障害者GH 夜間支援等体制加算 3類型 届出前の3軸【令和8年】

もしあなたが障害者グループホームを運営しているなら、来週中に夜間支援等体制加算の配置パターンを棚卸しした方がいい。
理由はひとつ。令和6年度改定で算定要件と単位の組み立てが整理し直された結果、(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のどれを選ぶかで体制加算ごと剥がれている事業所が出ているからだ。
障害福祉のクライアントから「夜勤と宿直、どっちで届け出るのが得ですか」と聞かれる回数が、この春から明らかに増えた。今日はその話をしたい。

配置3類型のおさらい──(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は何が違うのか

夜間支援等体制加算は共同生活援助で(Ⅰ)から(Ⅵ)の6区分。まず押さえるのは骨格である最初の3つ。
  • (Ⅰ)夜勤による夜間支援:午後10時から翌午前5時の時間帯を最低限含み、夜勤の従事者を配置する
  • (Ⅱ)宿直による夜間支援:同じ時間帯に宿直従事者を配置し、定期的な巡回と緊急時の対応を行う
  • (Ⅲ)夜間防災・常時連絡体制:従事者は常駐せず、警備会社との委託契約や24時間連絡網などで体制を確保する
ざっくり言えば、(Ⅰ)(Ⅱ)は人を置く、(Ⅲ)は仕組みで担保する。3類型で発想がまったく違う点をまず腹落ちさせておきたい。 ここで多くの管理者が誤解しているのが「(Ⅰ)が一番高単価だから一番得」という思い込み。たしかに単位数だけ見れば(Ⅰ)が厚いが、夜勤者の人件費・採用難・労務管理コストを乗せて損益で見ると、規模の小さい住居では(Ⅱ)や(Ⅲ)の方が手残りが大きいケースが普通にある。
(Ⅲ)は他の加算と併給できるため、単独運用ではなく組み合わせ前提で設計するのが定石だ。

夜間支援対象利用者数──ここで詰む事業所が後を絶たない

加算額の計算で軸になるのが「夜間支援対象利用者数」と「障害支援区分」。
この利用者数が「定員」でも「現に入居している人数」でもなく、前年度の平均利用者数で決まる、という点を毎年この季節に間違える事業所がある。 うちが今期入った障害者GHのE理事長も、まさにここで一度返戻を食らった。年度途中で入退去が重なり、新規開設住居の利用者数を当年実績で計算してしまったケース。請求差し戻し、再請求、利用者ごとの按分やり直し、現場の事務担当が3日かけて再構成する羽目になった。 計算ルールは細かいが、押さえるべきは以下の3点。
  1. 原則は前年度の延べ利用者数を開所日数で割り、小数点以下は四捨五入
  2. 新規開設や大幅増員の場合、見込み計算が必要になるため都道府県への事前確認は欠かせない
  3. 1住居で複数人の夜間支援従事者を配置する場合、前年度実績ベースで按分する
夜間支援対象利用者数が変わった場合、原則として変更届の提出月の翌月から新単価で算定する。15日締めで翌月、16日以降は翌々月。締切感覚を持っておくと、月またぎで単価がぶれる事故が減る。

(Ⅰ)と(Ⅱ)、どちらで届け出るか──現場で見ている3つの軸

毎年「夜勤と宿直、結局どちらを取るのが正解ですか」と聞かれるが、正解は事業所のサイズと利用者像で決まる。うちで最終判断に使っている軸は3つだけ。 軸1:利用者の障害支援区分の構成
区分が重い利用者が複数人いれば、夜間の介護等支援が常時必要になる。宿直の枠組みでは労基法上の「常態としてほとんど労働する必要のない勤務」に該当しない可能性が出てくる。区分4以上が多い住居は(Ⅰ)夜勤一択で組み立てた方が無難だ。 軸2:採用市場と労務コスト
夜勤者を1人通年配置するということは、社会保険・夜勤手当・代替要員を含めて年間で軽く数百万円のコストが乗る。地方の小規模住居で夜勤者の求人を半年出しても応募ゼロ、というケースを実際にいくつも見てきた。採用の現実から逆算して(Ⅱ)宿直+(Ⅲ)の組み合わせを選ぶ判断は、決して逃げではなく合理的設計だ。 軸3:他加算との重ね方
重度障害者支援加算、医療連携体制加算、強度行動障害者地域支援体制加算など、組み合わせ前提の加算が複数走っている事業所では、夜間支援の選び方が他加算の人員要件と干渉する。一覧で並べて干渉点を潰してから(Ⅰ)か(Ⅱ)かを決める方が早い。

(Ⅲ)を併用するときの落とし穴──「常時連絡体制」の中身を問われる

(Ⅲ)夜間防災・常時連絡体制は、本体の(Ⅰ)(Ⅱ)と一緒に算定できる。ここを上手に使えば、人を置けない時間帯のリスクを仕組みで埋められる。
ただし、実地指導でいちばん問われるのが「常時連絡体制の中身」だ。 携帯電話を1台置いただけ、では通らない。求められるのは次のような実装。
  • 夜間帯にどの職員が一次対応者になるかの順位表が運用されている
  • 緊急通報装置や警備会社との契約書、対応マニュアルが事業所に備え付けられている
  • 過去の対応記録が残っており、利用者・家族・嘱託医・救急隊との連絡経路が明文化されている
書類の体裁ではなく、運用が回っているかを問われる。E理事長の事業所では、夜間の通報訓練を四半期に1度走らせ、対応時間とボトルネックを記録する仕組みに切り替えた。実地指導で開口一番このログを出したら、その後の質疑はほぼ無風で終わったらしい。

届出前のチェック──棚卸しの順序

今週末から月曜の朝までに、この順番で1住居ずつ棚卸ししてほしい。
  1. 住居ごとの前年度平均利用者数を、開所日数ベースで再計算する
  2. 利用者の障害支援区分の最新値を1人ずつ照合する(更新月ズレが意外に多い)
  3. 現行の(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の届出区分と、実態の夜勤・宿直シフトが整合しているか確認する
  4. 夜間支援対象利用者数に異動があれば、都道府県への変更届を15日着で出す
  5. 常時連絡体制の運用記録(直近3か月分)がそろっているかをチェックする
ここまでで違和感がひとつでも残るなら、その住居は実地指導で必ず突かれる。
うちでは法人本部の事務長役を月1で外注したいというニーズが増えている。3類型の選び方は経営判断、届出と運用は事務の現場仕事──この役割分担で整理すると、夜間体制は驚くほど安定する。 棚卸し、来週まで持ち越せますか。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新の告示・通知・Q&Aは必ず厚生労働省の公式サイトで確認してください。


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