労働保険 年度更新──7/10締切までに揃える3書類【令和8年】

労働保険の年度更新は、申告書が届いてから動く仕事ではない。書類を見てから集計を始める事業所が、毎年7月の前半で必ず詰まる。今年は6月1日の時点で「集計表が埋まっている」状態から始めると、私は決めた。

令和8年度の申告・納付期間は、厚生労働省の公式案内令和8年6月1日(月)から7月10日(金)までと告示されている。約40日。長いように見えて、実務上は短い。理由を先に書く。


なぜ「届いてから動く」では7月前半が必ず詰まるのか

毎年この時期、うちのクライアントから同じ電話が掛かってくる。「申告書、来週で大丈夫ですよね?」──金曜の夕方、決まってその一本だ。正直、こちらが冷や汗をかく。

年度更新でやることは、ざっくり3つに分かれる。前年度(令和7年4月〜令和8年3月)の賃金集計、確定保険料の算定、そして当年度の概算保険料の申告・納付。手を動かす作業の8割は最初の賃金集計に集中している。

この賃金集計が、医療・介護・福祉・保育の現場では特に時間を吸う。常勤・非常勤・夜勤専従・派遣・有期パートが入り乱れ、賃金台帳の構造が業種別に違うからだ。さらに、賞与の支給月が事業所ごとにバラついていれば、月ごとの集計表に落とし込む手間も増える。

そこに「申告書が郵送で届いた日から動こう」と構えれば、実働時間は2週間ちょっと。6月の月次決算、給与計算の通常業務、人事評価面談、新人研修。経営者・事務長の机にはすでに別の山が積まれている。詰まるのは構造上の必然だ。

では、今から何を埋めにいくか。


6月1日時点で「集計表が埋まっている」状態を作る3書類

私が事務長アウトソーシングで入っているクリニックや介護施設では、毎年5月の最終週から以下の3点を先回りで揃える。

  1. 令和7年度の月別賃金台帳(4月〜3月)──労災保険・雇用保険の対象者ごとに区分。役員報酬は原則対象外、雇用保険の被保険者だけ拾う点に注意。
  2. 算定基礎賃金集計表(令和7年度確定分)──愛知労働局や静岡労働局も公式ページで記入例を公開している。年間賃金を月別に、労災と雇用で分けて並べる、あの様式だ。
  3. 令和8年度の概算賃金見込み──昇給率、新規採用予定、定年退職、産休復帰の見込みを織り込む。前年同額で出して後で差額が出ると、納付資金繰りに響く。

1番と2番は、給与計算ソフトの賃金台帳CSVをそのまま流し込めば、半日で骨格ができる。3番だけが「人の頭」を借りる作業になる。理事長や院長との10分の打ち合わせで方針だけ決めてしまうのが、いちばん早い。

そして、その骨格を作るための強力な道具が、6月上旬に動き出す。


マネーフォワード クラウドの令和8年度対応、何ができて何がまだか

うちでも導入支援を続けているマネーフォワード クラウド社会保険は、2026年4月6日付のお知らせで、令和8年度(2026年度)年度更新機能のリリース予定を「2026年6月上旬」と告知している。リリース後、年度更新ページから次の2つが使えるようになる。

  • 算定基礎賃金集計表の作成・電子申請
  • 労働保険申告書の作成・電子申請

逆に、リリース完了までは令和8年度分の手続きを新規追加できない。2025年度以前の電子申請は受付停止だ。リリース前にできるのは、令和7年度までの賃金データをきれいに整えておくところまで、ということになる。

私の運用ルールはシンプルだ。6月1週目:賃金台帳のクレンジング。2週目:MFクラウドのリリース反映と集計表の自動生成。3週目:電子申請。4週目:納付と仕訳。この4分割で動くと、7月10日の締切に対して2週間の余裕が残る。コーヒーを淹れ直す時間も、サウナに行く時間も、ちゃんと確保できる。

電子申請が苦手な事業所には、厚生労働省が案内する年度更新コールセンター(0120-963-339、開設期間 令和8年5月28日〜7月17日、受付 9時〜17時、土日祝除く)が併走してくれる。電話の方が早い相談も多い。


一括有期事業の申告漏れ──医療・介護でも他人事ではない理由

もう一つだけ書いておきたい。静岡労働局のページでも「一括有期事業の申告誤り」が注意点として挙げられている。確定保険料の申告に誤りがあれば、認定決定と追徴金の対象になる可能性がある(労働保険徴収法第21条)。

「うちは建設業じゃないから関係ない」と思った院長、ちょっと待ってほしい。介護施設の建て増し、診療所の改装、保育園の遊具設置、訪問看護ステーションの移転リフォーム。元請として工事を発注しているクライアントは、医療・介護・福祉・保育のどの業種にも普通にいる。請負金額と工期次第で、申告区分が変わる場面が出てくる。

うちが入っている社会福祉法人のひとつは、昨年度ここで一度ヒヤッとした。建て替え計画の請負契約書を、年度更新の集計担当者に共有していなかったのだ。気付いたのは申告書を提出する前日の夕方。事業所の規模が大きければ、後から追徴される金額は無視できない水準まで膨らむ。

申告書の様式に「該当なし」と書き込む前に、令和7年度中に発注した工事請負契約書を1枚も漏らさず棚卸しする。たったこれだけで、この事故は防げる。

年度更新は、毎年やっていれば慣れる作業だ。けれど、慣れるほど、こういう小さな確認が抜ける。6月の机の上に、申告書よりも先に賃金台帳と請負契約書のフォルダを並べる。今年はそこから始めたい。


出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。


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