介護・保育施設向けキャリアアップ助成金2026申請ガイド

「正社員にしたら人件費が増える」──その計算には、助成金が抜けている。 キャリアアップ助成金の正社員転換コースは、中小企業の場合、有期雇用から正規雇用へ転換した対象者1人につき最大80万円(重点支援対象者の場合、40万円×2回)が支給される。賃上げコストを差し引いても、ほとんどの施設では申請する価値がある。 2026年4月から申請の入口が「届出制」に変わった。事前承認を待つ必要がなくなったので、躊躇する理由はまた1つ消えた。

「正社員にすると損」という思い込みはどこから来るのか

介護施設や保育施設のクライアントと話すとき、正社員転換の話が出ると反応が2つに分かれる。「知ってます、使ってます」か、「うちにはハードルが高い」か。 後者によく聞くと、助成金の存在を知らないケースより、「申請が複雑で、もし要件を満たしてなかったら返還になる」という恐れから動けないパターンが多い。 正直、気持ちはわかる。助成金はミスると痛い。私もクライアントの申請サポートを始めた当初、書類を1枚間違えて差し戻しになった経験がある。あのときは冷や汗ものだった。 ただ、そこで止まったままにしておくのも、それはそれでもったいない話だ。1人あたり最大80万円を見送っているのと同じことだから。 どこでつまずきやすいか、何をどの順番でやれば通るか。それさえわかれば、思ったほど難しくない。

正社員転換コースの金額 ─ 中小企業はいくらもらえるのか

厚労省のキャリアアップ助成金ページに掲載されている2026年度の正社員転換コース(中小企業)の支給額は、転換する労働者の属性によって異なる。
  • 有期雇用 → 正規雇用(重点支援対象者):40万円×2回=最大80万円
  • 有期雇用 → 正規雇用(その他の労働者):40万円×1回
  • 無期雇用 → 正規雇用(重点支援対象者):20万円×2回=最大40万円
  • 無期雇用 → 正規雇用(その他の労働者):20万円×1回
「重点支援対象者」とは、母子家庭の母や父子家庭の父、また一定の条件を満たす高年齢者や障害者など、就労において支援が必要な方を指す(詳細は厚労省ページを参照)。介護・保育業界では、シングルマザーのパートスタッフが多い施設もある。当てはまる方がいれば、支給額が変わってくる。 2026年度から、新たに「正社員転換・公表加算」が設けられた。過去3年間の正社員転換実績と平均転換期間を自社のWebサイト等で公表している場合、1人あたり20万円が加算される(令和8年4月8日以降の転換が対象)。 仮に有期雇用のパートを正社員に転換し、重点支援対象者の要件を満たし、かつ情報公表もすれば、1人で最大100万円の支給を受けられる計算になる。 では、実際にどんな条件をクリアすれば申請できるのか。

2026年度から変わった申請の入口 ─ 「事前承認」が「届出制」になった意味

これが今回いちばん伝えたい変更点だ。 以前のキャリアアップ助成金は、正社員転換を実施するに都道府県労働局へ「キャリアアップ計画書」を提出し、承認を受けてからでないと動けなかった。承認が下りるまでに時間がかかるケースもあり、「やろうとしたが手続きが間に合わなかった」という話も珍しくなかった。 2026年度からは「届出制」に変わった。つまり、実施前に計画書を提出して届け出るだけでよく、承認を待つ必要がない。届出が受理された後、スムーズに転換手続きに入れる。 これは実務上かなり大きい変化だ。 ただし、1点だけ注意が必要なのは、転換の実施前に必ず届出を済ませておくこと。転換後に「やっておけばよかった」で遡って届出することはできない。転換を決めたら、今日中にでも計画書を用意して労働局へ持ち込む、というくらいのテンションで動いてほしい。

申請の流れ ─ 決めたらその日に動き出す5ステップ

実際の申請ステップを整理する。複雑に見えるが、やることは5つだけだ。
  1. 就業規則に正社員転換規定を設ける
    「有期雇用スタッフが一定の要件を満たした場合、正社員に転換できる」旨を就業規則に明記する。これがないと助成金の対象にならない。既に記載がある施設は次のステップへ。
  2. キャリアアップ計画書を作成・届出する
    厚労省の様式(「キャリアアップ計画書」様式第1号)に記入し、都道府県労働局またはハローワークへ届出。2026年度からは承認不要なので、届出後すぐに次へ進める。
  3. 対象者を正社員に転換する
    労働契約を締結し、正社員としての賃金を支払い始める。賃金は転換前より3%以上引き上げることが条件(賃金規定等改定コースの場合)。
  4. 転換後6か月間、正社員として雇用を継続する
    支給申請の条件は「転換後6か月間の賃金を支払っていること」。この6か月が最初の支給申請のタイミングになる。
  5. 支給申請書を提出する
    6か月経過後、2か月以内に支給申請。様式は厚労省のWebサイトからダウンロードできる。
申請様式はすべて厚労省の専用ページからダウンロード可能。記載例も掲載されているので、それを見ながら書けば、初めてでも大きくは外れない。

現場で見てきた失敗3パターン ─ 要件は満たしていたのに通らなかったケース

うちがサポートしてきた中で、一番多い失敗を3つに絞る。 ① 就業規則の転換規定が「努力義務」になっていた 「…転換することができる」という記載でなく、「…転換に努めるものとする」という曖昧な書き方にしていた施設がある。これは規定として認められないケースがある。転換規定は権利として明確に書く必要がある。 ② 転換前に届出を忘れていた 「転換してから申請を考えればいいと思っていた」は一番もったいない失敗だ。2026年度からは届出制なので、実施前の届出はより簡単になったが、順序を間違えると申請できなくなる。 ③ 転換後の賃金台帳の保管が不十分だった 支給申請時に「転換後6か月間の賃金を支払ったこと」を証明する書類が必要になる。賃金台帳・タイムカード・出勤簿の原本または写しが求められるが、電子化せず紙で管理していた施設が、担当者の退職時に書類を紛失してしまったケースがあった。 電子保存でも問題ない。マネーフォワードのような給与管理ソフトを導入していれば、データはすぐ出てくる。 3つとも、知っていれば防げる失敗だ。逆に言えば、これをクリアできれば通る確率は格段に上がる。

出典・参考情報

※ 上記リンクは掲載時点のものです。助成金の要件・金額は年度ごとに変更になる場合があります。最新情報は都道府県労働局またはハローワークへお問い合わせください。


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