令和8年6月介護改定、ケアマネ・訪問看護が処遇改善加算の対象に

「居宅ケアマネの処遇改善加算、6月からうちも取れるんですか?」──先週の金曜、訪問看護ステーションのDさんから電話がきた。声に少しの困惑と、それ以上の安堵が混じっていた。「ようやく対象になるんですね」と続けたDさんの言葉が、今も耳に残っている。 私が「そうです、ただ届出の期限があって──」と答えかけたところで、Dさんは「え、いつですか?」と素早く遮った。正しい緊張感だ。 今日はその話をしたい。

なぜ2026年6月に「臨時」の介護改定が入ったのか

介護報酬改定は通常、3年ごとに行われる。次の本格改定は令和9年(2027年)4月が本筋だ。それなのになぜ今年6月に動くのか。 背景にあるのは政府の「強い経済を実現する総合経済対策」だ。介護分野の賃上げについて「他職種と遜色のない処遇改善を、令和9年度改定を待たずに令和8年度中に実施する」と明記された。要は、3年に1度のサイクルを待てないほど、介護現場の人手不足が深刻だという国の判断である。 改定率は+2.03%厚生労働省・令和8年度介護報酬改定について)。数字だけ見れば小さく映るかもしれない。でも中身が違う。 ここが今回の本題だ。ケアマネジャーと訪問看護師、訪問リハビリ職が、初めて「介護職員等処遇改善加算」の対象に入ったのである。これは制度の設計思想が変わったと言っていい。

ケアマネと訪問看護はなぜ今まで対象外だったのか

「処遇改善加算、介護職員だけのものじゃないんですか?」と聞かれることが多い。当然の疑問で、これまでは正しかった。 処遇改善加算はもともと「介護職員」の賃金引き上げを目的に設計された制度だ。ケアマネジャーは「相談援助職」、訪問看護師は「看護職」として別の資格体系に位置づけられており、長年にわたって対象外のままだった。 いくら現場が「うちのケアマネも疲弊している」と訴えても、制度上は手が届かない。結果として、ケアマネ事業所や訪問看護ステーションは介護職員向けの加算財源を直接享受できず、それが離職率の高さと採用難の一因にもなってきた。 今回の臨時改定で、ようやくその壁が動いた。
  • 居宅介護支援事業所(ケアマネ):新設加算率2.1%
  • 訪問看護・訪問リハビリテーション:処遇改善加算の対象に追加(1区分の加算新設)
加算率2.1%。少ない、と思う経営者は多い。実際、月額にすると数万円規模だ。ただ居宅ケアマネ事業所がこれまで処遇改善加算を1円も使えなかった事実と比べれば、「ゼロからイチ」の重さは違う。初めて「対象になった」こと自体に意味がある。 では、いくら上がるのか。それと、算定できない事業所の共通点が気になるはずだ。

月1.9万円の上乗せ、算定できない事業所の共通点

今回の改定全体での処遇改善の規模感を整理しておく(GemMed・2026年度介護報酬改定決定)。
  • 介護従事者全体:月額+1.0万円(3.3%)
  • 生産性向上・協働化に取り組む事業者の介護職員:さらに月額+0.7万円(2.4%)の上乗せ
  • 介護職員の上限:月額+1.9万円(6.3%)
  • 訪問介護:最大28.7%の処遇改善加算(訪問介護は独自の加算構造)
問題は、「算定できない事業所の共通点」だ。うちのクライアントを見ていると、毎回同じパターンが浮かぶ。
  1. キャリアパス要件を整備していない──処遇改善加算の上位区分を取るには、職員の昇給規程や研修計画の整備が必須だ。「うちは口頭でやってきた」という事業所は書類から作り直しになる
  2. 職場環境等要件の取組数が足りない──介護給付費分科会が定める要件のうち、定められた数の取組を実施・記録していないと上位区分は申請できない
  3. 処遇改善計画書の作成経験がない(新対象事業所)──今回新たに対象になった訪問看護・ケアマネ事業所は、処遇改善計画書を作成したことがない場合がほとんどだ。様式・添付書類・提出先の確認から始める必要がある
「加算が取れる要件は満たしているが書類が間に合わない」──これが一番もったいない詰み方だ。次の見出しを読んでほしい。

5月15日と6月1日、2つの締切に何が起きるか

届出の期限は、既存の対象サービスと、6月から新たに対象になったサービスとで違う。 既存の介護サービス事業所(ホームヘルパー・特養・通所介護など):
令和8年4月15日が処遇改善計画書の提出期限だった。今日(2026年4月26日)時点で、すでに過ぎている。もし4月15日に間に合わなかった場合、6月からの加算算定は原則できない。ただし各都道府県・市区町村によっては相談窓口を設けているケースもあるため、まず担当自治体に状況を確認することを勧める。 6月から新たに対象になったサービス(訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援): | 提出書類 | 居宅系の期限 | 施設系の期限 | |---|---|---| | 体制届 | 令和8年5月15日(金) | 令和8年6月1日(月) | | 処遇改善計画書 | 令和8年6月15日(月) | 令和8年6月15日(月) | (参考:大阪市・令和8年度介護職員等処遇改善加算 処遇改善計画書の提出について) 今から最短で動ける訪問看護・ケアマネ事業所の場合、体制届の期限まで約3週間しかない。計画書の内容を確認し、様式を揃え、施設長の押印をもらって提出するという一連の流れを、通常業務の合間にやることになる。 「まあそのうち」と先送りにするほど、後の動きが苦しくなる。

書類が間に合ったステーションに共通していたこと

私の手元に今、1件の事例がある。 横浜の訪問看護ステーションのDさん(冒頭の電話の方)が、3月の段階で「6月から対象になるらしい」という情報を掴んでいた。「らしい」という段階で、すでにうちに相談の電話をくれていた。 その時点でやったことは3つだ。 まずキャリアパスの書類確認。すでに整備はされていたが、昇給の基準が口頭ベースだった部分を文書化した。次に職場環境等要件の取組記録の整理。業務改善に向けた取組自体は行っていたが、記録に残っていない項目があった。これを遡って整理した。最後に処遇改善計画書の様式確認。初めて提出する書類なので、厚労省の様式(別紙様式2-3)と添付書類のリストを事前に把握した。 「3月に動いた」とDさんが言った。改定の詳細が確定する前から準備を始めたから、5月の期限に間に合う見込みが立ったわけだ。 詰まる。「正式な通知が出てから動く」という誠実なスタンスが、介護の制度改定ではしばしば致命的な遅れになる。サウナで考えていても、制度の締切だけは待ってくれない。 今週中に、自事業所の算定可否だけでも確認してほしい。それだけでいい。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。制度の詳細・届出期限は各都道府県・市区町村の担当窓口に必ずご確認ください。


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