ケアマネ 安全確保──居宅事業所が今やる3点【2026年6月】

月曜の朝、都内の居宅介護支援事業所。主任ケアマネのDさんは、来週の単独訪問先のリストにペンを置いたまま、画面をいったん閉じた。 先週末、埼玉県川口市で訪問先のケアマネジャーが利用者の家族に襲われ、亡くなった。 うちのクライアント先でも、Dさんと同じ手の止まり方をしているリーダーが何人もいる。今日はその話をしたい。

川口で起きたこと、わかっている事実だけ

事件が起きたのは令和8年6月1日の午後、埼玉県川口市の住宅。被害者は介護支援専門員の女性で、その場で亡くなった。加害者は90代の母親と同居していた60代の男性で、警察が捜査を続けている。表に出ている事実はここまでで、私としても憶測で広げるつもりはない。 翌6月2日、一般社団法人日本介護支援専門員協会の柴口里則会長が声明を出した。「断固として許されるものではない」「このような事件に屈することなく邁進する」。短い文章だが、現場の重さを背負った言葉に読めた。 翌々日の6月3日、厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課が事務連絡を発出する。介護保険最新情報 Vol.1508「介護支援専門員等の在宅介護従事者の安全確保の徹底について」がそれだ。 私が読むかぎり、この通知の本体は本紙を除いて3枚しかない。だがその3枚に、今週中に居宅介護支援事業所が動くべき手がかりが詰まっている。

通知Vol.1508、3枚を3分で読むコツ

中身を頭に入れるなら、次の3層で整理するのが早い。
  • 1枚目は事件の確認と、安全確保策の徹底をお願いする趣旨
  • 2枚目は介護サービス事業者がやるべきこと(運営基準の解釈通知とカスハラ防止義務化)
  • 3枚目は国による支援(地域医療介護総合確保基金と複数訪問の経費)、別添に協会声明
私がいちばん下線を引いたのは2枚目。「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」、令和7年法律第63号の話だ。この改正で、事業主によるカスタマーハラスメント防止の雇用管理上の措置が、すべての事業主に義務付けられる。施行は令和8年10月。あと4ヶ月もない。 これまで「努力義務」だったハラスメント対応が、今年10月から正面の義務になる。介護事業所だから、ではない。すべての事業主に降ってくる。 通知はもう一段、踏み込んで書いている。事業所単位だけで抱え込むな、と。地域ケア会議、医師や保険者、地域包括支援センター、保健所、事業者団体、法律家、警察。「相談先の電話番号を1枚紙にまとめて職員全員のデスクに貼っておけ」というのが、私が読み取った行政の本音だ。

うちが月曜の朝に動かす3つのこと

ここから先は、Relief の代表として実際にクライアントに提案している動きをそのまま書く。今週中、できれば月曜の午前に着手したいのは3つだ。
  1. 初回訪問や、キーパーソン不在で訪問する利用者について、「単独訪問可否フラグ」をアセスメント様式に1欄足す。家族のメンタル不調、金銭トラブル疑い、過去のクレーム履歴を、形式的に1行で記録できる枠を作る。書式は手書きでもExcelでも構わない。
  2. 事業所の安全マニュアルがあるなら今日棚卸しする。無いなら、厚労省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」と研修用手引き、事例集をそのまま採用してしまう。0から作らない。
  3. 市町村の介護保険担当課に「複数名訪問の補助、うちで使えますか」と一度問い合わせる。次の章で書くが、財源は通知に名指しされている。
3つとも「重い」改革ではない。今日中に動ける範囲だ。動かないうちに10月の義務化を迎えると、義務化対応と事件対応が同じテーブルに乗って、現場の事務長が二重に潰れる。私は何件か、この潰れ方を見てきた。 うちのクライアントには、3つのうち①と③だけ先にやってもらい、②は来週で構わない、と伝えている。今週中に1つでも動かす、が肝だ。

「複数名訪問の経費」、出どころは通知に書いてある

通知Vol.1508の2ページ目、「2.対策実施のための国による支援」の(2)に、私が現場でいちばん伝えたい1行が書いてある。 利用者宅に複数名で訪問する場合の経費、つまり介護支援専門員等の同行訪問にかかる経費は、令和7年度補正予算(令和8年度に繰越済み)の「地域のケアマネジメント提供体制確保支援事業」のうち「介護支援専門員業務負担軽減支援事業」で使える。地域医療介護総合確保基金の中の同名事業も同様、と明記されている。 ここで大事なのは、財源の名前まで通知が指定していることだ。「予算が無いから単独訪問にせざるを得ない」という言い訳は、行政の側に通用しにくくなった。 私の経験上、補助メニューを実際に使えるかどうかは、市町村の介護保険担当課に電話一本でほぼ判明する。月曜の朝、利用者の家へ電話するのと同じ熱量で、自治体の窓口にも電話していい。 ただし、補助の運用ルールは自治体ごとに細かい差が出る。うちでクライアントの問い合わせを受けたときも、必ず管轄自治体に確認してから提案する。全国一律のつもりで動くと、現場で空振りする。Relief の判断としては、月曜の電話確認の前に、自治体ウェブサイトの当該事業の要綱を1度だけ印刷しておくのが最短ルートだ。

10月の義務化まで、残り時間は4ヶ月ない

ここまで書いていて、私が代表として一番心配しているのは、事件の衝撃が来週には半分忘れられることだ。 通知は出た。声明も出た。だが事業所の運営マニュアルに具体的な変更が入らなければ、10月のカスハラ防止義務化のタイミングで、別の事故が形を変えて起こりうる。 今週やってしまえる動きは、ほぼゼロ円で動ける。アセスメント様式の1欄追加。既存マニュアルの差し替え。自治体への電話。どれも明日からの新規費用は要らない。 事件のことを忘れないために、私は手元の業務改善ToDoリストのいちばん上に「単独訪問可否フラグ」を書き足した。月曜の朝、いったんサウナで頭を空にしてから、もう一度クライアントの電話を取る。 あなたの事業所では、今日の朝礼で何を1つ追加するだろうか。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。各通知の正確な内容は必ず一次情報の最新版を確認してください。補助事業の運用ルールは自治体ごとに異なります。


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