歯科技工士 3.7%減──歯科医院の確保策3つ【令和6年末】

31,733人。これが令和6年末時点で日本に残った歯科技工士の総数だ。

2年前から1,209人、率にして3.7%が消えた。歯科衛生士が4,396人増えている同じ期間に、技工士だけが減っている。

うちのクライアントである歯科のC先生から、先月「補綴物の納期が10日から14日に伸びた」と相談があった。発注先の技工所が縮小したからだ。あの電話で確信した。これは個別の事情ではなく、業界全体の構造的な詰まりだ。


「3.7%減」が歯科医院の経営をどう詰ませるか

厚生労働省が令和7年7月29日に公表した令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況を、まずそのまま引いておく。

  • 就業歯科技工士数:31,733人(令和4年比 -1,209人/-3.7%)
  • 就業場所別:歯科技工所 23,521人(74.1%)/病院・診療所など 8,212人(25.9%)
  • 歯科技工所数:20,278か所(令和4年比 -563か所/-2.7%)

同じ衛生行政報告例で、歯科衛生士は149,579人(令和4年比 +4,396人)と増加している。診療所側のチェアサイドは増えているのに、技工側の供給だけ細っている。これが今の歯科医療の不均衡だ。

うちのクライアントで起きていることはシンプルだ。クラウン1本の納期が伸びる。リメイクが発生したときの差し戻し回数が増える。患者には「次回は3週間後で」と説明することになり、自費補綴のクロージング率が落ちる。技工士不足は、間接的に医院の売上を削る話なのだ。

では誰がこの穴を埋めるのか。


埋める人材が、構造的にいない

技工士の年齢構成も厳しい。第7回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会 資料1(令和8年3月2日)では、50歳以上が過半数を占め、25歳未満は5%を切る水準と整理されている。母集団そのものが定年に向かって動いている。

養成側はもっと深刻だ。2000年に2,900人台あった歯科技工士養成校の入学者は、2017年には900人台まで落ち込んだ(同検討会資料)。新卒で年間900人前後しか供給されない職種で、毎年定年退職と離職が走っていれば、総数が減るのは当然の帰結だ。

つまり、外部から「採れば解決する」職種ではすでにない。経営者の側が、医院の運用そのものを組み替えるしかないところに来ている。

具体的には何をするか。Reliefが医院のクライアントに提案している順番で3つ書く。


確保策その1:発注先の二重化と納期の見える化

一番先にやるべきは、技工所の発注先を1か所に依存しない構成に切り替えることだ。歯科技工所数が2年で2.7%減っている以上、メインで使っている技工所が縮小・廃業するリスクは年々上がる。

うちのクライアントには、メイン1社・サブ2社の3社契約をお願いしている。月の発注数の8割をメインに、残り2割をサブに分散する。理由はサブを「眠った契約」にしないため。普段から少額でも発注し、症例情報と症例写真をやり取りしておかないと、いざメインが落ちたとき即戦力にならない。

あわせて、納期の見える化も入れる。エクセルでもクラウドの簡易台帳でも構わない。「発注日・予定納期・実納期・差分」の4列を3か月続けるだけで、どの技工所が安定し、どこが遅れがちかが数字で分かる。感覚で発注先を選んでいた院長ほど、この台帳で景色が変わる。


確保策その2:院内技工の部分的内製化(チェアサイド CAD/CAM)

2つ目は、技工の一部を医院に取り込むという話だ。具体的にはチェアサイド型のCAD/CAM(キャドキャム:歯科用の設計・切削システム)でインレーや単冠の即日修復に対応する形になる。

誤解されたくないので先に書く。これは技工士の代わりを医院でやるという話ではない。納期に左右されたくない症例だけを医院側で完結させ、複雑な補綴や審美症例は引き続き外部技工士に任せるという分業設計だ。

診療報酬上も、歯科用CAD/CAM冠の対象範囲は段階的に広がってきた。導入コストは決して安くないが、自費補綴で1日完結を売れる体制になれば、競合との差別化に直結する。歯科のC先生のところでは、導入半年でチェア稼働率が体感で15%上がったと聞いている(数値は医院側の主観値)。

逆に向かない医院もある。来院数が少なく自費比率も低い医院がフルセットを買うのは過剰投資だ。判断は症例ボリュームと自費比率の2軸で。


確保策その3:歯科技工士の処遇開示と「働き続けられる設計」

3つ目は、まだ自院内に技工士を雇用している、あるいは雇用予定がある医院向けの話だ。離職の最大要因は給与水準と労働時間にある(先述の検討会資料でも、若年層の離職理由として継続的に挙げられている論点)。

うちのクライアントには、最低でも次の3点を就業規則と求人票に書き込んでもらっている。

  • 残業時間の上限と実績の公開(月平均何時間に収まっているか、過去6か月の実数で)
  • 技工料配分の明示(売上連動か固定給か、賞与の算定根拠まで)
  • 5年後の役職・賃金モデル(同一賃金で塩漬けにしないという宣言)

残念ながら、歯科技工士の求人票でこの3点を書き切れている医院は少ない。だからこそ、書ければ刺さる。技工士を「採れる医院」と「採れない医院」の差は、設備や立地よりも、この情報開示の解像度に出る。

採用代行や求人票のリライトはRelief側でも支援しているので、自院だけで詰まったら声をかけてほしい。


令和8年中に決めておくべきこと

歯科技工士の総数は、令和8年・9年とさらに減る方向にある。供給側の構造はすぐには反転しない。だとすれば、医院側が打てる手を打っておくしかない。

優先順位はシンプルだ。発注先の二重化はすぐ。納期台帳は今週から。CAD/CAMの判断は症例数を3か月見てから。技工士の処遇開示は、次の決算期の前に整える。

歯科医療は技工士という後ろ盾なしには成立しない。後ろの椅子が一つずつ消えていく前提で、医院の椅子の並べ方を直しておく。今年の宿題はそこだ。


出典・参考情報

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