様式2:処遇改善計画書(令和8年度版)
  • 別紙様式3:実績報告書(令和8年度版)
  • 別紙様式4:変更に係る届出書
  • 別紙様式5:特別な事情に係る届出書
問題になるのは、令和7年度以前の様式が手元に残っている施設だ。特に中小法人では「昨年使ったExcelファイルをそのまま更新」というやり方をとっていることが多い。令和8年度版の様式は構成が変わっているため、古いフォームに入力しても受理されない。 厚生労働省ページから必ず最新版をダウンロードして使うこと。これが第一のポイントだ。 さらに令和8年度からは、居宅介護支援(ケアマネ)や訪問看護など、これまで対象外だったサービス種別が新たに処遇改善加算の対象に加わった。これらのサービスを提供している事業所にとっては、今年が初めての届出になる。初回届出で躓くパターンは、後で詳しく書く。

処遇改善計画書(別紙様式2)、記載で躓く3つのポイント

届出書類の中で最も記載ミスが多いのが、この処遇改善計画書だ。3つのポイントを順に押さえる。 1. 加算区分の選択と賃金改善方法が整合していない 処遇改善加算はI〜IVの区分に分かれており、それぞれの区分に体制要件がある。計画書には「どの区分で届け出るか」を選択するが、その区分の要件に合致していない賃金改善の内容を書いてしまうと、整合性エラーで返戻になる。 よくあるのが「区分Iで出したいが、体制要件を正確に確認していない」というパターンだ。加算Iには職員の処遇に関する体制整備の要件があり、単に「賃金を上げます」と書くだけでは足りない。 2. 対象職員の範囲を「全員」で逃げている 対象職員の記載で「介護従事者全員」と書いてしまう施設がある。確かに正規・非正規を問わず対象にはなるが、職種によっては加算対象に含まれない場合もある。計画書と後の実績報告書に齟齬が出ると、指摘の対象になる。 最初から対象職員の範囲を具体的に定義して記載しておくことが、実績報告のときに自分たちを守ることになる。 3. 複数サービスの記載漏れ 複数のサービス種別を運営している法人は、全サービスを記載しなければならない。特に令和8年度から新規対象になったサービスが含まれる場合、「既存の届出のコピー」では漏れが出る。1行の追加漏れで、そのサービスの加算が丸々取れなくなる。 これらの3点を確認するだけで、かなりのリスクを潰せる。ただし、確認して書き直してから出すまでの「タイミング」も重要だ。次はそこを見る。

変更届(別紙様式4)を出すタイミング、意外と知らない施設が多い

届出は最初の1回だけ出して終わり、ではない。算定期間中に変更が生じた場合は、変更届(別紙様式4)の提出が必要だ。 変更届が必要になる主なケース:
  • 加算区分を上位・下位に変更する場合
  • 対象職員の範囲を変更する場合
  • 処遇改善計画の内容を変更する場合
  • 新たにサービス種別を追加する場合
令和8年度は、新たに対象になったサービス(ケアマネ・訪問看護等)を運営している法人が変更届を出すケースも増える。「今までは出さなくてよかったから」という感覚でいると、算定要件を満たしているのに届出忘れで加算が取れない、という事態になりかねない。 変更届の提出期限は変更が生じた月の翌月中が基本だが、詳細は各都道府県・市町村の指示に従うこと。処遇改善加算は提出先が事業種別によって都道府県か市町村か変わる場合もあるため、そこも念のため確認してほしい。

提出前に確認する6項目 ─ これで数カ月分の加算が守れる

ここまで読んでもらえれば、処遇改善加算の届出でどこがリスクかは分かったと思う。 正直に書く。うちに相談が来るのは、大体「返戻になってから」か「指摘を受けてから」だ。予防できた話を聞くたびに、もう少し早く確認してくれれば、と思う。最後に、提出前チェックとして実際に使ってほしい6項目をまとめる。
  1. 様式が令和8年度版(最新版)かどうか ─ 厚労省ページから再ダウンロードして確認
  2. 加算区分の体制要件を満たしているか ─ 区分Iを選ぶなら体制整備の要件確認まで
  3. 対象職員の範囲が具体的に記載されているか ─ 「全員」の曖昧記載に注意
  4. 運営するすべてのサービス種別が記載されているか ─ 令和8年度新規対象サービスの漏れに特に注意
  5. 賃金改善方法が区分の要件と整合しているか ─ 計画書と体制整備要件を突合
  6. 提出先が正しいか ─ 事業種別によって都道府県・市町村・指定権者が異なる
6項目を確認するのに、慣れれば30分もかからない。それで数カ月分の加算が守れるなら、やらない理由はない。 うちのクライアントには毎年この確認を促しているが、「今年はすんなり通った」という声が増えてきた。書類の難しさは年々変わらない。ただ、丁寧に確認するかどうかの差が、結果をわける。 令和8年度Q&Aの第1版も厚労省のページに掲載されている。不明点は随時そちらも確認してほしい。

出典・参考情報

  • 令和8年度介護報酬改定について(厚生労働省、確認日:2026年5月9日)
  • 老発0313第6号「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(厚生労働省、令和8年3月13日)
  • 令和8年度介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(厚生労働省、同ページ収録)

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度改正等により内容が変更される場合があります。最新情報は各行政機関の公式サイトをご確認ください。


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